第13話ダンジョンガールズ

「みんな~? 盛り上がってる~?」


「あいっ! あいっ!」


 中級者ステージ50層で行われているダンジョンガールズライブは最高潮だ。

 ワイみたいなコミュ症には、ライブなんて言葉最も似合わないけど、配信界隈のことに余りにも疎すぎるので、何の気まぐれか見に来ることにした。


 最前列SSS席は100万円もするが、金額のことより最前列でライブを見るなんてことがコミュ症のワイには出来るはずもなく、後方F席7000円の席でライブを観覧している。


 配信者達も見に来ているが、一般の方達も、結界が張ってある5の倍数のフロアから出ないという契約書を交わすことで、見に来ることが出来る。


 それにしても凄い熱気だ。

 日頃のストレスを発散するかのように、みんな熱狂している。

 こんなに沢山の人を夢中にさせるアイドルって職業はなんて素敵なんだと思ってしまう。


 ダンジョンでモンスターを倒すだけじゃなくて、ライブで歌い踊り、登録者1000万人のダンジョンガールズ公式チャンネルでバラエティー番組の収録もある。


 ワイなんて、配信終わったら、飯食って、ゲームやるかマンガ読むかして寝るだけだ。

 到底、彼女達みたいなストイックな生活は出来ない。

 尊敬に値する。


 ライブ中何度か、綾瀬さんと目が合った気がしたが、こんな後方の席に気付くわけないし、すぐに勘違いだと悟った。


 ワイは、人の名前が余り覚えられず、最近まで心の中で綾瀬さんのことを綾瀬何某と呼んでいたが、流石に失礼なので調べたらフルネームは綾瀬よつばということだった。

 会ったときに名乗っていたっけ、そういえば。


「アンコール! アンコール」


 観客の熱は冷めない。


「あいっ! あいっ!」


 もう、ライブの終了は近づいているのはみなわかっているが、それを忘れるように熱狂している。


「皆さん、ありがとうございました~、良かったらまた来て下さいね~}


 ライブ終了。

 みな、力尽きたように会場を後にしていく。

 だが、その表情はどれも満足そうだ。

 改めて思う、アイドルって大変な職業だと。

 そして、素敵な職業だと。

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