第24話 クソカード
カードショップ。
いつも人が賑わっている場所。
その店内で玄咲はシャルナにうんちくを垂れていた。店内を練り歩き、ガラスケースに飾られたカードを鑑賞しながら、曰く、
「カードってのは大体レベルの10の桁の左の数字+1が適正ランクだといわれているんだ。1~9レベルならランク1。10~19レベルならランク2。20~29ならランク3、みたいな感じだな。逆にランク1に対する1~9レベル、ランク2に対する10~19レベル、ランク3に対する20~29レベルを適正レベルという。少しややこしいがな」
「そだね。適正より上の、ランクのカードを、使うとどうなるの?」
「使えるが魔力消費が絶大になる。細かいメカニズムの説明はいるか?」
「分かりやすく、端的に」
「一言で言えばレベル10毎に大きく魔力の質が上がるからだ。各ランクのカードは適正レベル帯の魔力の質での発動を前提に作られている。だから、高ランクのカードを発動しようとすると質を量で補う羽目になって無駄に魔力を消費するんだ。けど、魔法を使えなくなるわけじゃないから、強力なカードなら適正範囲外でも普通に採用圏内に入る。ちなみに余談だがレベル99とレベル100の間にはかなり大きな魔力の質差がある。レベル100が尊敬される理由だな」
「高レベルの人ほど、魔法が強力になるのも、魔力の質が上がるから?」
「そうだ」
「なるほど、なー……レベルって、本当に大事だね。今の私のレベルは、42だから、ランク5以下のカードが適正か。なるべく、ランク5以下の、カードを買おう」
「俺はランク6だな。けど、少し背伸びしてランク7のカードを採用するのも全然ありだ。しかし――」
玄咲は立ち止まって、ガラスケースに飾られているカードに視線を這わす。
ランク7 サテライト・キャノン 100万P
ランク7 イージス・ソード 80万P
ランク7 ラッキー・ストライプ 77万P
ランク7 ヘルズ・ファイア 66万P
ランク7 ナコリ・ムツべ 57万P
ランク6 レイジング・ストーム 50万P
ランク6 ジャッジメント・アロー 40万P
ランク6 スワロウ・リターン 35万P
ランク6 ハイパー・ボール 34万P
ランク6 カオス・アトランタル 30万P
「……どっちのランクも高い。闇・火複合属性のヘルズ・ファイアとか欲しいけどなー。気軽には買えないな。当分は」
ランク5 ブラック・フェザー 30万P
ランク5 ブリザード・ストーム 23万P
ランク5 スター・ライト・ソード 17万P
ランク5 パワー・ゲイザー 16万P
ランク5 フィオーレ・フランマ 13万P
ランク4 ヒプノシス・マジック 11万P
ランク4 ウィンド・スナイプ・ライフル 10万P
ランク4 バーン・ナックル 8万P
ランク4 バーサーク・デッド 6万P
ランク4 ダーク・アサルト・バレット 5万P
「ランク4・5辺りの同学年相手なら十分強力なカードを主力に、ランク3以下のカードで脇を固める感じで選ぶか。フュージョン・マジックの組み合わせを意識しながら」
「ねぇねぇ。玄咲」
「なんだ。シャル」
「ある程度さ、カードの値段って、規則性があるよね。同ランクのカードは、値段が近いよ」
「いい所に気が付いたな。確かにカードの値段には規則性がある。イレギュラーこそあるものの、この学園ではカードを
ランク1 1千―3千
ランク2 3千―1万
ランク3 1万―5万
ランク4 5万―10万
ランク5 10万―30万
ランク6 30万―50万
ランク7 50万―100万
ランク8 100万―500万
ランク9 500万―1000万
ランク10 値段がつけられない
という価格帯を基準として販売している。あくまで基準としているだけだが、概ねこの価格帯通りに値段設定がされている。逆に言えばこの価格帯に当てはまらないカードはよほど強いか、よほど」
「あ、見て見て玄咲!」
「なんだ。シャル」
「ランク6なのに、凄く安い、カードがあるよ!」
「……どれ」
「これ!」
ランク6 デス・クリムゾン 6000ポイント
「しかも、玄咲の大好きな、【デス】がついてるよ! 買お! 買お!」
「駄目だ」
「え?」
「絶対買うな」
「でも、せっかくだから、この赤の扉の、イラストのカード、買いたくない?」
「シャル、世の中には使ってもデメリットしかない、買っただけで後悔するカードというものがある。クソカードという。これはその中の一つで、筆頭だ。価格帯以上に安いカードには気を付けろ。必ず何か裏がある。そういうカードを見つけたらカードショップに常備されてるカード図鑑で効果を確かめてから買うかどうか決めるんだ。でないと後悔することになる。かつての俺みたいにな」
「……このカードは、どんな効果があるの?」
「詳しくは言えない。ただ」
「ただ?」
「このカードは使用者を破滅へと導く」
「ッ!」
「そういうカードだ。危険だから絶対買うな。使うな。目に入れるな。分かったな」
「そんなカード、最初から、販売しなきゃ、良いのに」
「……」
それもそうだなと思ったが、カードショップの店員ではない玄咲にはどうすることもできない。販売しているものは仕方がない。市場に出回ったからには流通は止まらない。2人のカード購入検討はまだ続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます