第5章 瑛太2

第60話 救出されてきた人々

パチ、パチという音を聞きながら目を覚ました。

ぼんやりと目を開くと、焚き火の炎が揺らぐのが見えた。


「あ、いつの間にか寝ちゃったのか。」


ぶるっと身震いして、身体を起こす。

隣で藍ちゃんも鞄を枕にして敷き布の上で横たわっていた。

まだ空は暗い。


焚き火に小枝をくべるライアンさんの姿をみてハッとする。


「す、すみません。俺、火の番してなくて。」

「構わない。それに対して時間は経っていないよ。」


ライアンさんは空を見上げて、「順調なら彼らはそろそろ帰ってくるだろう。」と言った。

星の位置で大体の経過時間を見ているらしい。


順調なら‥‥。うまくいくといいのだけど。

話し声で目が覚めたのか、藍ちゃんもゆっくりと起き上がった。

そして小さくくしゃみをした。

寒いよね。

俺の上着をかけてあげようとしたら、拒否された。


「瑛太が熱出したりしたら、私だって困るんだから!」

「でも‥‥。」

「いい?もしも私が寝込んでも瑛太は私をおんぶして移動出来ると思うけど、

瑛太が寝込んだら私は瑛太をおぶって移動とかできないんだからね。」

「そ、そうか‥‥。」


頭の中で小柄な藍ちゃんが俺をうんせうんせと背負っている姿を想像した。三歩で潰れてた。


「それなりに着込んでるし、火に当たってれば大丈夫よ。」


藍ちゃんが言う通り、3月でもちょっと肌寒い日だったから、コートは着てなくてもジャケットの下に結構重ね着していたのは助かった。

まあ、結構血まみれになっちゃったけど。

それでも藍ちゃんは足出しているし、寒そうではあるんだけどね。


俺が寝込むわけにはいかない、というのは確かにその通りだ。


起き出して焚き火にあたる俺達に、ライアンさんが言う。


「なるべく身体を休めておけ。彼らが目的を達成して戻って来た場合、すぐに森の奥に移動するぞ。」


追っ手は来ないと予想しているけど、万が一作戦がばれた場合は追われる可能性もある。

神殿からここまで移動して来ても、休憩は取らずに移動する予定なんだそうだ。


暫くして遠くで何か人の声が聞こえて来たかなと思ったら、

木々の向こうで小さい灯りが揺れ動くのが見えた。ざわざわとした話し声が響いて来てそれがだんだん大きくなってくる。


「あ、あそこじゃない?」

「灯りだ!」


向こうでもこちらの焚き火の火が見えたようだ。小走りに近付いて来た。


現れたのは緒方さん達三人を含む7名の人物だった。鎧を着ていない。生成りのシャツに簡素なボトムをはいている。

緒方さん達以外の4人は男性二人、女性二人だ。女性のうち一人の肩を緒方さんが抱いて、笑った。


「成功しました!あの動画、俺のスマホでも効きましたよ! この人が俺の彼女の真希です。」


真希さんと呼ばれた人が、ぺこりとお辞儀をした。

満面の笑顔の緒方さんと対象的に、ちょっとおどおどして見えた。警戒されているかまだ安心出来ないと思っているかだな。

緒方さんの彼女の丁田真希さんの他にもう一人いた女性は和井咲良さん。千葉の高校生だそうだ。

男子二人は栃木の中学生。尾市尚人さんと、椎名亮さん。三年だから一つ年上だ。

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