22 故郷に帰ってみた③
翌朝、リリアはテントの外から聞こえる物音で目が覚めた。
ガンガンと外で何かが固いものをたたく音がする。
「なんでしょうか」
眠い目をこすりながらリリアが体を起こす。
まだ眠い頭を寝袋から出て思いっきり伸びをすることで覚醒させる。
隣を見るとメイスイも同じく目を覚ましたばかりであった。
異変を確認しにテントから出る。
視力が戻りつつある目であたりを見回すと、2,3匹のゴブリンが結界をたたいていた。
中に入りたくともそれを阻む結界をどうにかして壊そうとしているのだろう。
「ちょっと、うるさいんだけど」
少し怒った声でそう言ったメイスイがそのゴブリンたちに向かって魔法を放つ。
手加減を忘れた魔法はものすごい音を立ててゴブリンたちに直撃する。
舞い上がった土煙が消えた後に残っていたのは凹んだ地面だけであった。
「ちょっとやりすぎちゃったかも?」
やべっ、という顔をしたメイスイが証拠隠滅として土魔法で地面を直していた。
その間にリリアはもう一度伸びをする。
完全に目が覚めた。
もう一度テントの中に戻り、寝袋をたたむと鞄にしまう。ついでにメイスイの布団も締まっておいた。
テントから出るとメイスイが前足を伸ばして伸びをしている。
かわいい。
「おはようございます、メイスイさん」
「おはよう」
朝の挨拶をする。
「この辺って魔物が出るんですね。野営スポットになってるようなのでてっきり安全な場所かと思ってました」
リリアが朝ご飯を鞄から取り出しながら言う。
朝はパンと果物だ。
「そうみたいだね。まあ、森の中だし案外安全な場所なんてないのかもよ」
渡されたお皿を受け取りながらメイスイが答える。
まあ、よく考えればそうかもしれない。街道やその周辺には魔物が出にくいといったことを聞いたことがあるが、そもそも森の中なのだ。どこにいつ魔物が出てもおかしくないのだろう。
「いただきます」
そう言って、リリアも朝ご飯を食べ始めた。
「よしっ。これで片づけは終わりですかね」
テントの収納とついでに焚火の処理をし終えたリリアが言う。
「さて、出発しますか」
「そうだね。因みに目的の町まであとどれくらいで着くの?」
リリアが鞄から地図を取り出し広げる。
「多分今はこの辺だと思います。メイスイさんの足が思ったよりもとても速かったので、今日の夕方には付くんじゃないかなと思いますよ」
地図を指さしながら確認する。
「そっか。じゃあ、すぐにでも出発しようよ」
せかすメイスイが大きくなるとその場にしゃがみ込む。
早く乗れという事だろう。
リリアはそれに従い、その背中に乗った。
「じゃあ、出発するよ」
そう言うとメイスイは走り出した。
朝の風がとても気持ちいい。
今は暑くも寒くもない比較的過ごしやすい時期である。そのため、朝は少し気温が低いのだが、それはそれで風が心地よく肌を刺激してくれるいい温度となっていた。
しばらく走っていると分かれ道に着いた。
「これどっちだっけ」
「えっとですね。これは左ですね」
地図を見ながらリリアが答える。
「了解~」
後はこの道に沿って進んでいけばソクルに着くだろう。道案内も必要ないはずだ。
そう思ったリリアはメイスイの体に抱き着く形で寝転がる。
この毛がたまらなく気持ちいい。
小さくなったメイスイの体に頬ずりするのも好きだが、巨大なモフモフに抱き着くのも同じくらい好きだ。
リリアはそうやってモフモフの毛を堪能しながらしばらくゆっくりしていた。
「きゃあーーー!!」
突然悲鳴が聞こえた。
何事だろうと思いリリアは体を起こす。
前を見ると、先の方で馬車が襲われているのが見えた。襲っているのはオオカミ系の魔物の様だ。
「リリア、どうする?」
メイスイが尋ねてくる。
「もちろん助けましょう。メイスイさん、いけますか?」
「もちろん!」
そう答えたメイスイにリリアは強化魔法をかける。
ぐんっとメイスイの体が一気に加速する。
リリアは振り落とされないようにその体にしがみついた。
あっという間に馬車の元にたどり着いたメイスイは、そのままの勢いで直進方向にいた魔物に体当たりをする。
魔物は近くの木にたたきつけられると、そのまま息絶えた。
見るとどうやらホワイトウルフだったようだ。
「メイスイさん、私は邪魔でしょうから一回おります」
リリアがそう言う。
正直いま、魔物に思いっきりぶつかって振り落とされそうになり、少し怖かった。
しかし、メイスイは、
「いや、ちょっと待ってて。すぐ終わるから」
というと、天に向かって一吠えした。
残りのホワイトウルフに天から雷が降り注ぐ。
ゴブリン退治で使った魔法の上位版のようだ。
雷が直撃したホワイトウルフたちは痙攣したかと思うと、そのまま倒れこみ息絶えた。
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