旅すれば、三度の飯より寺社仏閣

黒月一条 ₍ᐞ•༝•ᐞ₎◞猫部

2023.04.18~-4.19

第1話 京都全力ひとり旅―貴船神社

 一日目。


 7時39分、東京発のぞみ。


 新幹線の車体を目にしただけで、湧き上がる高揚感を抑えることはできなかった。

 

 数年振りの京都。一泊二日と短いが、嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。しかもはじめての一人旅。観たいところ、行きたいところが多すぎて、事前計画の段階でお昼ごはんは早くも除外された。


 4月。

 行き詰まっていた。長い人生、そういう時期なんだろうが、何もやっても上手くいかない時ってあるじゃん?

 にしたってとにかく何年も燻って燻って消し炭になりそうだったのにいい加減嫌気がさして、久しぶりの二連休、平日だし、桜も終わったし、数日前に思い立って決めた!


 行くったら行くんだよ。


 9時51分、京都着。


 久しぶりのため駅の看板に惑わされ、少々遠回りをしながら観光案内所でフリーパスを購入。貴船鞍馬フリーパス。市内フリー区間バス乗り放題と、貴船神社、鞍馬寺までのバス区間、叡山電車、京阪電車に乗れる。


 だが早速乗ったのは地下鉄烏丸線。この時間、国際会館前駅まで行きバスに乗り換えると最速で貴船神社まで行ける。京都駅から国際会館前駅までは運賃が別で掛かるけれど、こちとら昼ごはんすら時間が惜しくてスルーするのだ。最速を選ぶ。


 国際会館前からバスで20分ほど、叡山電車の貴船口駅に着く。ここからさらに5分ほどのバスを乗り継ぐが、マイクロ型の小型バスになるため時期によっては増便もあるのだろうけど、かなり待つかもしれないなぁなどと思いながら最前列で待つ。


 バスを降りたのは11時10分。貴船川沿いを歩く。川のせせらぎと鳥の鳴き声が心地よい。旅のお供にOM-Dというカメラをぶら下げて、時折足を止めながら涼しげに流れる川沿いをひとりわしわし歩くと、ほどなく貴船神社の赤い鳥居が現れる。ガイド本などでお馴染みの、あの赤い鳥居だ。


 その先に延びるのは、やはりこちらもお馴染みの石階段。両側を赤い灯籠に囲まれた何とも美しい階段に、青紅葉が揺れている。


 だが驚いた。人があまりいないのだ。少し待てば誰もいない階段を写真に収めることができてしまう。この頃はまだマスク規制のある最後のシーズンだったからなのか、外国人はちらほらいるけど、日本人はまだあまり……という感じ。

 

 でも占領できるのはラッキーなので、へたくそな写真を何枚か撮り境内へ。


 おわ……。社殿が……わりと新しい。


 まずは参拝。境内にはそれなりに人はいたけども、待たずに参拝できる辺り、やはり空いてるのだろう。


 さてそれでは。リュックをがさごそして御朱印帳を取り出す。御朱印集めは10年ほど前から始めたが、欲しいなーと思うところでしか貰わないようにしている。直書きの御朱印が復活しているので少々時間が掛かるそう。


 普段はやらないが、水みくじが有名らしいのでやってみた。置いてある紙のみくじ束の中から一枚好きなのを取って、社殿前の水に浮かべると文字が浮かんでくるのだ。


 小吉。

 うん、まあ、ね。結んできた。


 時計を見ると、次のバスまで30分ほどある。


 貴船神社には1kmないくらいのところに奥宮があって、本当はここには時間的に行けないかな?と思っていたが、私は歩くのが早い。行けるかも?と思い立ってすぐに歩き出した。

 

 川に沿ってゆったり長い上り坂。いや負けるか。


 10分ほど歩いたところで奥宮の参道が現れる。参道と言っても、それまで歩いてきた川沿いに添う形で整備されたものだが、一歩足を踏み入れると空気が変わった。凛とした、ひやりとするような空気が漂っている。


 奥宮は立派な杉の大木に守られた静謐せいひつな雰囲気漂う場所。下の本殿とは違ってこちらの奥宮は社も古く、趣がある。生い茂る大木の葉に遮られて昼でも少し薄暗い。


 参拝を終え、御朱印帳を受け取るために本殿へと戻る。帰りは下りになるため少し楽。料亭が川床を作っているのを横目にずんずん歩く。


 御朱印帳を受け取って貴船神社を出発。バスに乗り、叡山電車の貴船口駅へ向かう。


 ここから電車で一駅、鞍馬駅へ。貴船口駅ではバスから降りた人々が全員反対側の出町柳駅方面の電車に乗ってしまったため、一人ポツンと取り残されてしまった……。


 え、なんで……みんな鞍馬行かないの?


 なんて思っていたら、展望列車のきららキターーー!


 通常料金(わたくしフリーパス)で乗れちゃう展望列車で、一時間に一本運行している模様。大きな窓と、外に向けてソファ席がいくつか設置されている観光用列車なのだ。車内には天狗様もいくつか飾られている。


 ……でも私は一人だから、ひとり席にちまっと座ってみました。

 一駅だしね。




 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る