高校時代は楽しかったな 弓道部⑥
秋になって、我々一年生全員が初段試験に合格出来た。(タンタン先輩たちは二段に合格した)
部活中に初めて皆中(四射四中)したのもこの頃だった。
すごく嬉しかったのを思い出す。
秋からの公式戦には二年生の三名(部長、チューバッカさん、タンタン先輩)が固定出場、五人立ちのときは一年生二名がこれに加わった。
残念ながら私は選ばれなかった。ぷるぷる病患者のイメージはなかなか消えてくれなかったのだ。
その代わり地域主催で開かれた弓道大会に出場した。
これは部としてではなくて、同期のリーダー格だったキタさんに誘われて二人で参加した大会で、社会人に交じっての個人戦だ。初めてのことでかなり緊張した。
そのせいか思うような射が出来なかったけれど、運よく羽分け(四射二中)の成績で四位決定戦に残った。
そしてこの決定戦では、同じ羽分けの十人近くで的の中心に近い人を上位とする特殊なルールで一矢だけ射つことになった。
順番が来て自分の番を射終わった後、観戦していたキタさんのところへ戻ったら「とんでもない
うん、まったくその通りだと思う。
自分でも分かるくらい乱れた射だったから。
当時キタさんには説明しなかったけど、この時の射には理由がある。
真ん中に当ててやろうと、それだけを最初から狙っていたせいだ。
普通、的のどこに当たっても「当たり」である。
端っこでもド真ん中でも同じ「当たり」。
真ん中ほど点が高いとかいうことはない。
それなのに、この大会では祭りの射的みたいに「真ん中のほうが得点が高い」という。
いつもと違って中心に当てたほうが勝ちというルールがとても挑戦的だと思ってしまったのだ。
それで考えた。
上手くいくかどうか分からないけれど、
的中させるのは当たり前だと思え、的に当たっても中心以外は外れなんだと思えって自分に言い聞かせ、真ん中に当てることだけを考えて射ればどうなるだろうか、と。
普段は直径36センチの的全体を視界に捉える感じで狙いを定めているけれど、この時だけは的の中心(半径3.6センチの「
意識が的にだけ向いてしまっているので、力の方向とか伸びとかいろいろ大事なことが放ったらかしだったはずだ。当然の結果として「射」は酷い有様だったろう。
当てるぜ、当てるぜ、という気持ちだけの「射」だった。
当てようとすると当たらないのが和弓の常。
でもなぜだろう。
この時だけは近くを散歩していた神様がちょっと悪戯したんだと思う。
狙いが定まったと思った瞬間に弦音とともに「離れ」。
射が滅茶苦茶だったせいで、一度矢尻が上を向き、すぐに下に戻るような可笑しな矢勢で的に飛んでいった。
そしてパンっと音がする。
平時は「
これを見て「ひどい
全員が射終わってから矢取りで確認した結果。
ほぼ真ん中に当たっていた。四位だった。
表彰式までキタさんが付き合って残ってくれたのが嬉しかった。
賞品は日本人形。でっかいガラスケースに入ってて持ち帰るのにすごく苦労したことしか覚えてない、
なお、翌年キタさんは同じ大会にリベンジ出場した。
驚くことになんと一般人に交じって優勝した!
地域の広報誌に写真付きで載ってて「すげえ!」と思ったものだ。
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