第160話 甘い!酸っぱ!

アンバー君が心配そうに僕を見た。


「ルチル君、羽根で飛んだら天力を消耗しちゃうんじゃない?」

「ちょっとだけ試してみたんだよ。ねえ、見て?ちょっとだけ天力減ったの。」


僕は天フォンの天力ゲージの画面をアンバー君に見せた。


「あ、ホントだ。天力少しだけ減ってる。でもまだまだ一杯あるね。良かったー。」


アンバー君がほっとした顔をして笑った。僕の事心配してくれたんだ。えへへ。嬉しいな。


「うん。それでねぇ。」


僕は、「いちお」を手に取って、ぱくっと食べた。


「甘い!酸っぱ!」

イチイチ声にだして言っちゃうよ。「いちお」は美味しいなぁ。


そして天フォンをチェック。

天フォンの天力ゲージが、一杯まで伸びていた。思った通り!


「増えてるよ!満タン!」

「おおー!」

「アンバー君も試してみて!」

「えー?飛ぶの?」


アンバー君は目をぱちくりした後、「ちょっとだけよ」と言って、くるーりと宙を待って戻って来た。

天力ゲージをチェックして少し天力がダウンしているのを確認した。ささっと、「いちお」を差し出す。アンバー君がパクッと「いちお」を一口で食べた。


「甘!酸っぱ!」


アンバー君も食べる度に声に出ちゃうみたいだ。美味しいよねぇ。


「天力はどうなった?」


ワクワクして聞いてみた。アンバー君も、同じ気持ちみたいで目を輝かせている。

そうっともったい付ける様に天フォンを手にとって、ゆっくりと画面をタップした。

天力ゲージが満タンになってる!


「やった!すごいよ。『いちお』効果!」

「すごいねぇ」


二人で、器の中の「いちお」の赤い実を見つめた。「いちお」の実は二つ残っていた。


「これってさ。とっておいて天力不足のときに食べたらいいんじゃない?」

「お花みたいに萎んじゃったりしないかな。」

「ああー。わかんないねぇ。

『いちお』も植物だよね。だったら萎んじゃうような気もするし。」

「萎んじゃったら、天力回復できなくなっちゃうかもしれないよね。」

「どうする?食べちゃう?」

「うーん。」


僕は天フォンの天力ゲージ画面を見た。今は天力が満タンだ。これ以上「いちお」を食べても天力ゲージは変わらないよね。


「明日まで取っておいてみようか。萎んじゃうのかどうかも見たくない?」

「そうだね!そうしよう!」


僕は器の上に布をかけてしっかりピンと貼って紐で結んだ。溢れ落ちないようにしてから肩掛け鞄に仕舞った。

明日も楽しみだ。


「あ!僕ね。新しい歌を考えたよー!」

「えー?聞かせて。」


天力が満タンなせいか身体も心も軽い気がする。こういう時は踊りたくなっちゃうよね。


「ル!ル!ルチル!ル!ル!ルチル!」

歌ながら踊り出すと、アンバー君が手拍子を打ってくれた。


「いいね!明るい感じ!歌詞にアンバーも混ぜてよい?」

「いいよー」

「アン!バー!ルチル!アン!バー!ルチル!」


僕が考えた歌をアンバー君がアップテンポにして、歌詞にアンバー君の名前を入れて来た。良い感じー!


アンバー君も身体が軽くなったらしくて、踊りにキレがある。

僕達はすっかり楽しくなって暫く踊り続けた。

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