第291話 謎の着信音
「ええー!美味しそう!ケイン君!ワイちゃんにもちょうだい!」
干渉にふけりそうになった時に、ワイちゃんが身体を折り曲げてケイン君の顔を覗き込んだ。
「ワイチャ、はい!」
ケイン君は、葡萄の実を一瞬だけ手の中に包んでから、ワイちゃんに差し出した。
ワイちゃんは、目をキラキラさせて両手でそれを受け取った。
「ひゃぁ!冷たーい!シャーベットだー!ケイン君天才!サスケイ!」
「えへへ。」
ケイン君はニコニコして、皆に一人ずつ凍らせた葡萄を配ってくれた。
この世界に来てから、アイスやシャーベットなんて口にしていなかったから感慨深いものがあった。
皆、そう感じていたのか、先程までの議論を完全に中断して、暫く、アイス葡萄タイムだ。
凍った葡萄を口にして、落ち着いて来た頃に、柊さんが口を開いた。
「僕は、MOINEやってなかったから、家族からの連絡が受け取れてないですけど、やっぱり残念だと思ってますよ。
なんでMOINEしてなかったんだろうって悔しいですもん。
まあ、状況が落ち着いて来たら、家族に伝言を伝えてくれるって、話になってるけど‥‥。
諦めきれずになんとかMOINEをインストールできないかとか、粘ったりしてたよ。」
そう言って柊さんは一寸苦笑した。
「僕の場合はアプリを使っていたかどうかで、どうしようもないんだけど。
それが充電の為だとか、何か解決方法を知ってたら、何が何でもって気持ちになるかも。
家族と連絡がとれるかもって知らなかったら普通に過ごせてたのが、家族と連絡が取れる人と取れない人が出て来たら妬みとか色々トラブルの元になりそう。‥‥あ、僕が皆を妬むとかじゃないよ。言いたいのは‥‥。」
柊さんが話し続けていたら、江角さんが手を上げた。
「わかったよ。ちょっと考えが浅かった。」
江角さんが椅子の背もたれにもたれ掛かって大きく息を吐いた。そして柄舟さんに言う。
「柄舟、俺もバッテリー持って行くっていう案は止めた方が良いという気になったよ。
そもそも彼らがだれもスマホを持っていない可能性だってある。そうなったら、俺達だけ家族と連絡が取れるなんて伝えに行くようなものだぞ。
石倉ちゃんあたりは、ぶっとんでるから、あの国にスマホを取りに戻るなんて言い出しかねないぞ。」
「‥‥流石に、スマホを取りに戻るなんてことはないだろ。」
「石倉ちゃんだぞ。泣いて落ち込んでたりしたら、他の連中が取りにいってやるなんて言い出しそうじゃないか?」
「‥‥それは、ありえなくはないな‥‥。」
柄舟さんが眉間に皺を寄せて難しそうな顔をした。
「それに、スマホを持っていたとしても、ピーラギみたいにMOINEやってないとかさ‥‥。」
ピロピロリン
話していると、誰かの携帯でメッセージを受信したような音が部屋に響いた。尾市さんと椎名さんが携帯を確認していた。
ピロピロリン
また音が鳴った。
「‥‥誰のが鳴ってるの?」
皆それぞれ、携帯を取り出して念の為に画面を開いて確認をしていた。俺はマナーモードにしているから,バイブ音しかしないはずだけど、念の為画面を開いて確認をしてみた。
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