スカイマン

「ふわぁ………」


 朝起きて腕を伸ばす。いてて……腕を怪我していたんだった。カーテンを開いて朝日を浴びる。


 いつものようにテレビを付けて卵とベーコンをフライパンに、パンをトースターに入れる。


『次のニュースです。昨日夕方頃、ワールドロードの撮影現場で事故が起きました。』




炒める音と共にいい匂いがする………けれどいつものように気分が良い訳じゃない。昨日のことはどうしよう。生クリスに触れてしまった。一生あの服洗わない。記念に取っておこう。


『幸いにもこの事故による怪我人は出ていません。しかし、事故直後に謎の人物が映っていました。次のビデオをご覧ください』


じゃなくて、大事になってなければ良いけど……無理があるな。でも事故だったし、俺のことはあやふやになっててくれるとありがたいな。


『ご覧の通りまるで映画のアクションシーンのようです。この謎の人物は誰なのでしょうか? 近くで撮影現場を見学していた目撃者によると高校生ぐらいの少年に見えたと証言しています。また、マンションのオーナーは個人情報だからと………』


「あや……ふや」


フライパンの事なんか頭から消え去ってテレビに釘付けになる。昨日の事がニュースになっていた。いや当然だ。俺が屋上や屋根の上、パイプの上を走っている動画が撮影されていた。


「………うそだろ」


すぐさまスマホを確認するとツブヤイターとかの全てのSNSでトレンド1位になっていた。


【スカイマン】


「これって俺の事……だよな?」


『スカイマンって何者?』


『身体能力エグすぎ! 映画かよ』


『クリス・ミラーすげぇ』


『なんで撮影された動画20件以上あるのに顔が映ってるやつ一つもないんだよ』


『撮影スタッフのカメラにも映ってないって奇跡だろ』 


『ヒーロー気取りの目立ちだかり、こいつが事故を起こしたんじゃねえの?』


読んでも読んでも読みきれないコメントの数。クリス・ミラーのアカウントを見てみる。


『あの時私はたった一人の娘を失うところだった。だが少年に助けてもらった。命の恩人だ。本当に感謝をしている。あの時私達はパニックになっていてちゃんとしたお礼も出来なかった。出来ることなら直接あってお礼をしたい』


『もし、彼がいなければ私はパイプの下敷きになっているところでした。ですが彼が私を助けてくれたおかげで今でもこうしてお父さんと食事ができています。私は貴方に会いたい。お礼が言いたい。お願いします。もしスカイマンの事を知っている人がいたら教えてください』


クリス・ミラー、娘のアリシア・ミラーが投稿したコメントは全世界で1000万回も拡散たれていた。今でも更新するとその数字は衰えを知らない。観覧数なら1億は既にいっていた。


「おいおいおいおい」


画面をスクロールしまくる。しかし、どれもこれも【スカイマン】の事ばかり。奇跡的にスカイマン=俺ということはバレて無さそうだけどそれも時間の問題だろう。


「昨日の俺私服だし絶対に知り合いにバレるって、学校行きたくない………」


行ったら絶対に誰かしらにバレる。でも行かなきゃ両親に迷惑かかるし……私服を全部新しいのにしよう。


………不意に時計を見たら既に学校に行く時間だった。卵とベーコンは炭とかしていた。


「ち、遅刻だぁ! いや走ればまだ」 


直に着替えて炭をパンで挟んで食べながら学校に急いだ。





「ま、間に合ったぁ」


時間ギリギリになって教室のドアを開ける。すると全員の視線が俺に集まる。


嘘!? なんで? もしかしてもうバレて


「スカイマンまじ凄くない!? あんなの真似できない!」


「わかる〜。自分の命も顧みずに人を助けるってまじでヒーローって感じ」


普通に会話を再開した。ほ、どうやらバレてないみたいだ。


「ふん、これぐらい俺でも真似できるさ。見てろ、バク宙からの半回転で手で机にのってさらにキリモミ回転ジャンプ!」


「流石宮根! すっげぇ!」


長身イケメンの宮根がその場でアクロバティックに決める。も、机がガタついてバランスを崩してしまい倒れかける。


「うお! っとあぶねぇ!」


とっさに足をついてさらに横に跳ぶことで体を打ち付けることなく


「いた!」


俺に当たった。


「お、わりいわりいw」


「おいノロマ。宮根の邪魔すんじゃねえよ」


「そうだぞもし宮根が怪我したらどう責任取るつもりだ! 謝れ」


「え、でもそっちが勝手に」


「ああ?」


宮根の取り巻きの威圧的態度にたじろいでしまった。


「おいおいお前らそう責めるなって、こいつに当たったのは俺のミスだ。こいつが、どれだけ、どんくさくて、ノロイからってて、責めてやるなよな」 


「そうだぞ。宮根に感謝するんだな」 

 

「風丸、いやノロ風日向ぼっかぽか、ちゃん」


「早く席に座れさっさとホームルームを始めるぞ。始めたな。よしおしまい。お前ら今日の1、2時間目でですか自習になった。ホームルームもこれでおしまい。お前らちゃんと勉強しておけよ」


そう聞くと皆で盛り上がる。先生は滅茶苦茶慌てた様子で教室を出ていった。 


皆は直にスカイマンの話に移る。      

 

「おい日向、これ見ろよ」


隣の雨宮 晴(あめみや はる)俺の学校での唯一の友達。そう、唯一の。だからぼっちちゃんじゃないやい。


席に座り動画を見せてもらった。内容はスカイマンだ。周りが皆おんなじ話題で胃が痛む。


「なあ、これやっぱり凄いよなぁ。日向ならできそうじゃね?」


「ムリムリムリできないできない危険すぎるって」


友人の言葉にドキッとしたが全力で否定する。


「そうかなぁ、それにしてもこのスカイマンってやつ、お前に似てない?」


「似てない似てない!」


「そうか? そうかも」


晴は俺が否定してなんか納得しだした。

宮根が言っていることと晴が言っていることは矛盾しているが事実である。


俺は昔から人前だと緊張して頭が真っ白になって何もかも上手く行かない。運動神経抜群だと自負して入るが一人じゃないとロボットより酷い動きになる。

治したいとは思っているが治らない。親友の晴の前だけでは緊張せずにいられる。こいついないとおれ寂しくて死んじゃうかも。


「日向、話変わるけどこんな噂知ってるか? アリシア・ミラーがスカイマンを探すために日本に転学してくるって噂」


変わってるようで変わってない。あのアリシア・ミラーが日本に転学って、流石に無理な噂だ。


3日後


「て、転校生を紹介する!」


3日やそこらで立つ噂にしてはおかしすぎる。


ホームルーム


「あ、アメリカから来た、くださったあ、アリシア・ミラーさんです!」


一体どこのだれがそんな噂を流したのやら


自己紹介


「アリシア・ミラーです。今日からこの学校で皆さんと一緒に学ぶのでよろしくお願いします」


ご本人様でしたか。



えええええええええええええええええええええ!!!!!!!



__________________


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