第14話 そして、来週?
「来週いいかしら?」
「あ、はい。」
私はてっきり、また鎌倉の藤堂家に伺うものと思い込んでいた。
「ここ、いいでしょ?貴一も気に入ってるし。」
「え?」
「ん?」
「貴一さん、外出されることあるんですか?」
「えぇ、たまにだけど。」
「でも…、ここはお宅から遠すぎませんか?」
「そうは言ってもね、お祝いはしたいじゃない!」
「なにかおめでたいことが?」
紫さんは意味深な笑みを浮かべて言った。
「海外へ行ってきたのはね、仕事でほんのちょっとしたトラブルがあったからなんだけど、あなたに着てもらうドレスやなんかを見始めたらニューヨークだけじゃなくて、ロンドンにもパリにもミラノにも行きたくなっちゃってね。で、予定よりも長くなっちゃったのよ。」
「私が…ドレスを?」
「花嫁衣装はね、うちの代々のがあって、お式も決まって地元の◯△神宮なんだけれど、洋装で写真も撮りたいじゃない!」
「あの…、貴一さんはなんて?」
「楽しみにしてるわ!」
紫さんは私の両手を取って、目を見てそう言った。
藤堂家を尋ねたその日、私が帰ったあとに二人で話して、ぜひ私を迎えようと合意したんだと。母子とはいってももうたやすくなんでも合意できるわけでもないけれど、いままでで一番早く和やかに合意したんだそうだ。貴一さんは私に自分で連絡したいと言ったけれど、万が一のこともあるから衝撃を受けないようにと紫さんが説き伏せたのだと。そのことを深く深く詫びてくれた。そして、こんな母子のところだけれどぜひ藤堂家に来てほしいのだと、実は今朝の内に父にもその話をして承諾は得たのだとも言ってくれた。
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