牙古鳥夢日記

雅郎=oLFlex=鳴隠

罪の意識がもたらす悪食

 夕方の過食が、深夜の寝付けなさを加速した、ある夜の微睡みにて。



 そこにあったのは、現実にあった同輩たちのコミュニティ。見かけた人は、印象に残る面々と、もう一人は本来そこにいなかった人。そもそも、その人はコミュニティの存在意義に属する人ではないはずなので、誰か別の人と存在が混ざっていたような気もする。

 仮称はN。混ざっていた別の人もN。すなわちN²。

 ……いや、そんなことはよくて。


 そのコミュニティというのは、小説を書く者たちのコミュニティだった。現実にはDiscordのサーバーとして存在するものだが、夢の中においては、なにか不明な「白い画面」のチャットルームのように存在していた、というように記憶している。少なくともDiscordの画面ではなかった。


 そこで、仮称Nが小説内に出てくる固有名詞の名付けについて困っている旨を言い、それに対して私が何かを挙げたのを記憶している。確か、子音がNで始まる固有名詞を望んでいて、私は「ノルカソルカ」を提案したのだった。具体的には、なんだろう。国名とかだろうか。


 私としては、そこまで馬鹿げた提案という認識もなかったが、殊の外、仮称Nにとっては受け入れがたいものだったのか、割と強めに否定されたように思う。実際には、そこまで怒っていた訳ではないのかもしれない。それでも、きっと気分を害してはいたのだろうと明確に感じ、私はへこんだ。

 実のところ、私のメンタルはそこまで強くない。

 ……そもそも、普段の動向を評価するだけでも、それは疑いようもなくそうかもしれないが。典型的なメンヘラじゃねえか、と思われている可能性もありそうな気がする。どこからが、貴方がたにとってのメンヘラでしょうか。そんなことも、どうでもよくて。


 そこから、若干場所が変わって、懐かしい地元の実家の、懐かしい私の学習机の引き出しに入っていた、幾らかの種類のケーキを食べたのである。少なくとも二種類以上の、ホールケーキだった。

 あまりにも唐突過ぎて、訳が分からないかもしれない。夢なので。

 もちろん、実際には適切な間があって、正しく場面に転換があった、という可能性もなくはない。仮にそうだったとして、私はそれを覚えていないので、描写は出来ない。それを「どうにかする」動機があるとすれば、夢の経験を実際に脚本として創作をする場合くらいだが、これは今のところ、そういうのが目的ではない。故に、一旦は置いておく。永遠に置いておかれるだろう。


 話を戻す。当然、私の学習机には、冷蔵機能など付いていない。なので、そのケーキは常温で保存されていたことになる。ただでさえ生もので、そこまで長期保存が出来るものでもないのに、そのケーキは最低でも二ヶ月以上放置されていた、ということを覚えている。

 何故そうだと知っていたのかは、あまり記憶にない。私の誕生日に紐付けられていたのか、もっと別のなにかに由来するのかは知らないが、何にせよそのケーキは、普通であれば間違いなく食するに値しない、確実な腐敗を伴う毒物であった。


 だが、私はそれを毒と知りながら、なおも食べることを選んだのである。厳密な理由は、定かではない。それでも、私はそれを単に捨てることが出来なかった。あるいは、それは食品を無駄にする事を良しとしなかった、私自身の意地かもしれない。意地汚さという意味ではなく。

 現実であれば、どうあれ食い切ることは不可能であった毒物それも、夢の中では「何か違和感はあるけど、食えるか食えないかで言えば別に食える」ものではあった。しかし、食うべきではないと頭では明確に分かっているそれを、恐らくは食うことによって遠からず腹を下す理由になると重々承知の上で、それでも幾許かの不快感を覚えながら、食うことそのものは止めなかった。



 覚えているのは、そこまで。そこからは覚醒していた気もする。


 夢に意味があるかは知らないものの、その行動の裏には、他者に与えた不快感への、罪の意識があったのかもしれない。その行為には、特に何ら利益が伴わない、無意味な自傷と贖罪があった。


 何にせよ、美味いものを食うことは望ましいことで、美味いものを美味い内に食えないことは望ましくないことであるから、食に対してはもっと丁寧に向き合い、無駄な過食が後悔に繋がることはないようにしたい、と思う。夢日記に妥当な締めとかないと思うので、今回はここまで。

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