21話 告白

「レティ……そんな、言い方するのはやめてくれないか?」


レオナルドが苦しそうな顔で私の両肩に手を置いて、じっと見つめる。


「そんな言い方……?」


自分の感情に任せて私はレオナルドに「行かないで」と訴えている。そのことが彼を

苦しめているのだろうか?


「頼むから……そんな顔で、俺が必要だなんて言わないでくれ……」


「駄目なのですか……?」


レオナルドが必要だと言うのは、私の本心だ。でも、彼にとってはこの言葉は重荷になってしまうのだろうか?


それでも……重荷に思われても、身勝手だと思われても構わない。

今の私は心の底からレオナルドを必要としていた。ここにいて欲しいと強く願っている。


「アネモネ島は、レオナルド様にとって……御両親との幸せだった思い出もある大切な場所ですよね? それにお祖父様だってお祖母様だって……大切な存在ですよね? それなのに、ここを去ってしまうのですか……?」


「祖父母だけじゃない……レティだって、俺にとっては……大切な存在だ。だからこそ……出て行こうと思っているんだよ」


またしてもレオナルドは全てを諦めたかのような目で私を見つめる。


「何故私が大切な存在なら、出ていくのですか?」


「俺は、レティが思っているほど人間が出来ているわけじゃないんだ」


レオナルドが寂しげに笑う。


「領主をこのまま俺が続けるか、それともレティに引き継ぐか……。いずれにしても俺がここに残る限りは、レティにまたシオンのような想い人が出来る可能性があるだろう? そして将来的に結婚することになるかもしれない」


「レオナルド様……?」


「その様子を、兄として……冷静に見ていられる自信が無いんだ」


レオナルドはいったい何を言おうとしているのだろう?


「さっきも言ったけど……俺が必要だなんて、言い方をしないで欲しいんだ。そんな言い方されると、勘違いしてしまいそうになってしまう。ひょっとして……レティは俺のことを好きなんじゃないかって……ね」


「え……?」


「レティ、覚えているか? カサンドラに婚約を申し出ようと決めたときの話。あのとき、俺に聞いただろう? 好きな女性はいないのかって」


「はい」


心臓の動機が激しくなってくる。まさかレオナルドは……?


「もうこの際だから正直に言うよ」


レオナルドはまっすぐ私の目を見つめてきた。


「レティ、俺は君が好きだ。多分、初めて出会ったときからずっと……だが、困らせたくはなかったから気持ちを告げるつもりは無かったんだ」


「!」


その言葉は衝撃的だった。

まさか、レオナルドが好きだった相手が私だったなんて……。だとしたら、私は今まで散々彼を傷つけてしまったことになる


「も、申し訳ありません……私……」


「いや、いいんだ。何も謝る必要はない。別にレティに俺の気持ちを受け入れて貰いたくて言ったわけじゃないんだ」


レオナルドは慌てた様子で手を振る。


「いいえ! そうではないんです!」


どうしても誤解されたくなかった私はつい、大きな声を上げてしまった。


「レティ……?」


私が大きな声を上げたことが驚いたのか、レオナルドは目を見開いて私を見る。

でも、言葉がうまく見つからない。何と言えば、誤解を解くことが出来るのだろう?


ただレオナルドに、勘違いされたままでは嫌だった。

そこまで思ったとき……私は自分の本当の気持ちに気付いてしまった。


そうだ、私は……。


「私、レオナルド様のことが……好きです」


気づけば、私は自分の気持ちをレオナルドに告げていた――

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