15 ヴィオラとの語らい

 その後も四人は誰が一番悪いのかと言う話で紛糾し……結果、父にイメルダ夫人、フィオナ、そしてセブランの全員が悪い人物だということで決着がついた。


 そして祖父母からは絶対に父に私の居場所は知らせないし、二度と『リーフ』に戻ることもないだろうということで話はまとまった。

 

 もっとも、私が『リーフ』に戻る必要はないという話になった時はヴィオラが寂しそうな表情を浮かべた。

そんなヴィオラに祖父母は、いつでも歓迎するから好きなときに遊びにおいでと言って彼女を納得させたのだった――


 

 

****



 21時――


 私とヴィオラはグレンジャー家の芝生に寝転がって、美しいアネモネ島の星空を眺めていた。


「うわ〜……本当に美しい夜空ね……今にも星に手が届きそうだわ」


ヴィオラは夜空に手を伸ばしながら笑った。


「ええ、本当にこの島は美しい島なの。私、ここに来て本当に良かったわ」


「海の幸のお料理もとても美味しかったもの。それにレティのおじい様とおばあ様も、とても心が温かい方だわ。それにレオナルド様もまだ二十歳なのに、とても立派な方ね。セブランとは大違いよ」


「そうね」


何故そこでセブランの名前が出てきたのかは不明だったが、私は相槌を打った。


「……ごめんね、レティ」


不意にポツリとヴィオラが謝ってきた。


「え? 何を謝るの?」


私は芝生から身体を起こし、寝そべったままのレティを見下ろした。


「レティの気持ちを何も考えずに、この島へ来てしまったことよ」


「そう言えば、ヴィオラ。聞きたいことがあったのだけど、何故イザークと一緒にこの島に来たの?」


私はまだヴィオラとイザークが何故二人で揃って『アネモネ』島へ来たのか理由を聞いていなかった。


「それはね……二人でレティを捜し出して……連れ帰ろうと思っていたからなの。私、どうしてもレティともっと一緒に過ごしたかったから。同じ大学にも通いたかったし、この先もずっと親友として同じ時間を共有したかったの……」


ポツリと呟くように言うヴィオラ。その寂しげな様子に胸がチクリと痛む。


「……そうだったの」


ヴィオラは親友だから、彼女が私を連れ帰りたいと思う気持ちは理解できた。けれど何故イザークまで……?


「レティはこの島で暮らす方がずっと幸せなのかもしれないわね。いくら戻ってカルディナ家を出たとしても、きっとフィオナやセブランと顔を合わせてしまうことがあるだろうし」


「……でも、考えてみたら私は一番肝心な問題が残されていたのに、ここへ来てしまったのね」


「肝心な問題って?」


ヴィオラも芝生から起き上がる。


「セブランとの婚約解消をすることよ。私さえいなくなってさえしまえば、セブランは私との婚約を解消してフィオナと結ばれるだろうと思っていたけどそう簡単にはいかないのかもしれないわ」


「そう、それじゃレティはもう完全にセブランに未練は無いのね?」


何故か嬉しそうにヴィオラが尋ねてくる。


「ええ、無いわ」


現に考えてみれば、この島に来てからというもの……私は父に思いを馳せることは遭ったけれども、セブランのことはほとんど思い出すことも無かった。


「それを聞いて安心したわ。でも、いいじゃない。そのままにしておけば。レティから何か動く必要は無いと思うけど?」


「だけど……それはあまりにも無責任じゃないかしら?」


「あんな風に今まで好き勝手してきた人に責任を感じることはないわよ。むしろ無責任なのはセブランとフィオナの方よ」


ヴィオラは口を尖らせる。



――そのとき



「二人共、こんなところにいたのか?」


背後から声を掛けられ、私とヴィオラは振り向いた――

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