第52話 最後に残ったのは
【リーダーが残り一人になりましたので、只今を持ちましてイベントを終了いたします。皆様お疲れさまでした。イベント結果の詳細は後日報告します。優勝はG組です。おめでとうございます。イベント終了後は各自解散。各所に教員による治療スペースを配置する他、教員が各生徒の見回りに行きます。動ける生徒は治療スペースへ、動けない生徒はそのままお待ちください。死者は全員回収後、学園長による組成を行います。繰り返します。只今を持ちましてイベントを終了いたします――】
――スピーカーから音が鳴る。イベントは終わった。後は教員が手を焼いてくれるらしい。玄咲は張りつめていた気をようやく緩め、深く深く、息を吐いた。一気に脱力し、思わず地面に尻をつく。シャルナがその傍にぱたぱた駆け寄り、己もまたその隣にぺたんと尻を下ろす。
「――玄咲、やったね」
「ああ。やったな。勝った。取り合えずこれで、1年の中では最強って言っていいんじゃないのか」
「そだね。今は、そういう気分に、浸ろっか」
「うん。でも、みんな強かったなぁ……」
最後の最後までイベントを生き残ったただ2人――玄咲とシャルナは地面に隣合って座り、空を見上げる。綺麗な星が、いつの間にかたくさん生まれていた。
「……ああ、これで本当に終わりだ。長かったなぁ。大変だったなぁ。疲れたなぁ……」
「うん……滅茶苦茶、疲れたね。もう、死にそ」
「確かに死にそうだ。でも――やったな」
「うん、やった。気持ちいい、ね……」
「ああ。シャル。これで終わりだ。……流石に、疲れたな」
「うん。疲れたね」
玄咲はその場に寝転んだ。シャルナも当然のように寝転ぶ。達成感と心地よい疲労が全身を満たしている。2人で手を繋いで星に満ちた夜空を見上げる。一生忘れない星空だろうなと二人は思った。
「今日、この瞬間を、俺は一生忘れないよ」
「私も。絶対、永遠に、忘れない」
「うん……本当、疲れたな。もう、このまま、寝ようか」
「そだね。玄咲」
シャルナが寝返りを打つ。そして身をギュッと寄せてくる。
「お休み」
「うん。お休み」
意識がすぐに遠のく。このイベントはいろいろあり過ぎた。カミナ。クゥ。コスモ。リュート。全員と、心身を削る戦いを繰り広げた。ゲーム換算でEP消費1とはいえ精霊を2回も召喚した。人生の中でもトップクラスの眠気が玄咲を襲っていた。
「くー、くー……」
シャルナはもう寝た。とても心安らぐ寝息。その後を追って玄咲も眠りの世界に落ちかける。その寸前、シャルナの愛しい顔が目の前にあって。
「シャル……」
玄咲はシャルナを自分の意志で抱き締めた。宝物を抱くように己の胸に掻き抱く。シャルナもまた寝たまま抱き締め返してくる。同等以上の強さで、ギュッと。
「もう……いつも……抱き締め返して……くるね……」
もう意識が不明瞭で言葉も聞き取れない。ただ忘我の中で幸せだけを感じながら眠りにつく。
やがて小さな二つの寝息が夜天の下に生まれた。
シャルナと重なり眠る玄咲の手首でSDが淡い光を放つ。そこには青い光でこう書かれていた。
【イベントシュウリョウ。コジンMVPオメデトウ!】
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