第10話 アルル・プレイアズ2
アルル・プレイアズ。
CMAの8大メイン・ヒロインの1人。
星の砂を束ねたような金髪、光のように澄んだ白い肌、ただ美しい以上にどこか俗世離れした隔世の気品のある美貌、むさくるしい男が被ってそうなセンスの悪い赤白帽子。どこからどう見てもアルル。プレイアズ。CMAの8大メイン・ヒロインの一人。玄咲が何度も攻略し、愛を囁かれたヒロインの一人。本物のアルル・プレイアズはゲームにも増して美しく、明るく、気品があった。玄咲の脳内にCMAでのアルルの知識がぶわっと展開される。
(アルル・プレイアズ。CMAの8人いるヒロインの一人。90年代当時流行っていたアメリカナイズされたポップ・ガールをイメージしたキャラクター。アメリカっぽい個性の強調と他作品との差別化のためにラップ好きという個性を与えられた結果、中々な際物と化した。ただ見た目も性格もよく胸も大きいため人気は高かった。人気投票の順位は6位。CMAの人気投票は精霊も含めて行われるため10桁以内は相当な人気キャラ。
性格はとにかく明るい。快活。そして、母の気質を受け継いで百合気質。でも主人公だけは男の中でも意識している。攻略が進むと主人公の前でだけ女の一面を見せてくれる。そのギャップと特別感がたまらなかった。名台詞は初めて主人公への好意を自覚した際に思わず主人公の前で発した台詞『どうしよう。僕、君のことが好きになっちゃった』。何度見ても胸がときめいた。
容姿は金髪ロング美少女。性格とのギャップが大きく、黙ってさえいれば高貴で神秘的なオーラを纏う。精霊人かつ女王であるプライアの威厳を受け継いだ結果だ。王女然とした清廉な容姿に、CMA随一の明るい性格。そのギャップの妙と――やはり、そのラップへの眩しいまでに純粋な情熱が人気の秘訣だろう。
うん、まぁアルルといえばラップだよな。ラップで戦うという意味不明なスタイルは中々衝撃的で、でも面白かった。きちんとコマンド式RPGの戦闘システムに落とし込めていたからな。けど、リアルでどう戦うのか想像がつかない。一度きちんと戦っておきたいところだな。うむ、しかし、可愛い。可愛いな――)
「あ、あはは。やっぱり面食らってるね。そんなにまじまじと見られると少し照れちゃうな」
「あ、す、すまない」
思考に気を取られるあまり、あと容姿に夢中になるあまり失礼な態度を取っていたことに気づいた玄咲は謝る。アルルはため息をついて、後頭部に手を当ててコロリと表情を変える。元の快活な、どこか少年のような眼差しで、
「あーあ、やっぱりしっくりこないなこういう取り繕ったの。一応王女として、礼儀として初対面の人には敬語で私呼びで挨拶するんだ。そっちの方が評判いいんだよね。んー……でも、君はちょっと違うな。喋り方変えても反応薄いね。あのさ、君は、私呼びと僕呼び、どっちの方がいいと思う?」
「!」
玄咲は驚く。アルルが発した台詞はゲームだと選択肢が表示される分岐台詞だった。玄咲の脳裏にエア選択肢が表示される。
1 あ? んなもん私呼び一択だろ。女の子は女の子らしく……だろ!? 好感度-100
2 興味ないね。顔が良ければそれでいいね。 好感度+1
3 アルルは自然体の明るさが一番の魅力なんだ。絶対僕呼びの方がいい。そっちの方が可愛いよ。 好感度+5
(……全く、やれやれ、困ったゲーム脳だ。この世界はゲームじゃないんだぞ。また初日の恥を繰り返すつもりか)
思いながら玄咲は答えた。
「アルルは自然体の明るさが一番の魅力なんだ。絶対僕呼びの方がいい。そっちの方が可愛いよ」
(あ)
「玄咲?」
「だよね!」
条件反射でゲームの台詞を答えた玄咲の手をアルルがギュッと握ってくる。熱くて、弾性があった。
「!?」
「こっちの喋り方の方が自然でしょ? 絶対いいよね? うーん、君は話が分かるなぁ! 公の場だと取り繕わないといけない場面も多くてね……この学園は自然態で振舞えて、僕らしくいられる良い場所だよ!」
アルルは玄咲の手を握ったままぶんぶんと振る。年齢を考えると無邪気が過ぎる仕草。温室培養とプライアの過保護がアルルの生来の明るさをここまで高めた。煌めく笑顔、大きな仕草、アルルは生のままの感情表現がとても魅力的だった。玄咲の胸がときめく。
グイッ。
「とっ」
後ずさる。アルルと手が離れる。玄咲は背後を振りむく。シャルナが無表情で己の肩に手をかけている。眼が合う。
「……」
「困って、そうだったから」
「困ってないが」
「あ――ゴメンゴメン、今のは僕が悪かった。シャルナちゃん、だっけ? ごめんね」
「う――うん、それで、何の、用?」
「あ、そうだ! 本題忘れてた! 思い出させてくれてありがとね!」
「う、うぅ……」
「さて、天之玄咲!」
アルルは玄咲にびしぃっ! と勢いよく指をつきつけた。
「僕とバトルだ!」
「やろう」
玄咲は即答した。アルルとは来週のイベントまでに一度戦っておきたかった。渡りに船の提案だった。
「やるの?」
「ああ、やる」
「私も、ついてっていい?」
「もちろんだ。シャルに見せたくて受けたところもある」
「! うん!」
「……君たち本当に仲いいね。ま、いいことだけど。それじゃ早速バトルセンターに行こうか」
「その前にカードショップに寄らせてくれ。スペルカードの持ち合わせが
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