15 高級なお店

「レティシア、ここで食事にしないか?」


レオナルドが連れてきてくれた店は海が一望できる高台にあるカフェレストランだった。


真っ白な壁に青いドーム型の屋根がおしゃれな外観だった。


「素敵なお店ですね……」


「そうか? 気に入ってくれて良かった。外観もいいが、この店の料理も美味しいんだ。早速入ろう」


「はい、レオナルド様」


私たちは揃って店内へと足を踏み入れた――


案内された席は窓際のボックス席だった。2人で向かい合わせに座ると、早速レオナルドがメニューを差し出す。


「レティシア、好きな物を頼むといい」


「はい」


メニューを開き、私は目を見開いた。どの料理も驚くほど高かったのだ。 これでは私の所持金で足りるのだろうか……?


思わずメニューとにらめっこしていると、レオナルドが声をかけてきた。


「どうかしたのか? 迷っているのか?」


「あ、あの……レオナルド様……このお店では私の所持金が足りるかどうか……」


メニューで口元を隠しながら恐る恐る口にした。すると、一瞬レオナルドはポカンとした顔になる。


「え? 何を言ってるんだ? まさか、支払いのことを気にしているのか?」


「はい、そうです……」


「レティシアに払わせるはずないだろう? 大体俺がこの店に誘ったのだから」


「ですが、とても高級ですよ?」


小声で訴える。

一人暮らしをするようになってからは、金銭感覚もすっかり身についている。この店が『アネモネ』島の店の相場よりも、ずっと高いのはすぐに気づいた。


「確かに、この店は有名なカフェレストランだから少々値が貼るが……それだけ美味しいんだ。だから一度でもいいからレティシアにこの店の味を知ってもらいたくて連れてきたんだ。お金なら俺が持っているから、気にするな」


「レオナルド様……わかりました」


真剣な目で訴えてくるレオナルド。これ以上断るのもかえって、悪い気がする。


「そうか、良かった。もし、迷って決められないなら本日のお薦め料理にしてみたらどうだ? 俺はそれにするつもりなんだ」


「では、私もそれにします」


そこでレオナルドは手を上げて、店員を呼ぶと「本日のお薦め」を2人分注文した。



「レティシア。さっきは……すまなかったな」


店員がテーブルから去るとすぐにレオナルドが謝ってきた。


「え? 何のことですか?」


「手芸店での話だ。オーナーに俺のことを尋ねられた時、妙な言い方をしてしまっただろう?」


そういえば、レオナルドはヘレンさんに「レティシアは俺の大切な人です」と言ったのだっけ。


「いえ、確かに勘違いされそうな台詞だとは思いましたが、あながち間違えてはいないですから」


「レティシア……」


レオナルドの目が見開く。


「私にとってもレオナルド様は大切な家族のような方ですから」


「家族……うん、そうだな。確かに言われてみれば家族のようなものだな」


「はい、そうです」


するとレオナルドは少しの間、何か考えるような素振りを見せ……口を開いた。


「レティシア、実は祖父母のことで話があるのだが……万一、2人が妙なことを言ってきても……」


そこまで言いかけた時――


「あら? もしかして……レオナルドじゃない?」


不意に女性の声が上から振ってきた――

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