異世界テイマー

インスタント脳味噌汁

第1話 現代人は森の中を歩くのも億劫

ある日、目が覚めると森の中に居た。ありきたりで古典的な異世界転移だ。現代人にとって、森をパジャマ姿で移動するのは辛い。はだしの足はすぐに痛くなってくるし、鬱蒼とした森林は先を見通せず、このまま餓死する姿を容易に思い浮かべることが出来る。


一先ず、パジャマの下に着ていたシャツに木の枝の先端で切り込みを入れ、千切って足に巻いたが疲労感はさほど変わらず。目が覚めた地点から真っ直ぐに進んでいたら、ある程度舗装された道が現れたため、幸い自分は助かるのかもしれない。


ここまでで、自分の力が増幅されているような感覚や何か特殊な力に目覚めたという感覚は一切なかった。その後は街に着き、冒険者ギルドで登録するテンプレを経て、テイマーとなった。


【ステータス】

名前:トーヤ

職業:テイマー

レベル:1

魔力:5/5   使役数0/2


冒険者ギルドに登録したら、ステータスを見れるようになったけどSTRとかATKとか攻撃力とか物理攻撃みたいな欄はなく、シンプルに魔力と使役数が見れるだけという。あとテイマーは別に弱いわけじゃないみたいだけど使役数0のテイマーはあり得ないからさっさと何かと契約しなさいと受付嬢からは言われた。


テイマーは、魔物と契約して魔物を使役して戦う職業らしい。その魔物はダンジョンにいる魔物と契約するか、森にいる魔物や動植物と契約するか、街中で捕らえられた魔物を買うかの3択とのこと。その中で自分は、魔物を買うことにした。幸いなことに、寝る時にいつも身に付けていたアイマスクを概念ごと買い取ってくれる商会があったのである程度のお金はある。


というか日本円にして大体15万円をポンとくれたあの商会は凄いな。こんな不審な男に商会のトップが面談してくれたし。ついでに自分が日本出身だって見抜いて来たし。まあ良いや。今は最初のパートナーを選ぼう。


魔物を取り扱っているお店に入ると、結構多くの魔物達が囚われている。みんな大人しいというか、契約で大人しくするように縛っているみたいだ。予算を10万円程度だと伝えると、紹介出来るのはEランクからGランクまでの魔物だなと案内する人は言う。あまり強い魔物は買えないみたいだ。


Gランク:ゴブリン、スライム、コボルト

Fランク:レッサーインプ、フェアリー、ゴブリンアーチャー、ロックゴーレム(小)

Eランク:インプ、ロックゴーレム(大)、ゴブリンメイジ、ハウンドドッグ


とりあえず駆け出しが最初に契約する魔物について紹介して貰ったけど、Gランクは大体5000円、Fランクは2万円、Eランクは5万円程度とのこと。多い数を使役出来るわけじゃないし、可能な限り強い魔物を選びたい。


というわけでフェアリーを購入。Fランクにしてはお高めの3万円だったけど、魔法が使えるみたいだし何より可愛い。フェアリーと言っても小型生命体というわけじゃなく、90センチぐらいの大きさはあるし、透明な羽のある幼女って感じだ。魔物とはいえ、青い髪はもはやファンタジーである。


女の子として可愛いのでちょっとちんちんはふっくらしたが、ロリを無理やり犯す趣味はないので早速何が出来るか確認していくと水の玉を撃ち出せるようで結構役に立ちそうだ。少なくとも、魔力が切れるまでは飲み水で困ることはないと。


【ステータス】

名前:ルー

種族:フェアリー

レベル:2

魔力:13/14   


自分のステータスが随分と簡略化されてると思ったが、魔物の方が簡略化されている。具体的な強さは魔力以外何も分からないなこれ。そして水の玉でこれから出て来る魔物達を倒せるとは思わないのでもう一匹レッサーインプを購入。ほぼコウモリだけど噛み付かれたら痛そうなキバを持っている。ポケ〇ンで言うならズ〇ットだな。


【ステータス】

名前:ムー

種族:レッサーインプ

レベル:3

魔力:8/8  


これ転生特典というか、転移特典みたいなものは何もなさそうだなと思いつつ、自分用にこん棒を購入。剣とか振るえる気がしないし、最悪の状況を想定するなら安くて頑丈でフルスイングしたら痛いこん棒が一番良いでしょ。というか魔力は自分が一番下なの草生える。種族人間って弱いのかな。


冒険者ギルドで初心者死亡率No1クエストであるゴブリン討伐を受け、こん棒を持っていざ出発。……街から出るのに歩いて1時間、そこからゴブリンのいる森まで歩いて2時間。さらにゴブリンのいそうな森の深くまで行くのに1時間かかったんだけど、よくこれみんな往復できるね?


一応、簡易的な宿泊設備は購入したけどほぼ野宿は確定。ルーとムーを見張り番にすれば森のど真ん中でも一応寝ていられるのか……?森の中に入ってからは、遠くから狼の雄叫びみたいなのも聞こえるし気持ち悪い虫はいっぱいいるし、さっさと帰りたい。こりゃ初心者は死ぬわけだ。


時々ルーから水を貰いつつ、植物図鑑の薬草と一致する薬草があれば回収していく。薬草は一応そこそこの値段で売れるらしいが、まとまった量がないと買い取って貰えないとか。嵩張るのでその場ですり潰して粉にしながらの森探索は、一向にゴブリンが出て来ない。


そろそろ野宿の準備をするかと思ったところで、一匹の狼が出現。ようやく異世界で初めて敵対的な生物が現れたよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る