第27話ダンジョンキングダムコラボ

 ワイは今日ダンジョンキングダムの3人と一緒にいた。

 コラボだ。

 魔石の使用方法を配信しながら教えて欲しいという申し出だった。


 何故かワイはネット上で魔石のスペシャリストと呼ばれていた。

 魔石は本来誰でも使えるようにできているので、特別な使用方法とか、スペシャリストとかいうものはないと思うのだが、その様な扱いを受けてとても困っている……。


 クラウディアさんとシャルロッテさんは機械音痴らしく、使用に不安があるということでワイはコラボを引き受けた。

 ただし、魔石は機械でなく、そんな事世間一般の常識だと思っていたが、クラウディアさんとシャルロッテさんにとっては使用方法を熟知している者に教示して欲しいということだった。

 だがそんな2人の思いなど露知らず、ベティーナさんは魔石をぶっ放しまくっていた。


「わ~い、ワイ君とコラボだ!!! 嬉しいな!!!」


 ベティーナさんが魔石を使用すると、ボシュッ!!! バシュッ!!! とモンスターが消し飛んでいく。

 全く躊躇ないな……。

 それに比べて残りの2人は……。


「本当にこんなものでモンスターが倒せるものなのか……にわかには信じられんな……」


「そうですね、シャル……私も信じられません……」


 いやいや、お二人さん……目の前見て下さい……チビッ子がモンスター消し飛ばしまくってますよ……。


「え、えっとですね……魔石を片手に持って、さらに専用端末で起動操作を行います……」


 ワイはたどたどしい話し方で、2人に操作説明をする。


「えい!!!」


「こうか? それ!!!」


 2人が起動操作を行うと、モンスターは次々に消し飛んでいく。


「わー、凄いです!」


「なんと……これはまた……」


「社長、ナイスショットです!!! お上手です!!!」


 魔石に上手いも下手もないけれど、2人にお世辞を言っておく。

 気持ちよく帰ってもらう為だ。


「ブー!!! つまんない……ワイ君、ボクとも遊んでよ……」


「別に遊んでるわけでは……ベティーナさん、魔石の使い方慣れてるので、僕がこれ以上教えることは……」


 ベティーナさんは退屈そうにしている。

 そうだ!

 魔石を使用している時のベティーナさんは、大鎌をスタッフさん達に預けている。

 それを貸してもらえるようスタッフさんに頼んでみる。


「え、ええと、この大鎌は大人数人でやっと持てる物でして、お一人では無理だと思いますが……」


「責任は僕が持ちますので、お願いします」


「分かりました……どうなっても知りませんよ……」


 ワイはベティーナさんの大鎌をスタッフさんから受け取る。

 ベティーナさんの身長以上の大鎌なので、もっと重いかと思っていたら、意外に軽かった。

 スタッフさん達から歓声が上がる。


「おー、凄い!!!」


 そしてベティーナさんからも、


「おー、ワイ君、力持ちだね!!! どう? 重い?」


「え、えっと……軽い……かな」


 ワイはあまり考えずに正直に言ってしまった。


「むぅ……悔しいな……ボクなんてその大鎌持てるようになるまで1000年の修業が必要だったんだよ!!!」


 ちょっと傷つけてしまったかな……ワイが軽々持ち上げたことに……盛り上げようとしてやったことだけど、裏目に出たかもしれない……。

 てか、お前15歳やろ!!! 1000年も修業できるわけないやろ!!! って、ワイお決まりの心の中ツッコミが華麗に決まる。


「でも、ワイ君がボクの武器に興味持ってくれて嬉しいよ!」


 ベティーナさんは喜んでくれたようだ。

 良かった。

 だが、お子ちゃまのベティーナさんはまた駄々をこねだした。


「ドラゴン倒したい!!! ワイ君みたいにドラゴン倒したい!!!」


 ベティーナさんは、地面に転がって手足をバタつかせて駄々をこねている。

 まるで幼稚園児のようだった。

 いや、それじゃ幼稚園児に失礼か……。


「ベティ、今日は上級者ステージには行かないと言ってありますよね? 中級者ステージで魔石の使用練習だと。我儘言ってると飴玉あげませんよ?」


「そうだぞ、ベティーナ、姫様の仰る通りだ。我儘言ってると飴玉上げないぞ」


「姫もシャルもバカにするな!!! お子ちゃまじゃないぞ!!! まあ、飴玉は貰うけど」


 いや、貰うんかい!!! そこは断れよ!!!

 確かに2人からは今日は中級者ステージで魔石の使用練習だけだと聞いてきたが、ベティーナさんにとっては退屈なのだろう。

 だが、この緩んだ空気がこの後壊れるなんてワイ達はまだ知らなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る