17 祖父の提案 1

 私――レティシアはレオナルドに連れられて、廊下を歩いていた。


「レティシア、イザークとはどんな話をしたんだ?」


歩きながらレオナルドが尋ねてきた。


「え? イザークとですか? 別に大した話はしていません。世間話をしながら星空を眺めて……あ、でも婚約者とは終わりにしようかと思っている話はしました。近いうちに手紙で彼に婚約解消か、破棄を伝えようかと思っています」


別に、イザークとヴィオラの話はするまでもないだろう。


「ふ〜ん。それだけか?」


「え? それだけって……」


「イザークに何か言われなかったか?」


どうにも気になる尋ね方をしてくるレオナルド。


「いえ……? 別に何も言われませんでしたけど?」


「言われなかった……? そうなのか?」


レオナルドが足を止めた。


「はい、そうですけど……あの、それが何か?」


「いや、何でもない。悪かったな、色々尋ねて。それじゃ行こう」


「はい」


再びレオナルドが歩き始めた。

一体、今の話は何だったのだろう……? 少しの疑問を感じながら、祖父母の元へと向かった。



連れてこられたのは応接室だった。


――コンコン


「おじい様、おばあ様。レティシアを連れてきました」


ノックをしながらレオナルドが扉越しから声を掛ける。


『ああ、中に入ってくれ』


おじい様の声が聞こえ、レオナルドは『失礼します』と言って扉を開けた。


「すまなかったな、遅い時間に呼び出してしまって」


「待っていたわ。レティシア」


ソファに座った祖父母が笑顔を向けてきた。


「いえ、大丈夫です。起きていましたから」


「それじゃ、俺はこれで失礼します」


レオナルドが頭を下げる。


「ああ。分かった」

「ありがとう、レオナルド」


え? 一緒に話を聞くのでは無かったのだろうか? 訝しげにレオナルドに視線を向けた。すると――


「また明日会おう。おやすみ、レティシア」


レオナルドは笑みを浮かべると、去っていった。


――パタン


扉が閉ざされると、早速祖父が声を掛けてきた。


「レティシア。座りなさい」


「はい、失礼します」


二人の向かい側に腰掛けると尋ねた。


「あの、大事な話があるとレオナルド様から聞きましたが……一体どのようなお話でしょうか?」


「うむ、話というのは言うまでもない。お前の父親に関しての話だよ」


お祖父様が身を乗り出してきた。


「え? お父様のお話……ですか?」


「ええ、そうよ。私達ふたりでよく話し合ったのだけど、やっぱり娘であるレティシアの意見が一番大事だもの」


「おばあ様……?」


一体二人は何を言おうとしているのだろうか?


「レティシア。カルディナ家から籍を抜いてグレンジャー家の戸籍に入らないか?」


「え?」


祖父の言葉に、私は思わず目を見開いた――


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