大文字伝子が行く143

クライングフリーマン

パウダースノウからの挑戦(10)=大団円

 ====== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。

 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。

 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。

 金森和子二曹・・・空自からのEITO出向。

 増田はるか三等海尉・・・海自からのEITO出向。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 日向さやか(ひなたさやか)一佐・・空自からのEITO出向。

 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向。

 江南(えなみ)美由紀警部補・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。

 久保田嘉三管理官・・・警視庁管理官。久保田警部補の伯父。

 久保田警備補・・・警視庁刑事。あつこの夫。久保田管理官の甥。

 斉藤理事官・・・EITO司令官。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。

 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。

 斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 渡辺副総監・・・警視庁副総監。あつこの叔父。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。

 馬淵悦夫・・・マトリ捜査官。筒井が一時配属されていた時に一緒に捜査していた。

 依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。やすらぎほのかホテル東京支配人

 南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

 大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。

 芦屋一美警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。

 芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。

 芦屋三美(みつみ)・・・芦屋財閥総帥。総合商社芦屋会長。EITO大阪支部のスポンサー。総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。

 足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。

 河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。

 小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。

 本郷弥生2等陸佐・・・陸自からのEITO出向。馬場の代わりに、EITO大阪支部に転勤。

 井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。オスプレイの操縦も担当する。

 ジョーンズ・・・オスプレイの操縦士。

 中道新九郎・・・SAT隊長の警部。SATは副総監の指揮下にある。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署生活安全2課勤務。

 橋爪警部補・・・丸髷警察署生活安全2課勤務。

 中津警部補・・・元警視庁捜査2課だが、EITOの応援メンバーとして駆り出されることが多いので、久保田管理官の直属になった。



 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==

 ==EITOエンジェルスとは、女性だけのEITO大阪支部の精鋭部隊である。==


 午後2時。EITO本部。

 ベンツで到着した、芦屋三美が深刻な顔で言った。

 「ウチの社員がさらわれたかも知れない。昨日から連絡が取れない、と会社から言ってきた。場所は旧副島邸。」

 伝子は理事官と顔を見合わせた。

 午後3時。葡萄館。

 ショベルカーが5台突っ込んで行った後、集団は四方発八方に散ることを余儀なくされた。

 ショベルカーが退散した後、ホバーバイク隊が到着した。

 ホバーバイクとは、民間開発の『宙に浮くバイク』をEITOが採用、活躍するようになった。

 本郷は、きりもみ状に、散った一団の固まりに突っ込んで行き、機関銃を持った敵に、水流ガンで、グミ状になる水を発射した。

 青山は、日本刀を持った敵の脇にフルーレを刺した。怪我はするが、フルーレの剣先とは違い、武器を落すことは出来る。

 四方八方に散った集団は、全員ガスマスクを着用した。こしょう弾の攻撃から身を守る為だ。

 大前は、銀玉鉄砲を両手で持ち、拳銃を持っている者を狙って連射した。先の闘いで二美が試し打ちしたものとは違い、パチンコの玉である。

ホバーバイク隊が退くと、選挙の街宣車が登場した。全面にアクリル板を張ってある。

 田坂、安藤、愛川静音の弓矢隊だ。3人は、井関が身を低くして渡す矢をつがえ、 次々と、機関銃を持っている者の掌や手首を狙った。今回は、体に傷をつけてもいい、と言い渡されている。

 弓矢隊が退き、去ると、マイクロバスが到着した。囚人護送用だから、頑丈だ。

 エマージェンシーガールズが次々と降り、EITOエンジェルスが次々と降りた。

 あつこ率いる金森、馬越、新町、江南、葉月、小坂はジュン率いる悦子、今日子、美智子、稽古、みゆきのEITOエンジェルスと合流し、シューターとブーメランを乱舞させながら、バトルスティックで敵に応戦をした。

 シューターとは、うろこ形をした手裏剣で、先端には痺れ薬が塗ってある。

 装甲車が2台、到着した。続いて、中道が乗ったバイクが到着した。

 集団の一人が、装甲車に気づいて、ダイナマイトを投げた。装甲車に乗り移ろうとした中道は、爆風に倒れた。

 午後3時。副島邸。

 そっと、侵入した伝子と三美は、芦屋財閥の会社の測量部社員が、旧書道教室の柱に縛れているのを発見した。

 拳銃の発砲があった。危うくのところを、伝子は交わした。

 「隊長自らおいでになるとはね、大文字伝子。そちらは、芦屋総帥かな?二人とも、ユニフォームがお似合いね。」

言った女が引き金を引こうとした瞬間、女はウッと肩を押えて、蹲った。

午後3時。東京ドーム。

 敵陣営は確かに3000人いた。ドームの屋根が開いた。一団は上を見上げて驚愕した。

 『大量の』エマージェンシーガールズが降って来たからだった。それは、すぐに勘違いだと男達は気づくことになった。

落下したエマージェンシーガールズのユニフォームから、こしょう弾が弾けたからだ。

 ここでも、ショベルカーが突っ込み、集団を飛散させた。

 ホバーバイクで水槽タンクを牽引してきた馬場は、ホバーバイクの改造水流ガンで銃や機関銃目がけて放水を始めた。同じくホバーバイクでやって来た高木は、同様のことを始めた。

 水槽のタンクの水が無くなった頃、MAITOがやって来て、消火弾を落した。

 待機していたマイクロバスが到着し、エマージェンシーガールズとEITOエンジェルスが降りて、闘いに走った。高木と馬場も、バトルスティックを持って走って行った。

 マセラティが登場した。一美が運転し、二美が縦横無尽に走らせ、ガトリングメダル砲を放った。

 それを合図に、なぎさ率いる、みちる、増田、大町、浜田、結城、日向、稲森、工藤、伊地知、越後、下條は、総子率いる祐子、真知子、真美、ぎん、あゆみ、真子のEITOエンジェルスと合流、シューターとブーメランを乱舞させながら、バトルスティックで敵に応戦をした。

 午後4時。旧副島邸。

 女は、須藤の腕の中でぐったりしていた。クルマで待機していた高坂看護官がやって来て、女の手当をした。咄嗟に投げた須藤のメスは深く刺さっていた。

 「この人は、副島先輩の親戚の・・・確か横田美智子さん。」と、エマージェンシーガールズのマスク部分を外した伝子が言った。「あんたが、パウダースノウだったのか。」

 「先日、測量に来させた社員が人影を見た、というから興信所に見張らせていた。明け渡し開始が1ヶ月以上空いていたからおかしいと思ったの。49日法要も、こちらでは行わない、と言っていたのに。興信所を引き上げさせたのは、失敗だったわ。まさか、また測量に来るなんて。」

 同じく、エマージェンシーガールズのマスク部分を外した芦屋三美が言った。

 横田は、ズボンのポケットをまさぐっていたが、うっと、呻いた。

 「お前、何をした?」「自白剤を自分に射った。これから、私が何を言っても、私の本意ではない。私は自白させられた、ということになる。久しぶりだな、須藤。」

 午後4時。装甲車内。

 負傷した中道の手当をするエマージェンシーガールズ姿の飯星。

 「エマージェンシーガールズの中には、看護師もいるのか?」

 「ああ、警察官もいる。」エマージェンシーガールズのマスク部分を取った、あつこが言った。

 「渡辺。やはり、お前もEITO隊員だったか。お前が隊長か?」「いや、副隊長だ。」

 「そこに、ICレコーダーがある。録音してくれ。」あつこが、頑丈そうな箱を開けると、ICレコーダーは、確かにあった。

あつこは、スイッチを押した。

 「何が言いたい。言ってみろ、中道。」「俺、お前に惚れてたんだぜ。」「今、言うことかよ。」「済まん。寿命が迫った人間は正直なんだ。俺は、SATの隊長だ。」  「知ってる。」「俺が『えだは会』の代表だ。」「えっ!!」

 「えだは会の最後のあがきは、パウダースノウを邪魔することだった。後で確認するといい。50人の殺人予告リストの該当者は全て『消し込み』が終っている筈だ。死んだ者を含めてな。俺は、えだは会の枝葉を守りたかった。作戦が失敗した幹の枝葉は、やがて消される。武闘派であろうが無かろうがな。」「『木を隠すには森に』と言う訳か。」

 「幹も、枝葉も、元から那珂国の人間もいれば、そうでない人間もいる。欺されて仲間にされた日本人は、俺の同胞だと考えている。法に触れたことをやった者は、勿論、法の裁きを受けるべきだ。だが、『仲間になった』ことは罪とは言い切れない。」

 「借金とか弱みとかで仲間になった場合は同情の余地があると?」「まあ、俺の感情に過ぎないがな。パウダースノウも、もう終わりだ。お前達の知恵と勇気を見くびりすぎた。」

 「中道。ひょっとしたら、お前も弱みを握られたのか?」「ああ。この間、スイミングクラブ経営者が殺されただろ?あれ、おふくろなんだ。最初、おふくろを助ける為に組織に入った。だが、『ミイラとりがミイラ』になっちまった。俺は、SATとダークレインボーの『こうもり』になった。SATの副隊長の木村には、随分迷惑をかけた。隊長として、立派に組織を盛り上げて欲しい。」

 装甲車の隣に、ドクターヘリが到着した。気づいた武装集団を、飯星とあつこが援護して、中道はドクターヘリに乗せられた。

 ドクターヘリが飛び立った後、バイクでやって来た筒井が装甲車に乗り、SATの装甲車軍に加勢に入った。

 飯星とあつこも、再び闘いに参加した。「中道。死ぬな。お前とお前のおふくろさんの敵は絶対とってやるからな。」心の中で、あつこは、かつての同期生のことを思いながら叫んだ。

 午後4時。津軽海峡。

 突然現れた、旧青函連絡船と、通称青函フェリーの群れのループ旋回に。「領海で無い水域」に侵入しようとした、オトロシアの潜水艦は、Uターンを始めた。フェリーや青函連絡船の乗り組み員が海自や海上保安庁の制服を着ていたからであった。上空には、空自の戦闘機が数機、待機していることも判断の材料だった。

 午後4時。仙石諸島。

 領海に侵入しようとしていた、那珂国の船に、海自の護衛艦から、夥しいドローン機が発進し、NATO加盟国からの軍艦が応援にきた為、那珂国の船はUターンしていった。

 午後4時。明け島。

 阿寒国の実効支配の沿岸警備隊に向かって、無数のタグボートから「レーザー照射」が行われて数時間が経った。阿寒国政府から、厳重抗議があったが、「証拠がない」為、政府は無視した。市橋総理は、「レーザー照射が危険というのなら、まず、そちらが過去に行った行為を認め謝罪をして下さい。」と毅然として、外務省を通じて声明を出した。

 午後4時。鹿児島県。桜島付近。

 北野国から、『衛星』と称するミサイルが発射されたが、桜島火口からパトリオットミサイルが発射された。宮崎県付近には、トマホークを準備した潜水艦も待機していた。

 かの国の抗議には、「『衛星』の破片が民家に落ちそうだったので、止むなく打ち落としました。『衛星』の部品は必要ですか?」と、総理は外務省を通じて声明を出した。

 午後4時。東京国際空港。

 武装した集団が現れたが、警察犬チームが警察官や警備員に混じって活躍、久保田警部補の指示で、全員逮捕連行された。

 午後4時。東京スカイツリー。

 観光客を人質に取って、暴れようとした賊を、銀頭巾の格好の天童が一刀両断した。

 橋爪警部補が警官隊を引き連れ、賊を逮捕連行した。

 午後4時。東京駅。

 中津警部補率いる警察官チームと鉄道警察官で、女性専用車両をジャックした犯人達は逮捕連行された。

 午後4時。葡萄館。

 瀬名のライブは、完全に中止が発表されていた。だが、それを知らずライブにやって来た、親子がいた。誰もいないのを不思議とも思わず、観客席にやって来た。

スーツを着た紳士が近寄って来て言った。

 「ライブは中止だよ。ここは、危険だから帰りなさい。さ、早く。」

会場だったところでエマージェンシーガールズが闘っているのを見た母親は、男に頭を下げ、言った。「ありがとうございます。あなたは?」「ただの『警備員』です。さ、早く。流れ弾はいつ飛んでくるか分からない。」

彼が言った直後、近くの座席に『流れ弾』が当たった。

 母親が頭を上げると、男はもういなかった。

 親子は慌てて出入り口に向かった。

 「関係者以外立ち入り禁止、って札要ったかな?」と、陰から見守っていた男が呟いた。

 午後5時半。本庄病院。

 オペ室前。本庄院長は首を横に振った。そして、青ざめている須藤医官に言った。

 「須藤先生のメスの傷が原因じゃ無い。出血した際、タトゥーの菌が入ったんだ。詰まり、毒で死んだ。司法解剖の結果が出るまでもなく、内臓もやられていたようだな。何らかの、がんだ。」

 午後5時半。EITO本部。司令室。

 伝子の報告を聞いた理事官は、「そうか。残念だったな。一佐の東京ドームチームは上手く平定出来たようだ。警視の葡萄館チームは、何とか平定したものの、SATの中道隊長がドクターヘリの中で殉職した。東京駅、東京スカイツリー、東京国際空港も事件を起そうとした犯人を逮捕連行した。仙石諸島、明け島、桜島、津軽海峡で、チョッカイ出そうとした近隣国の作戦も自衛隊と海上保安庁の活躍で、なし崩しにした、という報告も入っている。ご苦労だった。ああ、それから、副島邸を調べていた愛宕君からの報告で、副島準隊員が密かに書いていた日記が見つかった。組織の資料もだ。現地解散だ。メンバーには、私から既に申し渡している。」

 午後5時40分。ベンツの中。

 三美が運転している。

 伝子が見ていたスマホのテレビ電話に、夏目が替った。

 「久保田管理官や副総監と打ち合わせしてからのことだが、恐らく中道警部、いや、中道警視正の葬儀を警察葬で行うことになると思う。EITOの警察官組は、葬儀に出席させたいが、いいかね?」「勿論です。そうして下さい。他の者は休息させましょう。」

 電話を切った伝子に、「便利な世の中になったものだ。電話でもありデジカメでもありインターネットに繋がる、ゲームも出来る。」と言った。

 「須藤先生。パウダースノウの知り合いだったんですか。ひょっとしたら、そのためにEITOの医官に?」

 「うむ。こういう日は予測していた。あいつは、元看護官だ。同い年ということもあって、よく衝突した。いつの間にか、那珂国の挙産主義に惹かれてしまった。というより、そういう男にたぶらかされたんだよ。傷口のタトゥーを見ただろう?あいつの従妹が、お前の先輩だったとはな。運命はどこでどう繋がっているか分からんな。」

 「明日が葬式で、明後日が結婚式。忙しいわね、隊長。」

 「ええ。総子達は依田のホテルに泊まります。一美さん達は?」

 「私は残るけど、一美と二美は大阪に戻るわ。お留守番で。」

 「大文字。私も結婚式、出ていいかな?」「ええ、大丈夫です。」

 須藤は、初めて笑った。

 翌日。午後1時。クリスチャン墓地。

 葬儀進行は、久保田管理官が行った。

 号砲が鳴った。弔辞は副総監と、あつこが読んだ。

 中道は、クリスチャンだったので、キリスト教式の葬式だった。

棺は主に、SATの隊員で運び、参列者の中に、行方をくらましていた馬淵の顔も見えた。

 葬儀が済んで、皆が引き上げる時、筒井を呼び止めた者がいた。馬淵だった。

 「あの時は悪かった。俺は中道の配下で動いていた。」「葉っぱか?」「ああ。そうだ。」

 「何でばらす?」「中道の命令で、一時的に遠ざけたかった。俺の任務は終った。俺は、警察の捜査官を辞める。夏目リサーチの社員になった。よろしくな。」

 「大文字に頼んで、引っぱたいて貰う。」「引き受けた。」

 2人の後ろから近づいた伝子が、馬淵を平手打ちした。

 「お見事!」と、後ろから高遠と夏目が拍手をした。

遠くから、あつこが見ていた。

 ブルーインパルスが頭上を飛んだ。朝はぐずついていたが、今の空は抜ける様な青空だった。

 ―完―

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大文字伝子が行く143 クライングフリーマン @dansan01

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