四季折々

生永祥

四季折々

制服の染みを数える卒業や


春の炉に母が火を点け煮たカレー


菜の花を抱え河原を駆ける稚児


祖父偲び頬に浴びるは小糠雨こぬかあめ


故郷ふるさとのボタ山笑う同窓会


颯颯さつさつと風に揺られる毛虫かな


夏風を裂き空を舞う通知表


細腕の祖母が断ち切る冷やし瓜


齧り付くトマトに映る八重歯かな


鳩よ飛べ原爆落ちぬ空目掛け


死を悼む秋桜こすもす色のアイシャドウ


ゆびきりのポーズの指に赤蜻蛉


三日月に似た痕刻む彼のせな


車窓から紅葉かつ散る一人旅


縁側の律の調べに夢心地


子が母の長い初髪結えず泣く


木枯らしが仲を裂けない人魚像


半纏はんてんに忍ばせた飴渡す父


ブロックの塀にポツンと都鳥


子供らが花弁雪はなびらゆきに寝転がる

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