第33話強さとは、弱さとは
ワイ達はダンジョンライブバトルアリーナの医務室にいた。
オッサンが気絶したので、意識を取り戻すまで見守っている。
「う、う……私は何を……」
意識を取り戻したみたいだ。
自分が負けてしまったことに気付いていないようだ。
「サエキ……お前は負けたんだ……」
シャルロッテさんが悲痛そうに状況を説明してくれた。
「ま、さか……、こんな奴に私が負けるはずが……」
こんな奴ってどんな奴やねん……。
潔く負けを認めろよ……。
ったく……でっかい図体して……。
「サエキ……往生際が悪いぞ……彼の方が強かった、ただそれだけだ……認めるしかあるまい……もう彼ら新世代の時代なんだ!!!」
シャルロッテさんは本当に悲痛そうだ……。ワイの所為ではないにしても、あまり良い気分ではないな……。
「馬鹿な……こんな軟弱且つ脆弱な者に負けるはずは……魔石等という訳の分からない物のおかげで良い気になっている輩などに!!!」
それがワイに対する対抗心の正体か……人は自分が認める物しか信じることが出来ない。
ワイの事を魔石に頼らなければ何も出来ない人間だと思っているってことか……。
「ふざけるな!!! 彼は素手で戦っていたではないか!!! しかも彼は魔法使いタイプで、本来は肉弾戦で戦わない! 彼の不利な条件で戦いは行われたのにその言い草はなんだ!!! 自分の弱さを認めることも強さなんだぞ!!!」
別にワイがわざわざ不利な条件を飲んだわけでなく、ダンジョンライブ社の公式ルールでそう決まっていたから、その通りに執り行なわれただけだけど、シャルロッテさん……庇ってくれてありがとう……。
「何か不正が行われていたのではないか? あの速さと防御力はおかしいだろうが!!!」
何もしてませんけども、はい。
気付かれずにバフ魔法使う事も出来たかもしれないけど、フェアじゃないから、正々堂々と肉体のみで戦いました。
「堕ちたか……サエキ……皆が憧れる以前のお前はどこに行った!!! そんなお前のことを私は……」
と、そこでシャルロッテさんはオッサンの鳩尾にボディーブローを食らわせた。
「ぐっ……」
オッサンは再度気絶した。
「さようなら……サエキ……私の大好きだった人……」
さようならって殺してないよね⁉ 気絶しただけだよね⁉ てか、何で急に殴ったんだ……怪我人殴るなよ……どういう状況……? 又ワイだけ展開に付いていけてないパターンか? これ……?
オッサンの意識が再度戻った。
何とも言えない重い空気だ。
「う、う……私は何を……」
最初に意識取り戻した時と同じパターンやん。
オッサン、さっきの事記憶なくなってんじゃないの……?
「ゴウシロウ君さぁ、往生際悪いよ? さっさと負け認めれば?」
今度はベティーナさんかよ……もう、ほっといたれよ……。
「ベティーナ……私がこんな奴より劣っているだとでも言うつもりか……? 認めんぞ!!!」
「100:0でワイ君の勝利だね!!! ゴウシロウ君、面白くない上にご自慢のバトルまで負けちゃって終わりだね!!! じゃあねっ!!!」
ベティーナさんはオッサンの鳩尾に蹴りを叩き込む。
「ぐっ……」
又オッサン気絶しちゃった……。さらに状況が悪化した。
何でオッサンサンドバッグ状態になってるの……?
可哀想になってきた……。
またまたオッサンが目を覚ました。
生きててよかった……。
何で皆怪我人に暴力振るうん……。
ワイはクラウディアさんの方に目を向ける。
今までのパターンだと今度はクラウディアさんの可能性がある。
「………………」
良かった……クラウディアさんはオッサンを心配そうに見ているだけで何もする気はないらしい。
この隙にワイは事態を収めるために、オッサンに優しく声をかける。
「佐伯さん、良い勝負でしたね。流石お強い!!! また勝負出来たら良いですね」
どうじゃ! 完璧なフォローやろ! これで一気に事態は好転するはず!!!
「ふざけるな!!! 誰が貴様等の情けなど頂戴するか!!! 憐れみなど無用!!!」
ピキッって血管が切れそうだった。
もう終わる流れやったやん……。
『私も一から出直しだな』とか、『ありがとう、また頼む』とか言って、大団円の流れやったやん!!!
気付いたらオッサンの顔面に一発入れていた。
「……………………」
「「「「「「あっ……」」」」」」
又も気絶するオッサン。
皆の『やり過ぎ』って視線が痛かった……。
気付いたらワイも怪我人に暴力を振るっていたのであった……。
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