第55話 メッセージカード
翌朝、ダイニングルームに行くと、テーブルの上にバンズ状のサンドイッチが置いてあった。
お皿に盛ってあって、ブロッコリーとプチトマトが添えられている。
いつもだったら、ビニール袋に入ったパンが置いてあるだけなんだけど。
そういえば圭は昨日大量に何か作っていたな。料理ブームなのか。
テーブルの上には、二人分の朝食と一人分の昨日の夕食が置いてあった。夕食は母さんの分だ。
母さん、夕べ帰って来なかったのかな。
今までだと、夜遅く帰って来て食べる間もなく寝てしまったんだろうって考えてたけど再婚の話を聞いたからか、相手の男性の所にでも泊まったんじゃないかって想像する。うーん、想像するとちょっとモヤッとするなぁ。
とりあえず、自分の分の朝食を食べよう。
ラップをはずしてみたら、カードがついていた。
「いつも、ありがとう‥‥か。」
何故かホワイトデーと書かれたカードだ。俺、バレンタインデーにチョコレートとかあげてないけどな。
でも書かれた手書きのメッセージにちょっとうるっとしながら、席についた。
コーヒーも保温ポットに入っているようだ。まだ熱々だ。
保温ポットに入ったコーヒーは香りは飛ぶけど、すぐ食事出来るのはいいよな。
ベーコンとチーズ、キュウリとレタスが挟まってる。
一口食べると、マスタードの香りが鼻に抜けた。
美味い。
は〜。
母さんって毎日食事作っているのが圭だって気がついてないのかな。
いや、食べてないときも多いから、そこのところは気付いていてもあまり気に留めないのかもな。
「‥‥。」
ふと、小さい時の事を思い出す。圭はよく熱を出していて、母さんは仕事を早く切り上げて保育園に迎えに行っていた。
迎えに行くのがいつも母さんだってことで、父さんと言い争いをしている事が多かった。
母さんも余裕がなかったんだと思うけど、怒鳴り散らしている事が多かった。
その時の台詞を少しだけ思い出した。
「仕事ばかりしていてそれで充分だって思わないで!食事が出るのも服が洗濯され
ているのも自動じゃないのよ。当たり前じゃないの!」
当時の母さんは育児だって大変だったはずだ。
だけど、だけどさ。今、圭が食事作ってるのも洗濯してるのも当たり前みたいに思ってない?
母さんが凄く頑張って働いていてくれているから、俺達が生活できているのも、判ってるし感謝してるけど。
世話になっている立場で、言えることじゃないんだけど‥‥。圭だって頑張ってるよ。‥‥一応俺も‥‥。うん、最近やってなかったか‥‥。
俺ももうちょっと頑張ろう。
そして、圭ともっと話しをするんだ。
圭が作ったベーコンチーズサンドを堪能しながらそんな事を考えていた。
早めのシフトでバイトに入った直後、携帯が鳴った。
まだ居酒屋は営業準備中の時間でお客さんはいないけど、フロアでは携帯のチェックは禁止されているからすぐには見ない。
でも、昨日父さんに連絡したりしたからちょっと気になって、非常口に出て携帯を確認した。
携帯を持った途端、着信がきたのですぐに出た。父さんからだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます