エピローグ

エピローグ1 新たな、そしていつもの日常

 イベント後。


 3日間の休日を挟んだのちの登校日。通学路を歩く隣のシャルナが思い切り背を反って伸びをする。


「うーん……まだ疲労感、あるね」


「そうだな。本当、濃密なイベントだった。まるで数か月間戦い詰めていたかのような疲労感だ」


「そだね。戦い以外にも、色々あったしね……」


「……そうだな。色々、あったな」


 玄咲はシャルナを呼ぶ。


「シャル」


 いつもの呼び方で。


「うん。色々あったねー……」


 ――結局、シャルナのことはシャルと呼ぶことになった。シャルナ呼びは、暴発しそうだからという理由でシャルナ的にやっぱりアウトだったらしい。というか暴発しかけた。当分は今まで通りシャルと呼ぶことになりそうだった。


 二人にはまだ、今の距離感が丁度いいようだった。だから、呼ぶ。


「……シャル」


「なに?」


「君がいてくれて本当に助かった。ありがとう。愛してる」


「……うん。私も」


 シャルナが手を握ってくる。そして5指を絡めて、


「愛してる……友達、だけどね?」


 言ってから、誤魔化すようにはにかむ。すっかりシャルナの口癖と化した友達。それが、重すぎる愛を扱いかねている、そして自分の衝動と戦っているシャルナの精一杯のラインなのだと、今では玄咲も理解している。友達でも良かった。こんなにも幸せなら、不満などあろうはずもなかった。


(一生、友達でもいいかな。シャルとなら)


 ふと、そう思った。別にその心の声を聞きつけた訳でもないだろうが、シャルナが。


「あ、でもね。玄咲」


 他の生徒に聞かれないように、耳打ちする。


「堕落衝動ってね、心が強ければ抑えられるの。お母さんみたいに。だからね、私がね、もっと人間レベルが上がって、衝動抑えられるようになったらね、その時はね。シャルナって呼んで。それでね――」



 ――恋人に、なろ。




 ――今日も幸せな一日が、始まる。

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