白い未来に、思いを馳せて
ふとテレビを見ると、そこには挙式場の特集が流れていた。私はそれをじっと見て、ほうっとため息をつく。
「やっぱり女の子はそういうのあこがれるんだね」
テレビをBGMがてらに、ノートPCで作業をしていた紅也さんがこちらを見てそういった。
「そうね……。一番印象に残る日になるわけだし……」
挙式場と一緒に映っていたのは、白いタキシードと白いドレスに身を包んだ新郎新婦だった。私の頭の中に浮かんだのは、もちろん――
「素敵ね……」
「そうだね、ドレスも綺麗だ」
「いいえ、そうじゃなく」
えっ、と紅也さんは驚いた声を上げる。だって私が素敵と思ったのは、白いタキシードを着ている貴方を想像してそういったのだから。
「……貴方のその、そういう姿を想像して『素敵』って言ったの」
変な子と思われそうだから、話すのが少し恥ずかしい。すでに思われていたとしても、恥じらいはあるもの。
「ああ、そういう『素敵』だったんだね。……って、ええ!?僕の!?」
普通は逆だろうと思われそうだけれど、それでもやっぱりあの白い衣装に身を纏った貴方が微笑んでいるのを想像すると、素敵と思ってしまう。
「僕も、蒼さんがあの白いドレスを着て立っているのをちょっと想像しちゃったけどね。きっと綺麗だろうなあ」
「まあ」
紅也さんも紅也さんで、同じ事を考えていたなんて。ちょっと驚いたけれど。
「せめて写真だけでも撮りたいわ。式を挙げなくてもいいから」
「そうだね。僕もそれでいいと思う」
いつか迎える未来の話。きっと今と変わらないかもしれないけれど、私達にとっては待ちに待った瞬間。
「それまでに私を見捨てないでね」
「見捨てないよ!」
「冗談よ、冗談」
「冗談でもやめてね……」
紅也さんは大きくため息をつきながら、視線をPCの方に向けて作業に戻った。
――でも、楽しみにしているわ。その時を。
白い未来に、思いを馳せて。
END
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