第22話 全力疾走ウィーク・リポート3 ―ラスト・デイ―
【学園迷宮ウィズラビリンス】
第8フロア。
神造迷宮。
その前にダンジョン同好会のメンバー。そして明麗が立っている。真央が頬を掻いた。
「うー、会長と一緒なんて、緊張するなぁ……とにかく、お願いします」
「はい! 一緒に頑張りましょう!」
「うーん、間近で見ると本当に綺麗ですね……依怙贔屓さえ感じる美貌です」
「そうだね。ゲンサックがよく見惚れてる訳だよ」
「クゥ、それは」
「ふふ、知ってます」
「知ってるよ」
「……」
「わ、私2年なのに何か場違い感。だ、大丈夫かな……」
「大丈夫です! なぜなら……私がいる! 今日の目標は!」
明麗は天界エリアへ一歩を踏み出し、断言した。
「80階層のボス神造神アポロギアスの撃破。そして全員の生還! これは訓練ではなく実戦としての探索なので一人も死なせません! 安心してください!」
「本当かなぁ……」
「……」
シャルナの呟きにこの2週間の重みが垣間見えた。7人は神造迷宮へ入っていく。
神造迷宮の探索は
「詩織ー!」
「あ、死んだ……」
明麗が先導して尚、
「シャルー!」
「あ、死んだ……」
危険に満ちたものだった。
「コスモちゃーん!」
「もっと、ときめきたかった……」
だが、
「仕方ないのでここの敵は全部私が間引きます。よく見ておいてくださいね」
「もう全部あの人一人でいいんじゃないですか?」
「訓練、ですよ」
「あ、否定はしないんだ……」
明麗のお陰で本当に致命的な状況には陥らず、また、
「ゼアニアム・ブレード!」
「凄い! 魔力を切り裂いてる!」
「負けてられるか! ディザスター・クロ―!」
「凄い! 風を切り裂いてます!」
それぞれがそれぞれの死力を尽くし、
「真央ー! 死んでも後ろは私が通しませんからねー! ぐわー!」
「詩織ー!」
「アイアン・モード+フルメタル・ディフェンス! ぐぅうう!」
「フュージョン・マジック
「ユニークモンスター間引いときましたー! あとはそっちだけでーす!」
「玄咲! 任せた!」
「ああ。ゼロ距離で――ダークネス・ショットガン!」
戦い抜いた結果、
「これで最後――フュージョン・マジック
「やった! シャルナちゃんが中ボスっぽいのとどめ刺した!」
「あとは、ボスだけですね……!」
「よし、あとはバエルで」
「天之くん。それは禁止です」
「あ、はい」
とうとうボス部屋まで辿り着き、
「あー、出る幕ないです……」
「ガルダ! 殺せ!」
「レインボードライブ」
「ふっ、コスモはもうときめき切れです……」
「フュージョン・マジック――」
「あー、これで決まりかにゃー……」
「クリティカル・インパクト! 玄咲、今!」
「さぁ、天之くん、よく狙って。外したら私が殺します」
「は、はい――
そして、とうとう――。
「――お見事です。よく、私抜きで倒しました……!」
「速攻、でしたけどね。戦闘というより奇襲でした。まともに戦ったら絶対やられてた」
「うん。あのガルダって、精霊がいなかったら、攻撃も、打ち込めなかった……」
「ランク8なだけあり凄まじい強さでしたね。まるで、王のような風格の凄まじい精霊でした」
「ガルダは私の切り札ですから」
「凄い、凄い凄いよ! 後輩くん達、前よりずっと強くなってる!」
「はい。そうですね。……そうですね……」
「フッ、コスモの本気は次の試験で存分に見せると」
「ではみなさん!」
豪奢な白い装甲を纏ったロボットのような見た目の神造神アポロギアスの頭が消し飛んだ死骸の前、明麗が笑顔で手を叩いた。
「死域に踏み込むためあと1階だけ探索を――」
ドス。
シャルナがエンジェリック・ダガーの柄を明麗の背に突き刺した。引き気味の視線の中、明麗が額に脂汗を流す。
「……シャルナちゃん。痛いです」
「今日は、帰りましょう」
「ま、まぁそうですね。ちょっと張り切ってしまいました。流石にこれ以上は無理ですね。それではみなさん!」
明麗は改めて笑顔で手を叩いて全員に宣言した。
「お疲れさまでした! 今日はもう帰ってゆっくり休みましょう!」
7人は最終日に相応しい激闘を経て、学園ギルドに帰還した。
「美味しいです! この神造主の衣上げ、絶品です!」
「何故か食えるんだよねぇ……どう見ても食えなさそうなのに。ま、そこも魔物食の面白い所だね」
「真央の料理が疲れた体に染みるなぁ。えぐっ、えぐっ」
「本当、涙が出るくらい染みますね……」
「焼き鳥お代わり!」
「あ、ごめん。もうない」
「ガーン……」
ダンジョン同好会で明麗も含めた賑やかな食事。一日の疲れが魔物食の滋養効果もありあっという間に癒えていく。神造主の天ぷらを食いながらシャルナは玄咲に、
「なんだかんだ、いい経験には、なるんだよね。……死んだり死にかけたりするけど」
「死域に踏み込まねば得られないものがあるっ! いい経験になった! それでよいじゃないですか!」
「うーん……まぁ、そうですね。死にかけたけど……」
「ああ、確かに。死にかけた。それでも」
玄咲はこの2週間、そして最後の激闘を振り返って、己もまた神造主の天ぷらを摘まみながら笑みを零した。
「この2週間を締めくくるに相応しいいい経験になったと思うよ。みんなレベルが上がったし、俺もシャルナもランクアップした。やっぱりラグナロク学園はこうじゃないとな」
「んー……そだね!」
シャルナも笑った。最後の一日は賑やかな食事と共に過ぎていった。みんなで取る食事はいつでも楽しかった。
――試験日までの2週間はまるで嵐のように激しく、あっという間に過ぎ去った。
それぞれがそれぞれの全力で日々を刻みつけた。
2人以外の生徒たちも当然進化し這い上がっていく。
それらの日々の記録も少しだけ語ろう。
この長くも短い2週間を締めくくるラストページを迎える前に。
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