たいよう
rouF Love(らふらぶ)
たいよう
無機質な部屋の中、ベッドが一つとテレビが一つ、周りはカーテンで仕切られている、それだけの
この話を隣に座ってニコニコとしながら聴いてくれる君が愛おしい。コロコロ変わる豊かな表情と大きなリアクションで僕の話を聴いてくれる君は、僕にとって幸せそのものだ。
僕はどうやら助からないらしい。先日担当医は僕と家族と、家族同然の君に告げた。それから数日、君は来なかった。寂しさもあったが、それよりも君が心配だった。今すぐにでもこの部屋を飛び出して君を探しに行きたいと何度も思った。が、それを誰もが許さなかった。
部屋に入ってきた君になんて声をかけよう、そう思っていたが、いざ仕切りのカーテンを
「先生!患者さん起きました!」
目覚めと同時に看護師が叫ぶ。どうやら数時間気を失うように眠っていたらしい。
君が今にも泣きそうな顔で僕を覗き込んでくる。こんなときでさえかわいいと思う僕は、末期だろう。
「よかった…もう起きないかと思った。」
僕の胸に突っ伏して
起きたばかりの足りない頭で、僕は今回の一件で自分がもう長くはないことを悟った。次に寝たらまた起きられる確信がない。その前に、君に、君だけでも幸せになってほしい。そう思い、
「僕が死んでさ、君が一人になっても、毎日を笑顔で過ごしてほしいんだ。」
と伝えた。いつもの太陽のような明るい表情で生きてほしい。僕なんかのためにその笑顔を曇らせないでほしい。そう言うと、ただでさえ泣きそうな顔をしていた君が、その気持ちが
「なんで、そんなこと言うの!」
大粒の涙を溢しながらクシャクシャの顔で僕を睨んでくる。僕はそんな君が愛おしいと思う。僕はその泣き顔に手を伸ばし、頬に触れる。幸せはこんなに
こんなに優しい君のこの先ずっと続いてく日々が幸せであることを祈って。さよなら。
たいよう rouF Love(らふらぶ) @rouF_Love
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