第147話 旅立ち間近
召還者達が身柄を拘束されているような状態じゃなくて、呪具を付けられてコントロールされているだけで、歩き回る事に制限はされていなかったから出来た作戦だったようだ。
そうして何とか新たに救出された二人は、狩猟ギルドで稼ぎながら生活基盤を作って行く事になった。
俺達がライアンさん達について彼らの領地に行くという話を聞いても、特に付いて行きたいとは言わなかった。
この街よりずっと田舎と聞いて、馬車で長距離の旅をしてまで行くメリットを感じられなかったらしい。
でも、実のところイーリアさんは「やる気が合って有能じゃないと連れて行かない」と言っていたそうだ。だから見極めないうちは連れては行かない方針らしい。彼らが領地に一緒に行きたいと頼んだとしても、何ヶ月後かにもう一度この街に来て、彼らがしっかり生活基盤を築けているか見てから判断するつもりだったようだ。
そう。田舎。
行く場所ってかなり田舎というか開拓村みたいな所らしいんだよね。
一緒に行きますって宣言してから教えてもらったんだけど。
イーリアさんのお父さんは侯爵様でこの国で地位が高く広大な領地を持っているそうだ。
その領地のほんの端っこの土地を、娘婿であるライアンさんの領地として分け与えたんだそうだ。
隣国の貴族だったライアンさんはこちらの国で婿養子になって、騎士爵という貴族だけど子孫に引き継げない一代貴族の身分を貰って与えられた領地の発展や功績が認められれば、上の階級の爵位が与えられるという話になっているんだそうだ。
と、いうことは‥‥。
領地の発展や功績を上げる為の協力を俺達は求められているってことなんだよね‥‥。
だから、召還メンバー全員に慈善事業的に領地においでとは言わないんだよね。
今のところは新規の二人と、ちょっと騒動を起こした椎名さんと石倉さん以外は、領地に来てもいいって言われているみたいだけど。
尾市さんとしては、椎名さんの事はまだちょっと気がかりだけど、石倉さんと別れたなら大丈夫じゃないかと考えているそうだ。
************************
「この屋台は今日で終わりだよ。一週間のレンタルだったから。」
俺がルースにそう言うと,ルースはぽかんとした後、眉を吊り上げて大声を上げた。
「は〜?何でだよ!」
「引っ越すからさ。」
「引っ越すってどこに?聞いてないぞ!」
「南の、田舎の方。」
正直土地勘がないから、それしかわからない。
「なんでだよぅ! もう何日か営業してくれたらパンが買えたのに!」
「ああ、出発はまだ何日か先だから、宿に来てくれたらパンは売るよ。旅用に沢山焼く予定だし。」
「宿教えろ! いや、ちょっと待て! 一個銅貨3枚だったな!」
ルースは、後方で待っていた仲間達の所に駆けて行って何やら話しをしていた。4人位でモゾモゾしているなと思ったらルースが駆け戻って来た。
コイントレーにジャラジャラと硬貨を入れる。全部鉄貨だった。
数えると30枚ある。30個目を数えた時、ルースがドヤ顔になっていた。
「‥‥丸パン、長パン、どっちにする?」
「丸パン旨かったけど、長パンはまだ食べてないから長パンだな!」
「4人で食べるの? ナイフで切っておく?」
「おう!頼む!」
ルースがニカッと屈託ない笑顔を浮かべた。‥‥調子狂うなぁ。
長パンをカッティングボードに乗せてナイフを入れているときに、ルースが話しかけて来た。
「‥‥なあ,聞いていい?」
「何を?」
「お前等,親は?俺等と同じで親いないの?」
「‥‥ああ‥‥いない訳じゃないんだけど‥‥離されちまったんだ。凄く遠い場所にいる。」
「そっか。それで子供だけで暮らしてたのか。‥‥悪かったな。恵まれてるとか言っちまって。」
「いや‥‥別に‥‥。」
子供ってワードがちょっと気になるんだけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます