第22話中級者ステージ最終地点

 中級者ステージ75層。

 現在のダンジョン環境で、ある意味最終地点と考えられている場所。

 次のフロアは上級者ステージの開始地点である76層。

 結界で守られている75層とは一階しか違わないのにその危険度は比べるまでもない。


 75層にいるパーティーを組む無名配信者達の議題は何時も『危険を冒してでも76層に進むべき!!! いや、中級者ステージで着実に実績を積みべき』等と熱い議論が交わされているが、どのパーティーの結論は一緒。


 命が惜しい。

 76層以降には進まない。

 中級者ステージで着実に実績を積めば登録者は増えるという結論。

 だがそんな願いも虚しく、彼らの登録者が増えることはない。


 だが、何時もされている議論は今日はされていなかった。

 ワイが世界初ダンジョンで魔石を使用する。

 ダンジョンライブ社の研究所で、ダンジョン内の環境を模した空間で試験は行われてきた。


 甚大な被害をもたらしてきた実験だったが、回を重ねるごとに失敗は減り、仮想空間とはいえ、被害は完全になくなった。

 何故この様なことをワイが知っているかというと、ダンジョンライブ社の内部事情を暴露するネット掲示板で知った。


 今日は転移装置で75層まで移動してから76層に進む。

 75層にワイが到着した瞬間、配信者達の視線は全てワイに注がれた。


 この数日テレビを点けると、各局この件の話ばかりだった。

 聞いた話によると、世界中全て同じ状況だという。

 見知った顔が心配そうにワイの方を見ているが、今ワイが話さなくてはならないのは目の前の女性だ。


 ダンジョンライブ社、島本氏だ。

 彼女から魔石のレクチャーを受ける。


 魔石には色がついておりそれで属性が決まっているとのこと。

 赤なら炎属性、青なら氷属性といった感じで。

 中には魔素が充填されており、その量で威力が決まるとのこと。


 低ランクの魔石なら一つ数万円、高ランクの物なら一つ数百万円するとのこと。

 ただし、低ランクの物は雑魚モンスターしか倒せず、高ランクの物になると凶悪なモンスターすらも一瞬で消し炭に出来るとのことだった。


 ワイは高ランク魔石各属性詰め合わせセットを無償で受け取った。

 数千万か……とんでもないな……。

 ただし、島本氏によるとこれからダンジョンライブ社が手にする利益からすると微々たるものらしい……。


「おはようございます。眠れましたか?」


「おはようございます……眠れるわけないでしょう……こんなに注目されて……」


 今日はワイのチャンネルだけでなく、1億人も登録者がいるダンジョンライブ公式チャンネルで全世界に配信される。

 緊張するなという方が無理である……。


「今日の流れとしましては以前ご説明した通りでして、さらに先程ご説明した手順で進めていただきます」


「はい……畏まりました」


 色々細かいことはあるが、簡単に言えば魔石を使ってモンスターを倒してくれれば良い。

 成功すれば英雄、失敗すればダンジョンライブ社から責任を追及され、マスコミからはバッシングだ。


 魔石の使用方法としては、使用する魔石を片手で持ちモンスターに向ける、

 さらに片手で操作できる専用端末で発動させる。それだけだった。


「ではご武運を……我々は75層で見守っていますが、ドローンが撮影しますので」


「畏まりました。行って参ります」


 そりゃ、付いてきたくないよな……危険だし……まあ、始めから期待してないけど……。

 元ニートだったワイは、世界中の期待を背負って76層に歩を進めるのであった。

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