異世界に転生したらしいのですが、色々あって死にそうです

yorschbaum

第1話 これから転生するらしいです

 男が一人、真っ白な空間に立っていた。


 身体的にも服装的にも、これといった特徴もない平凡な男は今現在の自分が置かれている状況を理解することができずに居た。


 ――なんだここは、どうして僕はこんなところに居るんだ。


 疑問は次から次へと噴出し、もはや何を疑問に思っているのかも分からなくなった頃、頭の中に声が響いた。


『こんにちは。いきなりですが、今から貴方を異世界に送ります。何か願いはありますか?』


 ――は?


 男の思考は完全に停止した。


 そして、新たな疑問が頭の中を駆け巡る。異世界に送る?つまり僕は死んだのか?それとも別の原因が?願い?叶えてくれるのか?そもそも、この声は誰の――


『すみません、貴方一人にかけている時間はあまり無いので、質問にだけ答えていただいてもよろしいですか?』


 丁寧な言葉使いの中に微かな苛立ちを感じ取り、男は反射的に答えた。


「えっ、ぁの、じゃあ……死にたくない、です……」


 どうしてそう答えたのかは分からない。


 ただ無意識に、自分の願いを言葉にした結果がその答えだったのだ。


 少しの沈黙――、もしかしたら何か不味い事でも言ってしまったのだろうか、そんな思考をかき消すようにまた、頭の中に声が響いた。


『――はい、貴方の願いは確かに受諾致しました。それでは良い人生を』


 その言葉を最後に、僕の視界は電源が落ちたように真っ暗になった――。

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