第188話 メッセージ
この動画なんだったっけ、とついその場で再生ボタンを押してしまった。
携帯の画面に圭の姿。画面を見つめて、ニコッとちょっとだけ悪戯っぽい顔をして微笑んで口を開いた。
『もしも僕が異世界に行ったとして、そこが文明的にとても不便な場所だったら、生活しやすいように、色々な知識を使って可能な限り改善したいと思うんだ。
現代知識をばらまいたりしたら、その世界の文明の発展の流れを壊しちゃうかもしれないって、思うかもしれないけどね。
だけど、そんな事気にしなくていいと思うんだ。だってさ、現代日本から異世界へなんてこと、普通人間の力ではできないことでしょう?神様が力を貸したり認めたりした事だと思うんだよね。
だから、文明の流れを壊したりしてもそれは神様も承認済みの事だと思うんだよ。
そもそも、その世界に影響を与えないようにして過ごさなきゃいけないなら、わざわざ異世界間で召還やら魂のやりとりなんてする必要ないんだから。
なので、自分達が過ごしやすいように物造りでもなんでもして,それでいて異世界の良い部分も取り入れて、楽しめばいいと思うんだよね。
もし僕じゃなくて、瑛太達が異世界に行ったとしてもさ。楽しんで欲しいと思うよ。その世界を。』
「‥‥‥。」
圭が異世界について熱く語り出した時の映像だ。
いつもよりテンション高めの圭が面白かったからって、途中から悠宇がちょろっと動画で取ったやつを送ってくれたんだった。
内容はわかってたからほぼ見ないでそのままだった。
でもこの内容、今再生してみると‥‥‥。
「‥‥圭君って予言者なん?」
「可愛い系美少年って感じだけど‥‥、言ってることが‥‥。」
「ちょっ‥‥圭君、今どっかで見てしゃべってる?スマホの中に住んでるんじゃないのぉ?圭君、いますか〜?圭君〜。」
映像が流れた途端、俺は動揺してすぐに再生を止めなかったので圭の言葉を皆に聞かせてしまった。
ちょうど俺達の今の状況を知っていたかのような台詞に皆ざわめいた。
「あ‥‥圭っていつもこんな感じで‥‥。この日は特にテンション高めだったから‥‥。」
慌てて弁明しようとしたら、皆ちょっと苦笑いしていた。
「うん。このタイミングでその映像が出てくる所がまた凄い。」
「‥‥多分、俺達が相次いで行方不明になって異世界だのって説が出たから、そんな話になったんだろうね。でも、何か予感みたいなのがあったのかもしれないよね。
これだけ準備してたんだし。」
「流石圭、サスケイ。再生した瑛太、サスエイ。サイエイか?撮影みたい。」
「命日に、再生した映像の台詞が、『この世界を楽しめ』ってさ!あーーー!もう!俺達に言っているようにしか聞こえないよ!」
尾市さんの目が潤み、袖で顔を拭い出した。
藍ちゃんがそっと俺の袖を引っ張った。
「‥‥圭君からのメッセージだね。‥‥そう思おうよ。」
藍ちゃんの目も潤んでいた。ハンカチを出したので目を拭うのかと思ったら、ハンカチを俺の顔に押し付けて来た。いつの間にか涙がこぼれていたらしい。
圭、本当に君は‥‥。
何処かで見ているのかな‥‥。
このハプニングは圭からのちょっとしたサプライズだろうって思う事にして、皆でもう一度祈った。
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