GOOD-BYE STARWEATHER -INTROVERSION CASE-

横谷昌資

狂ったのは誰

かなり長いこと俺は

みんながまともで俺だけが狂っている、と

そう思っていたけれど

実はそれは根本的に逆で

俺だけがまともで

みんなが狂いっぱなしになっているんじゃないか、と

そう思う時がある


あなたは彼がとても素敵な人に見えてるんだね

俺には頭の悪い人にしか見えないのに

君には彼女がとても素敵な人に見えてるんだね

俺には頭のおかしい人にしか見えないのに


男は面倒臭いし女は鬱陶しい

大人は話にならないし子供は話ができない


テレビのニュースは狂った風景を次々に映し出す

そもそもフィルター越しじゃ画面も本も観られない

インターネットは建前なき本音が渦を巻く

真実のお陰で人間不信と対人恐怖症になりそうさ


リアルの事件はいつだってヴァーチャルの責任

だって誰かのせいにした方が安心できるもの

鬱屈した思いがなぜこんな形で爆発したのか、

その一線を超えた理由 そんなの結局他人事なのさ


健康な政治の世界は健全な議論の世界

だからいつまで経っても春先の道路工事は止まらない

一旦決まった法律はそう簡単には変わらない

それでも食べていけるから誰も困っちゃいないのさ


他の街や他の国もたくさんの難問を抱えてる

今更別物の悩みをかかえるのはとても悩ましい

だからこれはこれでいいんだ、と思うことにする

首吊りと首斬りのどっちがマシかってことなのさ


どんなに検閲の入った教科書でもわかるだろう

人類の歴史は血みどろの歴史なんだって

でも時代と共に何かが狂っていったとは思わない

この世界は、もともとこういう風にできているんだ


だけど近頃世の中はどんどんおかしくなっている

嫌な事件、妙な事件、変な事件、とどまることを知らない

新時代の到来と共に狂気は次々にその形を変えていく

ただ単に殺すよりも残酷な殺し方の方が残酷だから


だって、魔女狩りは神の仕業じゃなかったもん

それは民衆の損得勘定と政治の仕事だったのだ


今よりいくらか未来の世界の人々は

今の時代のことを果たしてどう思うのだろう

もしも俺が未来人なら、きっとこう思う

「タイム・マシンは要らない」ってね


ずっと愚かなままで

世の中の不公平や異常など気にもせず

のほほんと空っぽな頭で生きていくこと

そう在ってほしいのさ

じゃなきゃ戦場へ送り込めない


歴史が繰り返されるのは誰もが似たようなことを考えてるからさ

だから発想の抱き方も反省の仕方もみんな同じなのだ


俺だけがまともで

みんなが狂いっぱなしになっているのであれば

狂っているのは

つまり?

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