第38話 呪具
「おかずもある!」
更に大きいタッパーが出てくる。
タッパーの蓋を開けた藍ちゃんが、少し涙声になった。
「ねえ、いろいろ四つずつ入ってる。多分皆で食べようとしたんじゃない?」
ミニハンバーグ、鶏の唐揚げ、コロッケが4つずつ。小分けのカップに入ったナポリタンも4つずつ。
「ほら‥‥取り皿と割り箸‥‥。」
圭は一体何を計画していたんだろう。今となっては訊くことはできない。最初は、せっかく圭が用意してきたものをこんな場所で食べてしまっていいのかと躊躇した。
でも見ていたらどんどん腹が減って来た。
藍ちゃんはライアンさんや兵士達の分まで取り皿を配った。
「‥‥お葬式の時ってさ‥‥。食べるのも供養になるっていうじゃない?」
「‥‥もしかして圭は‥‥。」
「いや、流石にこの状況は予想してなかったんじゃないかな。悠宇君と私達4人で食べようって‥‥あ、お花見する気だったのかもね。」
「あ、そうか‥‥。」
藍ちゃんは更に紙コップを取り出した。
「すごいよ、圭君‥‥。」
ペットボトルのお茶と水。どれだけ持って来てたんだよ。
お茶を紙コップに注いで配った。兵士の人達は布の上で正座したままなんだか呆然という顔をしていた。
「あの‥‥食べてください。」
藍ちゃんが勧める。遠慮しているかもと思って、俺が先におにぎりに手をのばしてみた。
一つ一つラップに包んである小判型の小さめなおにぎり。中身は梅干しだった。表面に軽く塩味がして、胃に滲みる。
「うま‥‥。」
空腹で余計に美味いのかもしれない。勢い良く食べてしまい、喉を詰まらせそうになりお茶を口に含む。
何だか涙がこぼれそうになる。
「美味いな‥‥。」
ライアンさんが呟いた。
モクモクと食べ進めた。
ふと見ると兵士の人達は食べながら涙を拭いていた。この人達やっぱり日本人なんじゃないのかな。
全然しゃべらないのは何かあるのか?
食べて少し落ち着いて来た頃、圭の手帳にヒントが書かれていないか見ようとしてもう一度鞄に手を入れた。
手に当たった物を取り出してみたら、別の手帳?
100均で売っていそうな小型のバインダーだった。中に写真が‥‥?
一頁目を開いてハッとした。急いでバラバラとめくる。そして、兵士達の顔を見た。
「江角さん、柄舟さん、緒方さん?」
写真と見比べながら俺がそういうとギョットした様子で三人の兵士が振り向いた。
「あ‥‥ぅ‥‥。」
何か言いかけた兵士、緒方さんが急に苦しそうに顔を歪めてうずくまった。
「‥‥こいつらはしゃべると首が絞まる呪具をつけられている。しゃべらせようとするな。」
ライアンさんが苦々しい表情をして言った。
呪具?しゃべると首が絞まる?なにそれ?
それって‥‥俺と藍ちゃんもあの神殿に残っていたら付けられていたってこと?
ゾッと背筋に寒気が走った。
柄舟さんが緒方さんの背中を撫でていた。暫くすると緒方さんは復活したようだ。
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