遥かな未来の運命に捧ぐ
私の名前は
それを目標体
その後結成された
私の親友
私の上官
そして上官?
この3人が
私は対電波放送局に所属している。局長
そして我々は残酷な未来を突きつけられた。
人間と
その上
今私達に課されているのは、東京タワーに巣食う
その為の準備が着々と進められていく。
現在、戦術作戦課ではZuluの解析。反電波利用し女王を見つけ出す。
そして新型参式人型装機・改改の納入。これは現在広島呉市から超高速鉄道輸送で陸輸中。副長がついているらしい。
作戦は一刻を争う。女王が活動を再開すればこの東京の都民をまず喰らい尽くすだろう。
決戦の日は近い。準備が整えはすぐにでも決行しなければ都民が危うい。
歯がゆいがまずは準備が整うのを待つ。
私達は交代でシミュレーターを回し、操作練度を高めあう。
私はZulu無しで訓練。現在解析中の為、また一体化するとスペックを凌駕し訓練にならない為である。
それでも腕は衰えて居ない。1ヶ月囚われて居たのに。私は自分に驚いている。
不思議と体が覚えている。
一休み。格納庫のベンチへと腰掛ける。
4人で。初めての体験だ。それに美空が操縦課に転向になった事も驚きだが、あそこまで操縦できるなんて思いもしなかった。
みんなが楽しそうに話をしている。絶望の状況なのに。
これがみんなの良い所。絶望をも跳ね返す希望。
なんか混ざりにくいな。この1ヶ月こうして仲を深めてきたのかな。
「……る。未来?聞いてます?」
「あ、ごめんなさい。考え事してたわ。」
呼ばれてた。気づかなかった。
「局長から連絡です。餘目さんにですけど。今日中の作戦発動は無理なので解散。寮に戻って良いそうです。」
餘目……さん?え?なにそんなに仲良いの?
「美空、いま餘目……さんって?噛崎1曹は?」
「噛崎さんですね。」
噛崎さん!?
「いつの間にそんな仲良しになったのよ。」
「作戦外ではそう呼びましょうって決めたんです。私達。」
「そういえば城1曹は、1曹のままか。」
「いいんじゃない!?未来ちゃんとか〜。」
曹長から未来ちゃんは流石にありえないだろう。
それに私は……別に。
「未来、今私は別にとか考えたでしょ。顔に書いてあるよ。未来の事城さんでいいんじゃないですか?」
ばれてるし。いやそんなにわかりやすかな私。
上官……なんだけどな。美空からしたら。
それに私の上官にそんな事させられないんだけど。
「じゃあ城さんだな。」
「了解、よろしく〜城さん。」
嘘だよね。予想外の事態に困惑する。
知らない間にみんな丸くなっている。
私も混ぜられた。
「え?じゃあこれ私も……?」
「えへへ、そうですよ!餘目さんに噛崎さんです!」
レベル高!流石に呼べないよ……。
大体キャラじゃない。そんな事今までだって呼んだことない。
「餘目先輩、噛崎先輩……これで許してください……。」
妥協策を提案する。
これでダメならもうやけくそだ。
「先輩か、まぁいいだろう。」
「ボクもいいよ〜。階級同じだけどね〜。」
それでも先輩に変わりない。
良かった通った。
階級なんて、たまたま1曹に任命されただけ。
なんならまだ下士官。1等陸士とかだよ。きっと。
ベンチでの時間は過ぎる。
美空が体験してきた柔らかい時間が。
私が人間だったらこの時間をもっと続けられたのかな?
「さて練習に戻るぞ!いい加減秋葉原事変では持て余すだろう。現在最大の難易度小岩事変で行ってみよう。」
小岩事変、それは私達
「衛星弾無しで可能な限り対処する。嚙崎、鐘倉行くぞ!」
3人はシミュレーターに入っていった。
外部モニターにて確認する。
小岩駅現着。オンステージ。
高架を移動しながら
県境に到達。高架を降り、土手沿いを走る。
以前の作戦通りだ。
違いがあるとすれば浸蝕対電弾の弾数制限。
量産可能となった為、ドローン補充にてある意味無限に打てる。
バリアすら貫通し、コアごと事象を捻じ曲げる。
間もなく江戸川病院へ到着。
ここで倒すことが出来ずに合体され、衛星弾の使用を余儀なくされた。
しかし、3人ともライフルで確実に仕留めている。
嚙崎先輩も刀ではなくライフル。練習したのだろうか?
集結するほどの
本当に衛星弾無しでクリアした。
あれだけ苦戦した
浸蝕対電弾の威力を再確認させられる。
これは強力だ。あれだけ苦労したバリアもコアも、すべからず破壊する。
シミュレーションが終了し、3人が出てくる。
すぐさま駆け寄りドリンクを手渡す。
「凄いです!先輩!美空!貴女達いつの間にそんなに強くなったの。」
「未来を助けるために我武者羅だったんだよ。」
私の為、か。嬉しいな。こんな正体だったなんて知ってもそれでも友として居てくれることに感謝だ。
「今日はいい時間ですね。解散指示も出てますし、みんなでお風呂行きますか?」
みんなでお風呂!?
そこもなの!?
「未来驚いてたら大変だよ。餘目さんも噛崎さんも、なんなら局長も私達の部屋に泊まりに来たんだよ。未来のベッド使っちゃったけど。」
使ったのは構わないけど、そんなに仲深めてたんだ。
奥手だったのに、成長してるじゃん。
「貴女、変わったわね。いい意味で。」
「そうですか?」
本人には分からないのかな。
私には凄く逞しく見える。
最初は整備科としても訓練機を任せられるか不安だった。
それが今では整備科、課を飛び越して、操縦課。
私の訓練機を駆り、戦い抜いた。
それも私が相手にしたことが無い様な物相手に。
素直に凄いと思える。もしかしたら私よりセンスあるんじゃないかな。
今の私はZuluによって飛躍的に能力が向上する。
新型参式が到着すればシミュレーターがアップデートできる。
果たして機械は何処まで私達についてくるか。楽しみである。
「じゃあ、寮に帰りましょうか。皆さんまた談話室で待ってますね。」
了解と、局組と別れ私達は寮へ戻る。
約1ヶ月ぶりの寮。
私の詳細は秘匿。朝霞駐屯地への出向扱いになっている。
学校の非常階段を登り、校外へ出る。
学校を周り、寮の入口をくぐる。
待ち受けていた寮母さん。
「おかえりなさい。長い演習だったね。お疲れ様。」
「はい、ただいま帰りました。」
部屋に戻りお風呂の準備。
懐かしい部屋。
懐かしい。
私には10ヶ月の思い出しかないが、その全てが懐かしい。
鐘倉さんは机に懐中時計を戻す。
「ありがとうございました。これ、お守りでずっと持ってたんです。これのお陰で解決した事変もありました。本当のお守りです。」
そんな大したものじゃないけど。
ふと時計を開く。
恥ずかしい。蒼とのプリクラが貼られている。
嫌がる私に引っ張る蒼。
今思えばもっと分かり会えれば良かったのかな。
そうしたらあの時、泣いてあげられたのかな。そんな事を思う。
「さぁ、準備して降りましょう。みんなが来ますよ!」
そうだった。
お風呂の準備。
そして談話室へ降りる。
皆からおかえりと声をかけられる。
その全てにただいまと返していた頃。
3人の局員がやってきた。
餘目先輩、噛崎先輩、そして御園生局長である。
「局長までいらしたんですか?」
「そうです。貴女と初めてお風呂に入りますね。楽しみにしてましたよ。」
そんな楽しみにすることだろうか。別に私だし。
スタイルが特別良いとかないんだけどな。
なんなら借り物。造られた体だし。
「さぁさぁいきましょう!」
美空に連れられ浴場へと入る。
あぁ久しぶりだな。この広いお風呂。
この1ヶ月お風呂に入ってない。
臭……くはない。不思議と。
「未来、スカイツリーにお風呂はない、って事は1ヶ月お風呂に入ってないんですよね?」
まあその通りだが。
「曹長!これは!」
これは?
「うむ、城1曹の回帰祝だ!総員かかれ!」
ちょっとまって。美空に連れられ洗い場へ行く。
椅子に座らされ……全身を洗われる!?
「待ってください!曹長、1曹!局長まで!上官にこんな事させられません!」
「そう思うよね〜未来。私もそうだった。」
私も?経験済み?
「大丈夫よ城さん。私は優しいから。遥、禁止だからね?」
「だめですか?ひそかな楽しみなんですが。」
「城さんがどう思うかしら?やってみたら?」
局長には頭を。曹長には上半身、美空にはお腹周り。そして噛崎1曹には足を洗われている。
「ちょったまった!胸触るのは聞いてない!曹長!」
「ほら怒られた。わたしもやるけど。みんなは〜?」
呼びかけるな!目を開けたい!でも沁みるから開けられない!でも仕方なく開ける。
あーかわるがわる穢されていく。
私の純潔が……。
「もう……やめてください……おねがいします。お嫁に行けない……。」
もとよりいけるような存在ではないが。
「局長、未来もお嫁に行けなくなっちゃいましたよ?」
「いいじゃない。鐘倉さん貰ってあげなさいな。」
勝手に話が進んでいく。
私の婿は美空か。悪くない。違うそうじゃない。
ん?私も?他にいたって事?
「他にお嫁に行けなくなった人いたの?」
「あ〜餘目さんだよ〜今はもう局長とぐへっ!」
美空が……みぞおちに……1突き!?
局長と出来ちゃった感じなのかな?
そういえばあの首の痕気になる。聞いたら、まずいかな。
(ねぇ美空、餘目先輩の首の痕って……。)
(しー!それは触れてはいけない禁則事項です!)
あーなるほど。確信。良いネタだ。後で散々にいじり倒そう。
あの堅物で有名な餘目先輩が……ねぇ。
「ほら、頭流すよ。いい?」
良いですよなんて言う前にお湯をかけられる。
危うく目を開ける所だった。
こんな時間が流れて居たんだな。私の居ない間に。
ちょっと羨ましいかな。こっちはこっちで衝撃の事実を話されて大変だった。
考えることが多い。私は私の
Zuluと共に、為さねばならない事がある。差し違えてでも確実に。
そんな楽しいお風呂タイムの裏では戦術作戦課による懸命の解析作業が続いて居た。
――――――――――――――――――――
錦糸町中央発令所。
「Zulu解析作業39.18%。約1000分の1程度遅れが生じています。」
「許容範囲内でしょう。さらに続けるように。」
Zuluの解析、それは女王の発見に他ならない。
女王を発見出来なければ攻撃のしようがない。
いや、正確には場所はわかっている。
今は予備に回っている、東京タワーに巣食っている。
その姿を隠している為、それを現実空間に固定する電波をZuluから解析するのだ。
「さて、新型参式はどうかな?」
「現在新大阪駅を定刻通り通過。本日中には首都東京へ到着する予定です。その後首都環状山手線にて秋葉原、ホーム切り替えを行い総武本線にて錦糸町本部へ到着で手配しています。」
「うん、よろしい。」
ずずっとコーヒーを飲みながらメインモニターを見つめる。
空中に浮かぶZulu。あの猫はあれ以来一切のコンタクトを取ってこない。城未来が必要なのだろうか?
ただこちらからコンタクトを取っていないだけ……とも取れる。
試してみるか。
コーヒーを置き立ち上がる。
「Zulu。君の意志に変わりはないか?」
そっと目を開けそして答えた。
『
コンタクトは取れた。城君が居なくても意思疎通はできる。
そこにCICから移動してきた
「また、局長不在時に随分な挑戦だな。暴れ出したらどうするんだ?」
「大丈夫さ。城君とここに帰った時から驚異は変わらない。局長が証明しただろう。」
同期2人は話を続ける。
局長はあろう事か、驚異判定の出来ない城未来に抱きついたのだ。
そうして証明してみせた。事情の違う同じ局員であると。
「なにより危険だったのは局長さ。あの勇気には脱帽だけどな。」
「そうだね。だからこそ今がある。一時でも
そう、そして女王の撃破を懇願された。
女王を倒さねば未来はない。未来を歩むのは、明日ある者だ。
そう話し合った。Zuluと。
それが
『こちらで産まれた
そうは言われても現状
「控えている?レーダーに引っかからない個体がいるのか?」
そういえば裏事変ではCharlieの叫びでの集合以外で小型を見ていない。索敵レーダーにも引っかからない。
『電波を発さない。仮眠状態である。然し
まだそんなに居たのか。それに仮眠。電波が無ければスカイツリーの感に引っかからない。
それで虚数空間では全5体のみ引っかかったのか。
「それは兵器として役に立つのか?失礼だが、現在の我々の知識や技術では存分に活かせない。」
『であれば、城未来がそれを叶えるだろう。そちらも新型の用意があるのだろう?きっと使いこなせるさ。』
新型参式は人が乗る普通の機体。反応速度等が段違いな改造を施しているが。
だが、それでも
そんな機構は付いていない。し、付けられない。
局長指示で、
シミュレーターの数値も確認した。
シンクロした城君の数値は驚くべきものだった。
あの副長を凌駕する。もとより副長はおかしい位の筈であるが。
確かにあれならば参式のスペックを余す所なく使い切れる筈だ。
建造当初は副長ですらもしかしたらと言われる代物だった。
が、今ではこれだ。ある意味
二段階の改造を済ませ、その上新型兵装まで装備。
来るべき決戦に向けた兵器になる。そう言う事だろう。
上はきっとこうなることも予見しての新造指示だったのだろう。
「恐ろしいな局長は。あの頭脳。お前も大概頭良いとは思っていたけど上っているんだね。」
「俺も驚いたよ。流石に居ないと思ったからな。自信はあった。ライデンフロストもマイスナーもあんなの普通習わないだろ。」
それでも知ってるお前がすごいよ。
俺は裏事変では何の役にも立たなかった。
ただドローンの指揮をしているだけだった。
焦りはしないが、果たして本当にここが俺の持つべきポジションなのか疑問になる。
「まあそんなに気負いすぎるな。知識はつければ良い。俺たちは対電波放送局だ。自衛隊から派生しているとはいえ指揮系統も独立。なにより
確かにそうではある。考えすぎか。
「ありがとう兼坂。」
「いいってよ。」
そういい、兼坂はCICへ戻っていった。
「2尉。参式は定刻通り京都駅を通過。」
「うんよろしい。間に合いそうですね。」
現在参式人型装機は京都駅。福岡からしてちょうど半分あたり。
副長もほんと忙しい人だよな。
発令所副指揮権。それに局長のお使い。
最後には有事の際汎用機にて基地防衛。
器用というか何と言うか。休めているのか不安になる。
「私達が見張っていますので2尉も少しお休みください。指揮権委譲されてますが常に気を張り続けるのも無理ですよ。」
「ありがとう。席で休むことにする。何もないと思うが警戒は厳。何一つ見逃さないでくれ。悪いと思わず何かあればすぐ呼ぶ様に。」
そう言い、空いているコンソール席に座り目を閉じる。
寝てはいけない。この場を指揮する必要がある。
あらゆることに考えを巡らす。
思い出したこともある。
ゆくりなき地上波事件。資料を見返し、あの日俺が助けた女子。それが城未来だった。
思えば縁はあの日から繋がっている。
それが巡り、同じ局員として勤務している。
この事は誰にもいえない。
きっと城くんが知ればなぜ神成君を助けなかったのかという話になってしまう。
逃げ……ではないが、いま彼女の気持ちを揺さぶるのも問題だ。
決戦が控えている。今は鼓舞するべきだ。
周りでは局員が談笑しながら作業をしている。
遅れやミスが生じなければそれで良い。
「Zulu間も無く解析完了。」
さて、もう一仕事だな。
ふう。と息を吐き立ち上がる。
「解析完了。反電波の抽出に成功。」
「では明日局長が戻り次第使用し女王を炙り出します。お疲れ様でした、交代し今日は休みましょう。」
皆、順に交代をし居住区へと戻っていく。
――――――――――――――――――――
翌日。
格納庫では整備課が忙しく動いていた。
戦術作戦課も集まっている。
遂に待ち望んんだ新型参式人型装機が到着したのだ。
各兵装のチェック。そしてシステムを引っ張り出し、シミュレーションシステムの作成にと大忙しだ。
副長立会の元、
過去のデータから稼働時の癖をインストール。
そして問題のAI。
結果は非。やはり一致する英霊なし。
その為汎用AIにて作業が進められる。
無線から声が聞こえる。副長だ。
「昨夜から突貫で作業した甲斐あり参式のシミュレーターが完成した。コックピットにつなぐからそのまま試してみてくれ!」
「了解しました。」
そう言うとシステムを切り替える。シミュレーターモード。
さて、私1人では散々な目に遭うだろう。
これは
「出番だよ。起きて。」
膝上にて寝ているZuluを叩き起こす。文字通り叩く。
大きなあくびをし、ぬるりと体に入ってくる。
準備OKだ。
「単機での小岩事変再現します。」
今の私はどこまでやれるかな。
やれるだけやってみよう。
外部モニターでは作業をやめみんなが注目している。
これは発令所メインモニターでも流れている。
「さあ行くよZulu。
事象が始まる。小岩駅オンエア。近づいてくる小型をライフルではなくチェーンガンで処理。浸蝕対電弾は更に小型化に成功。頭部兵装へとなっていた。
走りながらライフルでもコアを抉り取る。
あっという間に県境。
高架を降り土手沿いを走る。
ドローンから補充を受けつつ更に敵を撃破する。
江戸川病院付近。
補給を受ける。
ここが現場の限界ポイントだった。
突然現れ集合した。
来た!奴らだ!集合が始まる。
その中の1体。コアが剥き出しの個体を見つけナイフを投げつける。
蒸発し合体は中断散り散りになる。
そこをすかさずチェーンガン、リコイルライフルで斉射。沈黙させる。
突っ込んでくる個体もいる。
ナイフを突き刺し足場にする。
紙一重で避ける。
触手に触れなければ浸蝕されない。くるりと回りながら両手のライフルで敵を殲滅する。
そうして事象終了。
コックピットから降りる。
待っていたのは歓喜の嵐である。
「未来すごい!あれを1人で捌けるの!?」
「お前の脳はどうなってるんだ、ライフル2つにチェーンガン?同時に照準なんてできないぞ!?」
「ボクの刀使ってみてよ〜絶対かっこいいよ!」
無我夢中だった。私がやらないと未来がない。そう思うと無意識に体が動いていた。
本当にこの状態は強い。異常な強さだ。
それについてくるマシンスペック。素晴らしい。
そういえば気になっていた。布?
参式はマント状の何かに包まれていた。
そこに副長。
「シミュレーターお疲れ。あれはすごいな俺でもできない。……ん?マント?ああああれか。あれは
なるほど、特異体が発するマイクロウェーブを中和するのか。
数回でも中和出来れば、生存率は大幅に上がる。
「試作品なんだよこれ。だから装備は参式のみになっている。勿体ぶるな?当たりそうなら使ってしまえ。」
本当に私で良いんだろうか?Zuluがいれば反応は速くなる。
ほかの3人の方が適切なんでは?いや決して自分を持ち上げているわけではないが。
「そういえば参”式”なんですね。”型”じゃなくて。」
気になっていた。実戦壱番機達は壱”型”と呼ばれているから。
「局長がな、最終決戦になるだろうから、その意味を込めて”対終末決戦兵器”新造参式人型装機・改改という話になったのさ。」
対終末決戦兵器……たしかにそれだけのスペックは持ち合わせている。量産できない。時間がないのが惜しまれるくらいに強い。
今までの
意気込みを見せるその時館内放送が入る。
「Zuluより反電波の解析に成功。試験送信にて東京タワーに異常な反応を検知。おそらく女王で間違いありません。結果確認の為、お手数ですが各セクション長は中央発令所に集合お願いします。」
来た!遂に、
Zuluをスキャンしそれを解析し続けた戦術作戦課の努力の賜物だ。
私達
――――――――――――――――――――
錦糸町中央発令所。
私達が最後だ、既に上官は集まり会議が始まっていた。
邪魔しない様にそっと近づく。
「透明化した女王の
流石に全体に照射して本体全部出ちゃいました。は民間人の被害がバカにならない。
その辺り流石の判断だ。が、最上部を掠めて触手?ざっくり300m級って事であろうか?そうなれば大きすぎる。
浸蝕短SAMか?どう出るのだろうか。
そこにぬるりとZuluが出てくる。
『
玄月2尉が前にでる。
「現状での戦闘効果は一切不明。まず浸蝕短SAMにて様子を見ましょう。」
そして局長。
「そうですね。では作戦決行は明日0時丁度。今回はかなり広範囲が被害を被ると考えられます。東京都全域に緊急避難警告。そして自衛隊には盾として災害派遣を依頼しましょう。」
異例の作戦だ。異例の措置だ。東京都全域を対象に避難指示。
そして今まで出してこなかった、自衛隊への災害派遣依頼。
自衛隊の
盾に対して私達は矛。
裏事変より守る戦いから攻める戦いへと転じた。
その集大成が存分に発揮される時が来た。
「地上員総動員。東京都全域への放送開始。
はじまった。情報戦。私達の出番までは待機だ。
発令所を後にしまず格納庫へと寄る。
そこで整備課局員より話しかけられる。
「申し訳ありません城1曹。メインシステム、汎用AIのインストールに手間取っておりまして。なぜか機体側から拒否が続いているのです。なんとか間に合わせようとしています。ほんと申し訳ありません。」
「仕方ないわよ。新造機なんですもの。トラブルもあるわ。私達は待機だけど何かあれば直ぐ呼んで。」
ありがとうございますと整備課局員は作業へ戻っていった。
「大変ですね未来。まにあうといいけど。」
「まぁ任せましょう。英霊が見つからない以上なんとか汎用をインストールしてもらわないと戦いにならないからね。」
コツコツと足音を響かせ格納庫から廊下へ、そのまま居住区へ向かう。
居住区居室へ入る。私は餘目曹長と同室。
そこで全館放送が入った。
『緊急警報発令。緊急警報発令。江都東京全域に避難警告が発令されました。この放送をお聞きの方は最寄りのシェルターまで避難してください。繰り返します……。』
はじまった。避難誘導。作戦決行まであと8時間。
寝よう。今は。
少しでも力を養おう。
局長の布団に入り目を瞑る。
――――――――――――――――――――
作戦決行1時間前。
現在時刻23時。
私達は更衣室にて着替えを行っていた。
制服を脱ぎ下着になる。そしてパイロットスーツを着用する。
チャックを上げ弾倉嚢を着用する。
最後に腰に9mm拳銃を携え準備を終える。
4人で顔を見合わせ頷き、格納庫へ向かう。
私以外の3人は猫耳型のインターフェースを装着していた。
「それ、つかうの?」
「これがあると2人の思考が流れ込んでくるんです。死角がなくなる感じですね。重宝してますよ。」
そうなんだ。メリットあったんだね。
私にはZuluが居る。正直オーバースペック。それくらいだ。
私の分……あるのかな?流石に無いか。
格納庫に着くと足速に機体に乗り込む。
参式は未だメンテナンス中らしく、整備課局員が作業していた。
手帳を整備手帳から生徒手帳へ切り替える。
なんとかAIのインストールは終わったらしい。がプログラムを走らせるとエラーを返すらしい。
出撃不可。最初は3人に任せることになる。
悔しい。私も出れるのに。出られない。
程なくしてブリーフィングが始まる。
局長がモニターに映る。
「東京スカイツリーから始まった一連の事変が今終わりを迎えようとしています。みなさんお疲れ様でした。全ての元凶は我々人間のQOL向上の副産物ですが、それに毒された
そうだ、始まりはあの日。スカイツリーから始まった。
そして告げられた原因は地上デジタル波の害。
未来あるものが生きる。そう決まった。
「作戦第一段階はまずスカイツリーからの固定電波照射によりその姿を炙り出します。次いで第二段階。これは錦糸町基地より浸蝕短SAMにより戦闘効果を確認します。同時に現在使用可能な
私は出撃の命が出ない。わかってた、だって機体、システムがなぜが拒否をする。起動はするがプログラムが走らない。
目下整備課局員が突貫作業中だ。
コックピットで私は待つしか無い。
次いで兼坂砲雷長が話す。
「浸蝕短SAMの最大有効射程は約8000m。対して錦糸町基地から東京タワーまで直線7830m。かなりギリだ。射程内だから正確に届くと思うが、確証はない。また、発射から着弾まで約1分と10秒程度。間髪入れずに撃ち続ける。当たらないでくれよ。」
距離が誤差100m程。であれば恐らく命中はするだろう、が、やってみないとわからない。
それよりも早く起動してほしい。
3人に押し付けるみたいで申し訳ない。
無事でいてほしい。
懐中時計を開く。秒読みまで時間は迫っていた。
「0時。作戦発動。」
「東京スカイツリーより現世固定電波照射。」
淡々と作戦が進んでいく。
『ブー!ブー!ブー!』
「
大きい……東京タワーに絡みついている。超巨大な
「推定350m超。触手全長は不明です。」
「目標内部に高エネルギー反応!来ます!」
姿を見つけられた女王は怒り狂った。
目に映ったドローンに向けマイクロウェーブを撃ってきた。
「ドローン蒸発!再配置!」
コックピット内で無線を聞くだけ。私には何もできない。
操縦桿を殴りつける。なんで肝心な時に動かないんだよ。
動け!動いてよ。
祈りなんて届かない。無慈悲である。
「次いで浸蝕短SAM発射。サルボー!」
「人類の未来の為なら電波塔の1つくらい折り曲げても仕方ありません。撃ち続けなさい!」
「高速鉄道輸送開始します!輸送車1から3番ロック解除!射出!」
「餘目曹長!噛崎1曹!美空!必ずいくから!絶対死なないでね!」
無線に割り込む。
「無論だ。」
「ボクを誰だと思っている〜」
「未来。私は死にません。私たちの未来の為に!いってきます。」
いってしまった。
こちらも急がなくては。
それでもシステム面。私にできることはない。
動いてもAIが正常に稼働しなければ予測も何もできない。
何が新造だ。このポンコツ。
いっそ汎用機で出ようか。
「城さん。焦らないで。きっと焦っているでしょう。今は遥達に任せましょう。ヒーローは遅れて登場するものですよ。」
「まもなく浸蝕短SAM到達します。インターセプト5秒前……マークインターセプト。」
100を超える地対空ミサイルが女王に突き刺さった。
次々と爆発する。
「ドローン映像乱れます。」
あれが全部浸蝕弾頭だ。バリアも抉り取れる。
もしかしたら簡単に決着がついたり……しないかな。
「映像再開します。」
「爆心地に高エネルギー!目標健在!」
映像を見る限り触手は抉られている。が再生が早い。
あっという間に元通りだ。
そう簡単じゃないな。さてどうしたものか。
浸蝕短SAMでこの効果では小型の浸蝕対電弾では埒が開かないだろう。
「触手を振り回し始めました!ドローン撃墜!再配置!」
反撃もされている。触手とマイクロ波。
当たればお陀仏だ。
その間もミサイルは撃ち続けられる。なんかしらの効果が得られるまで。
お願いだよみんな。生きて。
――――――――――――――――――――
「
「つっつくぞ!
3機で斉射する。ミサイルの嵐に
爆煙で見えなくなる。
「撃ち方やめ!」
さぁどうでるか。
「来ます!高エネルギー!早いです!」
『Enemy Attack正面』
アラートでは遅かった。
それよりも先にマイクロ波が駆け抜ける。
間一髪で噛崎と鐘倉を突き飛ばす。
もちろん私は間に合わない。
機体の右脚が胴近くまで抉り溶かされる。
突き飛ばされた衝撃で2機は地を転がる。
すぐさま起き上がり状況を確認する。
それは……それは見るに耐えない状況だった。
ドローンを通してみる発令所、未来も絶句した。
マイクロ波によりコックピットブロックは融解。中身剥き出し。
そして右脚へそれたものが腰部も直撃。
餘目曹長は右下肢を失っていた。
「パイロットスーツ、右下肢止血!噛崎君!鐘倉君!餘目曹長を抱えて浜松町迄戻れるか?急ぎ錦糸町まで戻す!」
「りょ……了解です!。1曹!」
「う……うんそうだね。急ごう。」
ミサイルで足止めされている間に私たちは駅へと急いだ。
――――――――――――――――――――
錦糸町発令所。
局長は青い顔。
他の局員も絶望していた。
「衛生課は格納庫待機!墨東病院まで最短で輸送だ!」
絶望に支配された発令所。
何故かブザーがなった。
「きょ……局長!」
「……なにかしら。」
「錦糸公園前交差点昇降しています!」
「指示出してない!」
錦糸公園前交差点はブザーを鳴らし上昇する。
顔を出したのは新造参式人型装機。
「やめなさい!城さん!それはまだAIのシステム周りが完了していない。実戦には使えません!」
「ならば
「さ……参式がアクタガワの許可なくライティングモードへ移行。すごい速さでAI書き変わります!」
英霊を使用する以上アクタガワの羅生門全門許可が必要である。それを無視して書き換えに入った。
「参式後方にホログラム……でしょうか?何かが発現しました。人型のようですが、粗く何かわかりません。」
しかし徐々に鮮明になる映像。
男性。
左腕に赤い腕章。
右手を上げる。
そして気づく。
「アラート!アクタガワ全門施錠!放送倫理・人権・青少年法違反です!」
さらに鮮明になる映像。
局長は確信した。
「あれは敬礼だ。右手をやや上に上げる敬礼。それは世界に2つない。ナチ式敬礼。よって英霊AIに書き換えられたのは他でもない。人類悪”アドルフ・ヒトラー”だ。そうすればアクタガワの否決判定も納得だ。」
「何かが無線を通して聞こえてきます!……
「これはもう確定だね。
耳には届かない。システムは更に書き換えられる。
メインカメラは白から赤へと色を変える。
そして、機体中に浸蝕紋様が発現し始める。
コックピットカメラに映る城未来。その顔にも浸蝕紋様。
「こ……コックピット内数値全て振り切れます!」
「シンクロとでも呼ぼうか。機体とひとつになっている……。ははっ。まさに人機一体。モニター不能。リンクカット。こちらから為せる事は何もなしか。」
交差点では発射されるミサイルを背に、システムの書き換え作業が進んでいく。
無論、アクタガワの許可なく。
完全に鮮明に映し出される映像。
ナチ式敬礼をする髭の男性。
髪は流れ。左腕には赤の腕章
何度観ても見間違えようがない。歴史でも習う。
人類史の悪。ホロコーストを代表する、悪の数々。
「さぁ出番だ。
呼応する様に
「アラート!
「
「砲雷課CIC、女王への攻撃そのまま。錦糸町発生の個体は無視してよろしい。」
局長は命令する。
きっとこれが最善なんだろう。そう思い決断した。
さぁ、何を見せてくれる。私を楽しませてくれるんだろうか。
モニターに映る参式の周囲に
そこから現れる
あろう事か参式に取り付く。
すると取り付いた個体にも浸蝕紋様が発現。
そのまま機体に取り込まれた。
バーニアが大型化した。デザインが機械的から生物的に切り替わっていった。
脚、腕、ライフルにまで取り付き変貌を遂げていった。
「し……システム掌握!?完全にこちらの想定するAIとはかけ離れた存在になりました!」
「能力発現します!……あり得ません1つのAIに2つの能力!」
本来英霊AIは1つにつき1つの能力を開花させる。
シモ・ヘイヘ。《白い悪魔》
新免武蔵藤原玄信。《二天一流》
それぞれの英霊が持つ絶対的な力。
それを城未来は2つ発現させた。
ここまでくるとオーバースペック。
2つも機能するのだろうか。
「AIから反応あり!能力は《理念なくして闘争力なし》《権力掌握》の2点。内容は一切不明!」
「
叛逆の女王。革命を起こす起爆剤。
それよりも説明された内容によれば、
それは心強い。遥がやられたあのマイクロ波、相殺できるのだろうか。
マントはある。でも数回のみだ。そのあと当たれば同じように蒸発する。
「あとは
突然参式が飛んだ。ジャンプではない。
空中にホバリングする。バーニアからはリング状のエネルギーが絶えず排出され続ける。
充電の為、腕に装備したスティールワイヤーをビルに突き刺し、巻き取りとバーニアによる10m程度のジャンプを併用して街を飛び回る。これが本来の
それがホバリングしている。考えられるのは先の
通常では到底あり得ない光景だ。が、変貌を遂げ、元の面影がなくなった参式だからこそできるのであろう。
参式は飛び立とうとしている。それを外部充電ケーブルが邪魔をする。
バーニアは細くなり出力が上がる。
そして遂にケーブルを強引に引き抜き東京タワーへ向け飛び出した。
発令所メインモニターの電池残量を示す7セグメントディスプレイは反転……いや観測不能。無尽蔵の電力を内包していた。
つまりは東京スカイツリーからの電力供給を必要としない。
ビル影に隠れても問題なし。
「参式は東京タワーへ向けて飛行中。時速……なんと約100km!290秒程で到着すると思われます!」
早すぎる。
完全にシステムは持っていかれた。戦闘用に書きかわった。あとは城さんが現地に間に合えばいい。
そう、間に合えば。
――――――――――――――――――――
東京タワー。
周辺では女王から産み落とされた
浜松町駅に到着した3機の
輸送車両へ餘目機を固定する。見るも無惨に抉り取られた下肢。
パイロットスーツの機能で止血をしているが出血が止まらない。
「もうすぐですからね!餘目曹長!すぐ錦糸町に戻しますから!」
「雨降ってきちゃったね。シートかけるよ〜頼むから無事でいてね?」
固定作業を急ぐ。雨が降り出す。戦闘の難易度が増す。やるしかない状況に変わりはないが。
「発令所!固定完了しました!輸送願います!」
「現在都市機能はすべて停止しています。緊急時です高速輸送で対応しましょう。」
高速輸送シーケンスが始まる。
「すまない。私とした事が……しくじった。それから発令所。すまないが治療中も無線を繋げっぱなしにして欲しい。情報が欲しい。もう戻れなくても、情報が。」
無線からは無念を募らす言葉が聞こえる。
取り返しのつかないミス。それこそ、未来の時とは違う。
本当に取り返しがつかない。切断ではない。蒸発。2度と戻らない。
「墨東病院には治療の妨げにならないで流してくれと頼んでおく。」
「助かる2尉。」
そして。
「準備完了。浜松町から秋葉原経由、錦糸町基地までルート確保。鉄道信号進行。高速輸送開始!」
「いや、予定を変更しよう。事態は急を要する。進路反転。新宿まで首都環状山手線にて輸送開始。」
火花をあげ、車両が走り出した。
それも来た方向とは逆向きに。
なにか考えがあっての事だろう。
失血で死ぬ。なんてことは避けたい。避けてほしい。
なんとか間に合ってほしい。
あとは任せよう。輸送が始まった以上、止める事は無い。
踵を返し、再度東京タワーへと向かう。
自衛隊の
それぞれの持ち場で役割を果たしている。
避難放送の甲斐もあり都民の避難は早々に終了した。
現在発令所では東京都内の陸上自衛隊、
朝霞、練馬、十条、市ヶ谷、三宿、目黒、用賀、小平、東立川、立川。
以上10駐屯地、そして司令部と連携を取り対応に当たっている。
東京タワーへ近づく。女王がうねっている。
アラートでは攻撃に間に合わない。
それを餘目曹長が気づき押し退け助けてくれた。
さてどうしたものか。
芝公園に入る。
その時である。無線が声を拾った。
「……
ヒトラー?ヒトラー!?あの人類史の悪?でも何故今。それとも聞き間違えか?
きらりと曇天の空が光った。
何かが……近づいてくる?
バアアア!っとバーニアを吹かし私たちの前に着地した。
機体表面には見覚えのある浸蝕紋様。
これはまさか。
「ごめん遅れた。お待たせ。」
「未来!なに……その機体。参式……なの?それにさっきヒトラーって。」
「うん。そうだよ。参式。ヒトラーは英霊AI。そこから溢れ出た声援ってとこかな。」
そう、城未来は英霊を刻みつけた。
「英霊……みつかったんだ?それでもアドルフ・ヒトラーって。彼は諸刃すぎない……?」
「見つけたのではなく。こちらから呼び出したんだ。無理矢理。」
そんなことあり得ない。が
「さぁ行きましょう。餘目曹長の分、お仕置きしないと気が済まないわ。」
隊列を組み芝公園から東京タワーへと向かう。
機体性能差。簡単に置いていかれる。
こっちはバーニア全開なのに追いつけない。
それでも必死に追いかける。
そうして戻ってきた。女王のもとに。
「気をつけて未来!アラートなんかよりもずっと早く攻撃くるから!」
「ええ、無線はずっと聴いてた。しってるわ。」
女王のコアは露出している。頭部……顎?近辺についている。
「噛崎1曹!私がバックアップします!コアを狙いましょう!」
「はいな〜!」
この間も常に浸蝕短SAMが降り注いでいる。
当たらないように注意しながらコアを狙い打つ。
2人で。
しかし異常だ。コアを守ろうとはしない。その為コアに射撃が直接当たる。
当たるのだがヒビすら入らない。
浸蝕対電弾に至ってはスフィアは出現するが事象が曲がらない。
いや、表皮は抉れるがコアには全くダメージが入らない。
距離が遠いか?が近づこうにも触手が先回りしてくる。
近寄る場所がない。
『Enemy Attack正面』
来た!もう触手がこちらを向いている。
目に見えないマイクロ波が襲ってくる。
どっちによければいい。右?左?前?後ろ?それとも上?
考えちゃダメだ動かなきゃ。
間に合わない!抉られる!2人とも!
死を覚悟したその時、私たちの前に1機の
「未来!ダメ!」
「大丈夫よ。信じなさい。」
間に合わなかった。マイクロ波が参式を直撃した。
淡い閃光を放ちながらマイクロ波が拡散する。
機体は……無事だ。なんで。
「AMCマント。マイクロ波を打ち消したの。流石に効果切れね。」
マントは塵となりボロボロと崩れていった。
次はもう当たれない。
避けなければならない。でも避けきれない。
その警告が来てからでは遅い。
私達では相手にしきれない……悔しいけど。
「さぁ、
鐘倉美空と噛崎熾織。そして発令所は固唾を呑み行く末を見守る。
オン・エアと同時に機体に変化が起こった。
全身の浸蝕紋様が発光。黒の機体に赤の蛍光色が光る。赤。それは国民社会主義ドイツ労働者党の紋章。その色である。
城未来の機体はドイツ……ナチスに染まりきっている。
「システム完全同期……完了。」
モニターに映る参式コックピット内に変化が起きる。
城未来の左目が赤く染まった。そして白目が出て、最後に
「参式……3つ目の能力発現反応です。これはもう
未来の左目に
「
バーニアを吹かしホバリング。そして触手うごめく東京タワーへ突っ込んでいった。
巻き込みたくないから下がっておいて。そう言われたので2機はある程度後退する。
参式がライフルを構えた。あれはリコイルライフルだろうか?大型だ。形も違う。
刹那襲ってきた触手が溶けた。
一直線に女王が溶けた。
まさか、ライフルも
じゃああれは特異体の使うマイクロウェーブ!?そこまで撃てるの!?
完全に
しかし肝心のコアは溶けなかった。ダメだ。
人の操縦では逃げきれない触手も易々と避けながら触手をライフルで潰していく。
違和感を覚える。触手本体は溶けるが先端は異様に硬い。溶け切らない。
そしてマイクロウェーブで溶かした触手は再生が遅い。
「ふうん。なるほどね。」
未来は何かに気付いたようだった。
私達はその戦いぶりにただ見惚れるしかできなかった。
そこに無線が入る。
「3人とも安心してくれ。餘目君は緊急性を鑑み、新宿駅へ輸送。JR東京総合病院に収容。傷口を塞ぎ輸血中。大丈夫生きている。」
安堵する。助かったんだ。よかった。
「じゃあ安心して戦えるね。あの触手はきっと女王の意思とは別にほぼ自動で動いているんだろう。でもきっとそれが弱点だ。」
?弱点?見つけたの?今の一瞬の邂逅で?
それになにあの動き。
本当に未来を視ている。そんな動き。
触手は当たらない。
マイクロウェーブも目に見えないだけで撃たれてる。
当たってない。
合間合間でライフルを撃ち触手を減らす。
減らしたところからまた生える。
それを延々と繰り返している。
でも未来の中では確実に書き変わっているんだろう。
未来視……。シャレにならない。
私達に出来るのは、2体の女王が決する結末を見届ける事のみである。
今東京タワーでは2つの未来がぶつかり合っている。
人間か、
生き残るのはただ1つ。どちらかのみである。
Zulu達の願い。それを叶える事は人間が生き残る道。
「そこのロメオ2!脱出しなさい!」
未来の声がした。
爆発が聞こえる。
爆音に振り向くと自衛隊機がマイクロウェーブに溶かされ爆発した。
パイロットは!?……いた!コックピットブロックを排出したんだ。背面から飛び出していた。
それをほかの自衛隊機が回収して行った。
驚くのはそこからだ。
「アルファ1右へ10mその後慣性そのまま右後方に10mジャンプ。着地後2m以上伏せ!エコー7!20m全力跳躍!バーニア最大着地まで7秒以上掛ける事!オスカー10……。」
未来はモニターに映し出される自衛隊機1機1機全てに指示を送っていた。
全てを表示すれば全面を文字が覆い尽くす。
そうなればモニターは見えない。
じゃあ何。どうやって識別番号まで理解してる?
場所に至るまで全て。
ふと空を見上げる。
空中に制止する数体の
見た事ないタイプだ。
大きな目をしている。
観測機……?そんな便利なもの?有り得るの?
「美空?考え事してると落とされるよ?距離取ってても。」
「あ……、うん、ごめん。未来どうやって自衛隊機まで把握してるのかなって。」
未来も戦闘に集中してる。
しばしの間を置いて答えが来た。
「
だから見た事ないタイプなのか。
それよりも何。
脳に負荷をかけすぎだ。異常はないだろうか。
心配だ。
でも今は自分の心配をしないと。
未来ほどの操縦技術もあの反応速度も持ち合わせていない。
そこに飛び込む無線
「ジュリエット3脱出!美空!噛崎先輩!左右に散開!回帰は25秒後。その間マイクロ波が撃ち続けられます。その後自衛隊機ジュリエット3が避けきれず被弾しますのでコックピットブロックを回収!よろしく。」
指示が来た!その後にアラートがなる。
素早く左右に避ける。
私も噛崎1曹も無事だ。その後ろで着地を狩られる自衛隊機。背面装甲が剥がれコックピットブロックが飛び出す。
25秒待ち回収に向かう。
「無事ですかー?」
「ザザ……あ……がとう。無事だ。」
芝公園で待機している自衛隊回収部隊にコックピットブロックを届ける。
戻ろう。
自衛隊にてガスと弾の補給を受ける。
規格が同じなので、汎用機用の補給が受けられる。
「補給感謝します!行ってきます!」
再度東京タワーを目指す。
東京タワーでは閃光を放ち女王同士がぶつかり合っているのが見える。
我々人間の入り込める余地などない。
「お待たせしました噛崎1曹。」
「うん。それにしてもあれじゃあボク達何の役にも立たないね……発令所?」
発令所に呼びかける。
「城さんは女王と撃ち漏らした寄り付いてくる女王サイドの
確かにそうだ。
少しでも未来の負担を減らし女王戦に専念してもらう。
あっ!撃ち漏らし!未来に向かっていく!
届くかな?
ライフルを構える。
「いいよ。大丈夫。」
「え?」
未来の声でライフルをおろす。
「よろしくみんな。」
未来の周辺に
敵の突進を止める壁に。
ひとつではなく複数の角度に対応して幾つも壁になる。
ハニカム型の
あれも新種。進化を促したのかな。
ハニカム構造は衝撃吸収性に優れる。
だから重力バリアはハニカム構造なのだ。
それを真似したのだろう。
それにしても無尽蔵か。
いや
有限だ。
しかし硬いなあのバリア。
突撃をものともしない。
が、女王の触手ひとなぎで砕け散った。
地に落ちた
「ごめんね、ありがとう。」
未来は呟いた。
――――――――――――――――――――
あれから消耗戦は続き、触手の数は2割程度減ったように思える。
マイクロ波で女王ごと撃ち抜いてる。
東京タワーはもうボロボロだ。
女王の体の一部になっているから建っているように見えるだけである。
「さて、と。2割も減らせれば上出来かな。そろそろ決着付けようか。」
その時である。
女王が吼えた。
体の色が朱色へと変貌を遂げる。
すると、展開している女王サイドの、
未来視ではまだ追える、が速い。
指示が追いつかない。
最悪な状況はさらに続く。
噛崎1曹の機体に取りつかれた。
未来の指示が来ない。
未来視の限界なんだ。
腕や脚から浸蝕が始まる。
「ごめんね、鐘倉3曹。機体破棄、脱出する!」
頭を保護するパイロットスーツのエアバッグを膨らませ、緊急脱出用のレバーを引く。
背面装甲が剥がれ、コックピットブロックが……飛び出さない!
粘着性の何かが邪魔をして排出されない。
まずいあのまま浸蝕が続けば錦糸町事変の時の餘目曹長だ。
錦糸町と違い対応病院が近くにない。
その上すぐに排出できないとなればそれは終わりだ。
浸蝕=死を意味する。
急がないと浸蝕が進む。
どうすればいい。
「美空!避けて!触手が伸びる!」
まずい!避けないと。でも噛崎1曹をおいていけない。でも。
二次被害は被れない。
ごめん噛崎1曹!
私は目一杯ペダルを踏み込み離脱する。
刹那触手が元いた場所をかっぱらった。
噛崎1曹が触手に巻きとられた。
女王はさらに吼える。
巻き取る触手に力が入る。
弐番機が軋みだす。
「にゃはは……ここまでみた……だ。ギシ……あと任せ……よ。」
だめだそんな言葉聞きたくない!
「未来!早く噛崎1曹を!」
「撃てないのよ!触手ごと溶かし尽くしてしまうから!」
そうだ。未来は考えていた。しっかりと。
「そうだ!発令所!どうすれば!」
答えは無言だった。
そしてその時が来た。
機体が潰された。
ベコリと音をたて潰れた。投げ捨てられた。
「1曹!」
「まだ近づいたら危ない!私がいく!離れて!」
そうだ残念だけど、私じゃさらに被害を増やすだけだ。任せよう。
未来は素早く接近。機体を抱え離脱してきた。
心臓が高鳴る。無事だろうか。
芝公園まで再度後退。
機体をおろす。
未来が噛崎1曹に話しかける。
「1曹無事?まだ意識ある?」
「ザーー……げほっ。ザザッ……体の感覚ないけどなんとか……。」
息がある。反応もある。体の感覚がない?
コックピットは潰されてモニター不可。
「噛崎1曹。コックピットブロック正面から見て右側にいっぱい寄れるかな?左側をマイクロ波で撃ち貫くから。」
そうか、それで粘着物質ごと消し去るのか。
「いいよ、城1曹。右端に寄った、かすっても恨まないからやってくれ……。」
「いくよ……。」
未来はライフルを構える。
ライフルから透明なマイクロ波が撃たれる。
コックピットブロック左端が蒸発。中が露見する。
浸蝕に注意し丁寧に噛崎1曹を救い出す。
どうして残酷は続くのか。
参式の手の上で横たわる噛崎1曹の左腕は視るも無惨な姿をしていた。
複雑骨折、いや開放骨折。それよりも酷い。原型をとどめていない。
これじゃ切断しないと助からないんじゃ。素人目でもそう思う状態だ。
「酷い……鐘倉君。噛崎君を浜松町駅迄運べるかな?遠隔操作で在来線・首都環状山手線を用意、JR東京総合病院まで輸送する。城君はそのまま、女王の相手を。これ以上被害を出すわけにはいかない。自衛隊も災害派遣部隊51%……半数が脱出か
了解。そう言い私たちは背を向け合い走り出した。
「ごめんね、みんな。隻腕の剣士なんて……ははっ。もう剣も握れないか。」
「そんなことないですよ。今は義手の技術も発展しています。隻腕でも義手の剣士なんてかっこいいじゃないですか!」
そうかな、なんて笑い声が聞こえた。笑えている。大丈夫。もう乗れないけど心に炎が灯っている。
素早く浜松町駅に到着。
しばし山手線旅客車両の到着を待つ。
警笛が聞こえる。ホームに侵入してくる車両。
ホームに機体の手を伸ばす。噛崎1曹を乗せた手だ。
そのまま私はコックピットブロックを降り、噛崎1曹に肩を貸し車両へと載せる。
「無事でいてくださいね。帰ったら。治ったら。みんなでまた女子会しましょう。今度は噛崎ありで。」
うん。消え入りそうな声で答える。
「餘目曹長と同じく無線は繋げっぱにしてほしいな。」
「伝えとくよ。」
車両を降り無線で準備完了を告げる。
程なくして鉄道信号が進行に変わる。
ゆっくりと新宿方面に加速していく。
さぁ戻ろう。未来の負担を減らすんだ。取り付く
先の触手の範囲外で。
芝公園を経由し東京タワーへ戻る。
浸蝕対電弾を使用し群れなす
お願いね未来。
――――――――――――――――――――
東京タワーでは再度女王決戦が始まっていた。
「さて、いい加減怒ってるんだ。決着つけようか。」
決着の時は近い。
弱点は既に目星がついている。
「
そういうと、未来はあろうことかコアに向かって突っ込んでいった。
自殺する気!?やめてよ未来!
触手をかき分け、一直線にコアへ向かう。
モニターに映る未来は汗を流し、真剣に事に向き合っていた。
そしてその左目。
未来視も機能全開なのだろう。左目からは出血もしている。
システムに飲まれている?否、完全同期だ。掌握している。
その上でかかる負荷に耐えられていないんだ。
そこまでして人間の未来を守ろうとしてくれている。
お願い未来。戦って。そして勝って。
願いは幾星霜の時を超えゆくりなき地上波事件から続いている。
その夢は
今夢に、コアに向かい参式が突撃をかける。
コア直前接触ギリギリ迄近寄る。
自動追尾する触手が勢いをつけ狙ってくる。
「それが弱点なんだよ!逆噴射!」
頃合いを見定め、バーニアスラスター。総力逆噴射でその場を急速に離れる。
結果が後から追いついてくる。
触手は勢いを殺せずにコアに突っ込む。
そう、マイクロウェーブでも溶けない触手の先端。
あの硬さがコアに突き刺さる。
コアが……割れた。
奇しくも弱点は己が武器。
最強の盾コアは、最強の矛触手が刺し貫いた。
発令所からの無線。
「原初の特異点が割れる。全機できる限りの距離をとれ!何が起こるかわからないぞ!」
自衛隊機含め、作戦展開中の全機が東京タワーから離れる。
コアが砕けて女王は泣き叫んだ。
コアは収縮を始めた。周囲の空間を巻き込み。
悉くが吸い込まれる。
マイクロブラックホールそのものだ。
コアが消えるその時。巨大な爆発が起こった。
尋常じゃない蒸気を上げ。キノコ雲を作り。東京タワーは砕け散った。
その後、女王サイドの
「状況終了。展開全機よくやりました。
局長が述べる。何かを言い淀む。
そこに舞い込む無線。
「美空。近くにいるよね。降りれる?」
「はいです!」
急ぎコックピットを開き参式に駆け寄った。
参式のコックピットが開く。
降りてきた未来は
「え……ちょっと待って……聞いてない。未来どうして光ってるの!」
「ごめんね。言ってない。」
「発令所!知ってたんですか!」
「ええ、Zuluの尋問から可能性は浮上していました。が、人類の繁栄には変えられない。城さんもそれを承知で作戦を立案したのよ。」
バカ!ばか!馬鹿!
なんで私だけ知らないの!なんで!
「餘目曹長も!噛崎1曹も知ってたんですか!」
無線機をつけっぱなしにしていたのだろう。返事が返ってきた。
「知らなかった。私も何が起きてる……?」
「未来が消えるんです!
「ボクも知らない!聞いてない!」
皆動揺している。
そりゃそうだよ。親友が!パートナーが!今まで10ヶ月共に過ごした最愛の人が消えてしまうのだから!
「私……何も伝えられていません!好きとも!お嫁に貰うとも!ずっと一緒にいたいとも何も!お願い!まって!」
頬を涙が伝う。
そっと涙を拭かれる。
「可愛い顔が台無しだよ。
差し出されたのは未来の大切な懐中時計。
神成蒼君との思い出。そして裏事変の際のキーパーツ。
時計は粒子を発していない。消えない。消えるのは未来本体だけ。
さらに無線は続く。
まず餘目曹長。
「城1曹。私は初めて持った部下だった。どうすればいいかわからず局長に都度相談しては、対応を考えていた。それすらも表に出せない私に今までついてきてくれてありがとう。私の固い手のひらを立派と言われたのは初めてだった。嬉しかった。ありがとう。未来。」
次いで噛崎1曹。
「ボクは剣の道しか知らなかった。女子としては剣なんか握りたくなかった。家のせいだ。でも嫌いだった道を誇りだと話してくれた。可愛いもの好きも個性と認めてくれた。家族の誰も認めてくれなかった可愛さを初めて認めてくれた。だからお礼を言わせて。ありがとう未来。」
さらに局長。
「時局を鑑みた作戦行動。お疲れ様でした。私も女子がいなくなるのは、いや仲間がいなくなる事は非常に心苦しいです。未来。貴女が来て、局の雰囲気は変わった。お礼を言わせてもらいたいのはこっちだ。どうもありがとう。局を代表して礼を言います。」
なんでみんな受け入れられるの!?
私には無理だよ。
こんな別れ方耐えられない。
心にポッカリ穴が開いちゃう。
2度と塞がらない大きな穴が開いちゃうよ。
「ぐす……ひっく……みく……る。」
そっと抱きしめられる。
暖かい。未来も今を生きていたんだ。
その時未来からZuluが出てきた。
「すまない、時間だ。」
「だってよ、美空。私は後悔してない……はちょっと嘘。入学してから貴女との関係値が他人から、親友に変わった。嬉しかった。だから消えたくない。私だって消えたくないよぉ。」
未来も泣いている。
抱き合って泣きあって。
ふと、下顎を持ち上げられる。
唇に暖かい感覚が宿る。
刹那の時間を噛み締めた。
「未来!私未来が好きだった!」
「美空私も好きよ、愛してる。それから餘目先輩、噛崎先輩、御園生局長、玄月2尉、兼坂砲雷長、局員のみんな。ありがとう。私はとてもしあわせでしt……。」
すぅ……っと、音もなく未来は消えた。
そこに残った下着とパイロットスーツ。
それを抱き寄せ声をあげて泣いた。
高校生にもなって大号泣なんて、そんなレベル。
とめどなく感情が溢れ出てくる。
走馬灯のように思い出が蘇る。
土砂降りの雨の中、迎え部隊に催促されるまで泣き続けた。
――――――――――――――――――――
12月。局での整備作業中。
参式人型装機はその昇華しすぎたスペック故に運用を永久凍結。格納庫奥に磔にされ封印が施されている。
私の名前は
局は主力
今は東京タワー事変にて破壊された
「班長!ちょっとすいません!いってきます!」
格納庫ベンチへと向かう。
松葉杖を置いた餘目さんと、義手練習中の噛崎さんが座っていた。
「お二人とも体調いかがですか?」
「まだ痛む。
「言えてる。無くなった腕が痛むんだ。でもそれ以外は元気だよ。」
2人はこれとこれから向き合っていくんだ。
そこに現れる局長。
「あら、3人とも。私も混ぜて。プチ女子会ね。美空。あれから大丈夫……なわけないか。無理しないで。」
「はい、ありがとうございます。あの皆さん。これ見てもらえますか。」
取り出したのは懐中時計。
怖くて昨日まで開けなかった。
開いて知った事実に私はずっと涙した。
みんなの前で開けて見せる。
そこには裏蓋に貼られた蒼君都のプリクラ……そして。
夏の女子会のプリクラが貼り足されていた。
「噛崎さんはいませんが、未来はこれを残していきました。見てください。スタンプ。私が月で未来に太陽。」
「太陽と月が
太陽がいたから月は輝ける。
それを体現してくれた。
今は太陽を失ったけど。それでも私は笑って前を向いていく。
ありがとう未来。
これからの未来も決して悪くない。
太陽と月とが
太陽と月とが邂逅《デア》う季節に。 陽奈。 @hina-runa
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