父の記憶② 抜歯
記憶の断片。
昭和一桁生まれ、七十二歳で鬼籍に入った父は、精神力が桁違いの存在だった。戦後の混乱期を生き抜いてきた逞しさは並ではない。
そんな父と交わした子供のころの会話。
虫歯を抜いた私(中学生)が麻酔が効きにくい体質で痛い思いをした話をした。
「なんだ?
「え?」
「父さんはな、アメリカの会社と大事な取引を控えた日の午前中に歯を抜いたことがある。英語の発音が変になると契約に問題がでるので、麻酔なしで奥歯を抜いてもらった。我慢すれば麻酔なしでも大丈夫」
(……はい?)
どれだけ痛みに耐性があったのか?
数年後にふと思い出して母親に聞いたら本当のことだった。
昭和一桁を舐めてはいけないと思った話。
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