14 お茶会の裏側
イメルダ夫人から誘われたお茶会が終わり、私達は屋敷の外でセブランのお見送りに出ていた。
「セブラン様、明日からフィオナも同じ学校に通うことになるのでどうぞよろしくお願いしますね」
「お願いします、セブラン様」
夫人とフィオナに頼まれて、セブランは笑顔を見せる。
「ええ。もちろんです。僕の方こそ、明日からよろしくおねがいします」
そして馬車に乗り込むと、セブランは私に顔を向けた。
「レティ、また明日ね」
「ええ、セブラン。また明日。それでは馬車を出して下さい」
男性御者に声をかけると、彼は「はい」と頷いて馬車はガラガラと音を立てて走り去っていった。私達三人は馬車が見えなくなるまで見送ると、夫人がポツリと言った。
「……行ったわね。さ、部屋に戻りましょう。フィオナ」
「はい、お母様……あ、そうだわ。レティシア」
突然フィオナが私を振り返った。
「何かしら?」
「あのね、私も貴女のことこれからレティと呼んでもいいかしら。セブラン様みたいに愛称で呼びたいのよ」
「ええ、いいわよ」
別に断る理由もないので、頷いた。もとより、断る気にもなれなかった。何故なら夫人が刺すような目で私を見つめていたからだ。
「あら、良かったわね。出会ったばかりなのに二人は本当に仲が良くて安心したわ。それじゃ中に入りましょう」
「はい、お母様」
「はい」
夫人に促され、私達は屋敷の中へと入って行った――
****
その日の夕食の席――
私を除いた三人は今夜も楽しげに会話をしながら食事をしている。
「……それで、セブラン様にクッキーを焼いてあげたらとても喜んで食べてくれたの。お父様の仰っていたとおりだったわ。ありがとう」
え……?
フィオナの話に、思わず身体がこわばる。
「そうか、彼はまだ小さな子供の頃から甘い菓子が大好きだったんだよ。喜んでもらえて良かったな」
父が笑みを浮かべてフィオナを見る。
「ふふふ……あなたの助言どおりに従って良かったわ。すっかりセブランはフィオナが気に入ったみたいだから」
イメルダ夫人の言葉で確信を得た。夫人は何とかセブランの気をフィオナに向けさせるためにセブランがどのようなものを好むのか父に尋ねたのだ。
そして、父はそれを二人に教えて……
フォークを持つ手が震えてしまう。
……一体父は何を考えているのだろう。セブランの両親からは遠回しに将来は私を彼の妻に迎え入れたいという話が以前から出ているのに?
何故、フィオナがセブランに気に入られるように力を貸しているのだろう?
「…シア、レティシア!」
不意に名前を呼ばれて、ハッとなって顔をあげると父が私をじっと見つめている。
「一体どうしたのだ? 呼ばれたら返事をしなさい」
「す、すみません。考え事をしていたものですから」
「何だ? それでは話を聞いていなかったのか?」
父は眉をひそめて私を見る。
「……すみません。あの、もう一度お願いします」
「仕方ない……いいか、明日からフィオナも同じ学校に通うことになる。フィオナが困らないようにお前が校内できちんと面倒を見て上げなさい。姉なのだから……分かったな?」
有無を言わさない強い口調だった。……でも、言われなくてもそうするつもりだったのに。
いよいよ、明日からフィオナが同じ学校に通うことになる……
「お願いね、レティ」
フィオナが笑顔で私を見る。
「ええ。任せて頂戴」
私も笑顔で頷く。
だって、私は二人の幸せを奪ってしまった責任があるのだから――
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