第21話 姉と幼馴染は仲良くなる……?
チームメイトたちと鉢合わせた俺は、「ちょっと休憩しよう」という姉さんの提案の元、ファミレスにやってきた。
「私は黒川丹音、弟くんのお姉ちゃんだよー」
俺の隣に座る姉さんが、軽く自己紹介する。
「葵の友人の大崎凛乃です」
「……真城瑠衣花です」
向かいに座るチームメイトたちも挨拶を返している。
「二人ともよろしくー。弟くんの友達とは会ってみたかったから、嬉しいなー」
「わたしはただの友達じゃなくて、幼馴染」
なんだろう。
今日の瑠衣花からは、いつもと違って少しピリピリとした雰囲気を感じる。
前に俺がニノンの配信に出ていると知った時もやたら真剣に問い詰められたし、姉さんのことをあまり良く思っていないのか……?
「つまり、弟くんと仲良しってことだ」
「ん、そう。だから葵に姉ができたって聞いて気になってた」
「お、私のこと気にしてくれてたんだー」
「葵は今までずっと一人っ子だったから……うまくやれてるか心配だった」
瑠衣花はどこか緊張感のある面持ちで、姉さんを見る。
「それにしても驚いたなー、弟くんに女の子の知り合いがたくさんいて。やっぱりモテるんだねー」
一方の姉さんはいつも通りの調子だった。
「ははは、ワタシは『葵のことを好きな女の子』の一人として数えなくていいですよ」
姉さんの言葉を、凛乃がそう言って笑う。
「ふむ……まるで、他の誰かは俺のことが好きな女の子とやらに数えるべき、とでも言いたげだねー」
姉さんが、じっと瑠衣花を見た。
瑠衣花は無表情のまま目を逸らすと、凛乃を軽くにらんだ。
「……余計なことは言わなくていい」
「いやー、でもさ。もっと積極的にならないとライバルが増えていく一方だぞ?」
凛乃はへらへらと笑っている。
一方の俺は、蚊帳の外だった。
……女子同士の会話は、よく分からないな。
「葵……二人で何してたの」
「昨日マウスが壊れたって話をしただろ? だから買いに来たんだ」
「……お姉さんと一緒に?」
「私のおごりだからねー」
瑠衣花の疑問に、姉さんが答える。
「へえ、葵のお姉さんって結構お金持ちなんだ? 何してる人?」
「あ、えーっと」
凛乃に聞かれて、姉さんは答えにくそうにしていた。
まあ、VTuberとして配信をして稼いでいるとは言えないよな。
「凛乃、そういうのは失礼だから軽々しく聞かない」
「あー、そっか? すみません」
瑠衣花が礼儀の話を持ち出して凛乃を制止した。
どうやら瑠衣花なりに、気を利かせてくれたらしい。
「こっちこそごめんねー、細かいことは秘密ってことで」
「儲かる話なんて簡単には話せませんよね、はは」
凛乃はそんなことを言って笑っていた。
「それにしても、瑠衣花ちゃんは優しいねー。やっぱり弟くんが優しいから周りにもそういう人が集まるのかな」
「別に……私は葵ほどお人好しじゃない」
「そんなことないと思うけど……素直じゃないなー」
「むう……」
やたらと気さくな姉さんを前に、瑠衣花はペースに呑まれ気味だった。
「膨れ顔もかわいいー。こんなにかわいい幼なじみがいる弟くん、羨ましいなー」
「わたしが、かわいい……?」
「うん、かわいいー。お近づきになりたいから連絡先交換しよー」
どうやら姉さんは瑠衣花のことを気に入ったようだった。
「なんだか気が抜ける……これが大人の余裕……?」
気を張っていた様子の瑠衣花が、脱力したように見えた。
「これはライバルとして認識されていないか、それとも思い違いか……どっちだろうね?」
何やら、瑠衣花のことを凛乃がからかっている。
「別にわたしだって、ライバルとは思ってない……相手は葵のきょうだいだし」
「うん? なんのことー?」
「……なんでもない」
不思議そうにする姉さんに対して、瑠衣花はそう答えていた。
「そっかー……?」
「それよりも、連絡先……交換する。後々、何かと有益そうだから」
「やったー、理由はよく分からないけどありがとー」
そうして姉さんと瑠衣花は連絡先を交換していた。
瑠衣花は、姉さんがVTuberのニノンだと知っている。
だから連絡先を交換しておいて損はないと思ったのかもしれない。
「わーい、これからよろしくねー。凛乃ちゃんも交換しよー」
「もちろん、いいですよ!」
なんだかんだで仲良くなったみたいだから、俺としては一安心……なのか?
◇◇◇◇
更新遅くなってすみません。
どうやら打ち解けた様子ですが、果たして……
次回、ニノンの本音が見られます。
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