第10話 試運転
バトルセンター7号館22番室。
「ねぇねぇ玄咲」
シャルナが己のデバイス・カードを見せながら聞いてくる。
ランク3
エンジェリック・ダガー
適応属性 闇・水
補正値50
「このカードの表面の記載情報ってさ、情報量少なすぎるよね」
「そこに突っ込むか。きっと、カードのデザインを優先したんだろう。それか、開発段階では、その、きっと項目の設定が煮詰まっていなかったんだ。それを今でも引きずっているんだと思う」
「そんなもんかな」
「俺にも正確には分からないから推測だ。しかし確かに寂しい」
玄咲は自分のデバイス・カードを見る。
ランク3
シュヴァルツ・ブリンガー
適応属性 火・水・風・雷・土・闇・光
補正値50
右上にランク。真ん中にカード名。左上に適応属性。左下に補正値。適応属性は丸い円型のアイコンを色で等分して表示している。円グラフのような見た目だ。シュヴァルツ・ブリンガーは7属性なので7等分。赤・青・緑・黄・茶・黒・白が円アイコンの中でひしめき合っている。色鮮やかな虹色のアイコンだ。ちなみにシャルナのカードは適応属性の円が縦に黒と青で2等分されている。適応属性の種類は分かるが、その上昇値までは分からない。シャルナがカードの属性の円を指さしながら言う。
「これじゃ、適応属性が、いくつか分からないね」
「専用のカードを差し込めばADの情報が表示されるらしいぞ。魔工技士はそうやってカードの情報を読み取るんだ」
「あ、ちゃんとフォローはあるんだ。で、ここからが本題なんだけど」
「なんでも聞いてくれ」
シャルナに知識面でいいところを見せる数少ないチャンスなので玄咲は張り切る。
「前から気になってたんだけど、そもそも補正値って、何?」
「……随分と根本的な質問だな」
「うん。なんとなくで理解を済ませてたけど、改めて知識を確認しときたいなって」
「……ちょ、ちょっと待ってくれ」
玄咲もなんとなくで理解を済ませていたので知識のおさらいに時間がかかる。玄咲はCMAの戦闘をフィーリングでやっていた。大きい数字が出たら嬉しい。そんなプレイングスタイルだ。
「補正値ってのは要するに基本攻撃力だ。魔符士にとっての魔力みたいなものだ。スペルカード・適応属性の数値・様々な物理魔法演算。その全ての計算式の根本となる数値だ。魔法の威力は魔符士の魔力×ADの補正値。それに色々な要素が幾何学的に組み合わさって決定する。だが、その根本にあるのはいつだって魔力×補正値の単純な計算式。だから補正値は重要なんだ。分かったか?」
「玄咲」
「なんだ」
「適応属性とか、カードの威力とか、魔力とか、そういうざっくりと誤魔化した、+αの要素との計算式を、教えて」
「シャル」
「なに」
「それは俺にも分からない」
「うん。無理言ってごめん」
「クロウ教官も言っていただろう。魔符士の理解なんて各数値が大きいほど威力が上がるという程度でいいと。ADをまともに頭で理解しようとすると頭が焼ける。だから魔工技士は特別なんだと」
「そだね。私も玄咲も頭が焼けるタイプだもんね」
「あとは実際に使って感覚で理解した方が早いし確かだとも言っていたな。その言葉の通り、これから実際に使って威力の違いを確かめてみよう」
「うん! あ、あとさ、も一つだけ。ランクって、何?」
シャルナはグイグイくる。玄咲は得意げに答える。
「ああ。ランクは凄く簡単で補正値の数値で決まる。具体的には、
ランク1 1~24
ランク2 25~49
ランク3 50~74
ランク4 75~99
ランク5 100~149
ランク6 150~199
ランク7 200~249
ランク8 250~274
ランク9 275~299
ランク10 300~999
となる。ランク8~9だけちょっと法則が崩れてるのはこの補正値帯になると1上げるのも一苦労だからだな。1の重みが違うんだ。レアな高級素材をたくさん使わなきゃいけなくなる。ランク10はざっくり補正値300以上だ。もともと補正値300が最高だった時代に決められた区分だから、300以降は対応していないんだ。だから一纏めにランク10とされている」
「なるほど。ランクの数値って意味あるの?」
「あるよ。ADは余剰出力の関係でランク5からギミックが2つ、ランク7からギミックが3つ搭載できるようになる。そういう区切りとしての意味合いが大きい」
「なるほど。ところで、ランク10以降は?」
「ギミックは次元圧縮魔法陣の容量係数の関係がうんたらかんたらだとかで現在最大3つまでしか搭載できない。けど、ニルヴァーナ・エンドみたいなランク10以上の出力じゃないと使えないカードとかフュージョンマジックとかあるから、高い方がいいのは間違いない」
「やっぱADも高ランクな方が強いんだね」
「まぁな」
「ありがと玄咲。分かりやすかった」
「そ、そうか。それなら良かった。でも、ちょっと自信ないから今度グルグルに会ったら確認しとこうな」
「うん。そだね。グルグルなら間違いない。それじゃ、そろそろ訓練、始めようか」
「ああ」
ADの試運転のためトレーニングモードで二人は対戦を開始する。
「と、その前に、武装解放――シュヴァルツ・ブリンガー」
「武装解放――エンジェリック・ダガー」
新たなADを装備して。
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