第1話
二人並んで校舎に足を踏み入れる。
小、中と通ってきた校舎とは全く違う雰囲気に心が躍る。
学校に来て胸が高鳴るのなんて、多分小学校に入学した時以来だ。
「てかさ、俺この学校は俺含めて三人生徒がいるって聞いたんだけどあれってウソなの?」
「あー、一人本土の高校に進学しちゃったんだ。だから二人で合ってるよ」
「ふーん、そっか」
他愛もない会話しているとすぐに職員室に到着。
扉には『佐々木○』とプラカードがかかっている。
「じゃあ先生呼ぶね。美嘉ちゃーん!来たよー!」
扉を開け、千夏は椅子に座って腕組してる女性に話しかけた。
気の強そうな目つきにショートヘアがマッチしており、可愛いよりも綺麗やかっこいいという印象を受ける。
そして何より俺はその顔に覚えがあった。
「千夏いつも言ってるけど声が大きすぎ。ここ海の上じゃなくて教室だって」
「えへへ。やっぱり声が大きい方が伝わるかなーって」
「そう言う問題じゃないんだけど……まぁいいや。ちゃんと例の男の子を連れて来てくれた?」
「はい!もうばっちり連れてきましたよ!」
千夏の言葉に、目の前の女性の視線がこちらに移される。
彼女は俺を確認した途端、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「久しぶり怜司。少し見ない間に随分大人っぽくなったね」
「……そちらもお変わりないようで」
俺の返答に彼女は更に笑みを浮かべた。
隣で千夏の頭上に?が浮かんでいるのを無視して俺は言葉を続ける。
「うちの両親にこの学校のこと教えたのって美嘉さんだったんですね」
「そうだよ。お姉ちゃんから怜司のことは定期的に相談されてたから、ちょっと提案してみたの」
「ありがとうございます。色々と手配してくれて」
「当たり前じゃない。怜司は私の息子みたいなもんだからね」
「え、美嘉ちゃんの息子?」
千夏が横で声をあげる。
これは訂正しておかないとあとあと誤解が大きくなりそうだ。
「美嘉さんは俺の親戚だよ。厳密に言えば叔母にあたるのかな」
「そうそう。怜司は私のお姉ちゃんの子供だよ」
ちなみに美嘉さんはうちの家族と同居して生活していた時期もある。
だから俺にとっては年の離れた姉に近いイメージだ。
本人は息子って言ってるけど。
「えーそうなんだ。なら私が迎えに行くこと怜司くんに言ってくれても良かったじゃんー」
「あ、確かに。すっかり忘れてた」
「それに俺が住む家こいつにバラしてましたよね?人の家を勝手に教えてるなんてプライバシー的にどうかと思いますよ」
「いやそれはしょうがないよ。こんな小さい島でプライバシーなんてある訳ないじゃん」
美嘉さんの言葉に、千夏もうんうんと頷いている。
どうやら俺がこの15年間培ってきた常識はここでは通用しないらしい。
「それに私が言わなくても千夏は怜司が住む家知ってたと思うよ。ね、千夏」
「うん。だってあそこ私の家だし」
「……は?いやだってあそこ宿だっただろ。一階はお食事処になってて」
「うん。私の家はお食事処兼民宿だよ。私はそこの看板娘ってやつだね」
千夏の言葉に、今度は美嘉さんがうんうんと頷いている。
どうやら俺はこれからの3年間こいつと大部分を過ごすらしい。
「え、えぇ。こいつと一緒に?」
「ちなみに怜司くんが泊まる部屋、私の隣だから」
「………最悪じゃん」
「ちょ、今最悪って言った?!」
美嘉さんを見ると、今日一の笑顔で俺たちを眺めていた。
多分、この状況を一番楽しんでるのは美嘉さんだ。
「千夏、怜司は照れてるだけだから安心していいと思うよ」
「照れてるだけ?」
「そそ。怜司も年ごろの男の子だからねー。こんな可愛い子と一緒に過ごすのが恥ずかしいんだよ」
「え、そうなの?怜司くん」
「違うから!全然違うから!」
その後、今後の日程や手続き的な話をして、学校を後にした。
俺たちの足取りは、家へと向いた。
【あとがき】
呼んで頂きありがとうございます。
この小説を書くにあたり、実際に有人島に住んでいた友人の話を参考にしています。
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