第12章 ルチル3

第153話 天力節約ダンス

「ルンルン ルチル ル・チ・ル ルンルン ルチル ル・チ・ル!」


僕はルチル。下級天使学校の生徒だよ。

今は同級生のアンバー君と一緒にダンスの練習をしているんだ。


「る?ち?るぅ」

「アンバーくーん、腰を振るタイミングがずれてるよ。それと右が先だよー。」

「あ、うん‥‥。」

「じゃあ、もう一回最初から行くよー。ルンルン ルチル ル・チ・ル ルンルン ルチル あっ!」

「ああっ」


アンバー君がバランスを崩して僕にぶつかって来た。


「あ、ご、ごめん。大丈夫?」

「大丈夫だけど。」

うーん、うまくいかないなぁ。


もうすぐ老天ホームにイモンに行くっていうイベントがあるんだ。その時にダンスを披露することになっているんだけど、大丈夫かなぁ。イモンって何だろう。ダンスを踊った後に,イモって奴を皆で食べるのかな。そんな植物の名前を聞いた事があるよ。


「ルチルー!」

イモンの事と、どうやってアンバー君とダンスの練習をしようかって考えていたら、ラピスお姉ちゃんが駆けて来た。


「あ、ラピスお姉ちぁ‥天様」

「んん?」

「姉天様。」

「よろしい!」


ラピスお姉ちゃんが腰に手を当てて「よろしい」のポーズをとった。よろしいみたいだ。


「ラピス姉天様、どうしたの?」


僕が尋ねるとラピスお姉ちゃんは腰に手を当てたまま、「うーん。」と難しそうな顔をして僕とアンバー君を見た。


「ルチルが遊びに出たって聞いたから無駄に天力を使っていないか、見に来たのよ。」

「遊びじゃないよ。ダンスの練習だよ。‥‥ね?」


僕がアンバー君に同意を求めると、アンバー君がオドオドしながら頷いた。


「本当〜?」


ラピスお姉ちゃんが疑い深そうな顔をして片目を閉じた。


「ダンスだってね。羽根を使って飛んだりしたらと天力を消耗するのよ。わかってる? 今は空前の天力不足なんだから。」

「わかってるよーぅ!」


僕はピョンピョンとその場でジャンプして、飛んでませんよアピールをした。本当は羽根で飛んで宙返りとかしたいけど我慢してるんだもん。


良くわからないけど、天界全体が「空前の天力不足」って言われてるんだって。全く天力がない訳じゃないけど何故か余剰天力のストックが全然溜まらないらしい。


天力管理機構というところが、保管していた天力を使ってやりくりしているとか言ってた。

羽根で飛ぶのも天力を使うから,基本的に飛んじゃダメだって言われてるんだ。


「でも、ダンスは禁止されていないよ?」

「ダンスねぇ‥‥。」


ラピスお姉ちゃんがまだ疑り深い目で見てくるから、練習中のダンスをご披露することにした。


「ルンルン ルチル ル・チ・ル ルンルン ルチル ル・チ・ル!」

「るんるん‥‥あっ。」

アンバー君が手と足を出す順番を間違えて、動きが止まってしまった。

「アンバー君、もう一度やろう。」

「う、うん‥‥。るんるん‥‥。」


腕組みする格好で、僕とアンバー君のダンスを見ていたラピスお姉ちゃんが、「ストーップ!」って言って僕達を止めた。


「さっきからルチルの歌ばっかりじゃない。だからアンバー君がうまく乗れないんじゃないの?」

「え?」

僕はビックリしてアンバー君を見た。アンバー君もポカンとしていた。

確かに僕が考えた歌は、僕のお名前満載だよ。アンバー君のお名前が入った歌も有った方が良いのかな。

アンバー君の顔を覗き込んで聞いてみたら、アンバー君は小さく頷いた。


「う、歌ってみる‥‥。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る