剣舞士が歌えば災厄級!?
比較的汚れた紙片
序章
私、田中太郎。享年29歳。死因、下水道内に流れ込んだガソリンが気化して下水道内に充満し側溝にタバコがポイ捨てされたことにより引火したことで爆発が起き地上部のマンホールが吹っ飛び...たまたま昼休みで外食しに出ていた私、田中太郎の頭上に吹っ飛ばされたマンホールが直撃したことによる不慮の事故死。
それを神と名乗る美人(女神かな?)に現世のニュース番組を観せられ知る。
『田中さんはよく一人で行動することが多かったので、発見されてから勤め先への連絡が遅れたことによりご家族への連絡も当然ながら遅れてしまいご家族が田中さんの死に目に会えなかったのが悔やまれますね。』
『そもそもなんで、勤め先がわかるものを携帯していなかったのでしょうか?』
『社員証や身分証は未だに行方知れずとのことですが、何か事件に巻き込まれていたのでしょうか?』
「んなことはない。ただ、無くしたくないから近くのコインロッカーに入れてから食事に向かっただけだ。」
「へぇー、用心深いんだね?」
「無くした前科があったからな。...死因はわかったが、何故私が死後に神の御前に?閻魔大王の裁判は?」
「うん、わざわざ裁く程の罪ではないけど稀に見る珍しい急死だったからね。ちょっと死後のチャンスでも提示させてもらおうかと思ってね。」
「それは王道の異世界転生というやつか?」
「そうそうそれ。どう?異世界転生してみたい?」
「正直言うとしたい。だが、転生する異世界はどんなところだ?」
「剣と魔法の世界だよ。」
「文明レベルは?」
「そこは王道としか。」
「中世レベルか...ちなみに、転生者は何人送った?」
「数十年毎に3人、合計で数百人くらいかな?」
「そんなに送り込んでるのに文明レベルが発展してないっておかしくないか?」
「そこは揺れ戻しがあるからね。」
「揺れ戻し?」
「そ、文明レベルが発展すると1番の問題は何かな?」
「戦争か?」
「そ、文明レベルが発展し人死が少なくなって今まで足りていた資源が自国だけでは足りなくなって他国から奪うことを選んじゃった結果何度か文明レベルがリセットしちゃってね。兵器転用出来そうな物は軒並み禁忌となって作った途端、これさ。」
神は綺麗な顔を歪めて自身の首に手でトンとした。つまり、処刑を意味するのか?
「転生者に説明する前にそういうことを義務付けた国々が出て来ちゃってね。授けたスキルで生産無双するぞーと意気込んだ子が国の文官に見つかっちゃってね、ろくに説明もされずに殺されちゃった。あの子、一応私の加護があるって必死に訴えていたのに教会も信じるどころか私の名を騙ったとして処刑することを後押ししやがってさ。あの子が死んじゃった時にその国を神罰で滅ぼし、エセ信者を生ける屍にして無限に苦しむように
「は?」
「だって、あの子何も知らなくても嘘言ってなかったんだよ?なのにさ、処刑されるまで散々に痛めつけられて尊厳を汚されて私の元に魂だけが帰ってきた時にはもう魂が次の転生には耐え切れなくなっていたんだよ。酷いよね。無実で無知な子にする仕打ちじゃないよね。これは作っちゃダメだよって言ってあげれば良かったのに。」
「それを神であるアンタが神託とかで言えば良かったんじゃ?」
「私の言葉を正確に受け取れる者が現世にはいないんだよ。現地の聖職者ってさ、なんでそう言葉を曲解するのかってくらい酷いんだよね。その時に聖職者の転生者がいれば交信スキルで阻止してもらう事が出来たけどそうじゃない子では近くにいないと移動しても間に合わない。」
「転移魔法とかは?」
「あれは1度でも行ったことがある場所じゃないと飛べないし、当時転移魔法が使える子も年老いてベットの上だったからタイミング的に最悪だった。それに教会が私の加護があることを確認していれば良かったのにあの子がスラム街の元住人だったからってろくに調べもせずに私の加護があの子に無いとか嘘つきやがった。もうね、すぐにでも神罰下したかったよ?でもね、まだあの子を救ってくれる善良な人間がいると信じていた。信じていたのに!誰一人!あの子の取引相手だった妾腹の王族ですら救おうとすらしなかった!で、あの子の魂をめちゃくちゃに壊した奴らに神罰を下した。当然だよね?」
「...何故、すぐに神罰を落とさなかったんだ?」
「ちょっとね、神のルール的に厳しくてね。詳しく教えられないんだ。」
「そうか。えっと?どこまで話してたっけ?」
「剣と魔法の世界と王道な文明レベルまでだね。それで転生するかい?」
「する。」
「わかった。それじゃあ、欲しいスキルとかあるかい?常識の範囲内であればなんでも良いよ。」
「それじゃあ、王道で悪いがまずインベントリと鑑定を。」
「その2つは異世界転生に必須スキルだけど正直おすすめしないかな?それあげた転生者、みぃーんな。過労死か栄養失調で死んでるし。」
「はぁ?どうして?」
「一応、チートスキルもあげてるんだけど上には上がいる理論でインベントリと鑑定持ちの転生者が王族や犯罪者に捕まって違法奴隷として無理矢理働かされるんだよ。しかも、文明レベルが中世だからね扱いが悪いんだよ。奴隷なんて替えがきくおもちゃだと思ってるんだよ。反吐が出るよね?基本的に転生者の子に酷い目に合わせたやつらは皆神罰下してるのに一向に無くならない。」
「なんかすっごく転生したく無くなってきたかも...」
「わー!わー!そんなこと言わずに転生してよぉ」
「なんでそんなに色々とアレな世界に転生させたがるんだよ。魔王とか倒せってか?」
「魔王?そんなのは倒すかどうかはどうでもいいよ。」
「魔王がどうでもいい?」
「そんなことよりも私は私の世界で生きて欲しいんだよ。」
「んん?どういうこと?」
「えっとね、まだまだ未熟で欠陥がある世界だけど誰かと分かち合いたいなって。それと、現世でここを治した方が良いとかわかるのは実際に現世で生きてる子達だから!」
「つまり、世界のデバッカー的な役割が私達転生者にあるんだな。」
「そう!デバッカー!でね、一応天寿をまっとうした子にはお礼として元の世界に転生し直してあげたりしてるの。」
「何人戻ったんだ?」
「...5人」
「なんだって?もう一度。」
「15人」
「数百人以上送って15人しか天寿をまっとう出来なかったってことか?ヤバくないか?」
「何処が悪いのか私にはわからない。だから、お願い!協力して!」
「な!?おい!」
私に頭を下げる性別不詳の美人神。めっちゃ絵面ヤバい。そして、神の頭って意外と軽いなぁーなんて思考が変な方向に行きかける。
「わかったから頭上げてくれ。アンタの願いを出来る限り叶えるから。スキルとかも神託みたいに連絡取り合えるやつも必要になるか?」
「ありがとう!そうだね!交信スキル付与しておくね!で、インベントリと鑑定はどうする?嫌なら下位スキルで不遇スキル扱いされているのがあるけど。」
「下位スキルで不遇スキル?どんなのだ?」
「インベントリの下位スキル物置と鑑定の下位スキル図鑑ていう名前でね、物置はイメージによって広さが違う収納スキルなんだけどインベントリみたいに無限に収納が出来なくて上限付き。図鑑は所持者の知識量によって表示される内容が違う鑑定の下位スキル。」
「図鑑はともかく、物置は不遇スキルだと思えないんだが?高層ビル1つ分か首都圏全て倉庫とかイメージすれば良いだけじゃないか?」
「それがね、相当強いイメージじゃないと難しいのと初期設定的なのがあって1度これくらいの広さとイメージしちゃうと固定されちゃうんだよね。」
「なるほど。初期設定は厄介だな。ということは現地人は本当に物置レベルの広さの収納しか得られないのか。」
「しかも、君がいた世界の物置より狭いっていうね。」
「え、アレより狭いのか?そりゃ、不遇スキル扱いされるな。納得した。ちなみに下位スキルってことは中位や上位スキルがあるのか?スキルは進化するのか?」
「1番下の位階が下位で中位、上位、最上位となる。スキルは位階が上がるものがあるけど、収納スキルや鑑定スキルは位階が上がらない。上がるとしたら鑑定眼という魔眼系統のスキルだね。あ、魔眼はおすすめしないよ。目玉狩りっていうのが居てね。目玉をくり抜いたらエリクサーか最上位回復スキルで回復されて養殖されちゃうから。」
「こっわ!目玉狩りって蛮族かよ。いや、何処の旅団だ?」
「魔眼系統のスキルって眼球に由来するスキルだから移植したりすると使えるようになるから重宝するらしい。ど腐れ聖職者にも何人かいる。犠牲になった子もね、魂がめちゃくちゃに壊されていたから目玉狩りのやつらとど腐れ聖職者を生ける屍にしてやった。」
「さっきも言っていたけど、生ける屍ってのは?」
「ん〜、眠ることも食べることも性交することも出来なくなり他者に危害を加えようと少しでも思考すると激しい痛みにのたうち回ってビタンビタン虫のような動作をする。で、どんなことをしても死ぬことは出来ない。レベルと全てのステータスがゼロになり、当然スキルは全て没収。息してるだけの存在になる。」
「うっわぁ、この神えげつない。」
「ちなみに、誰かを騙そうと口にしようとした瞬間に喉がギュッと締まるよ。」
「(絶句)」
「ふふふ」
めっちゃ悪い顔をする美人神。この神だけは怒らせちゃダメだ。
「さて、何か質問はあるかな?」
「じゃあ、図鑑の知識量によって表示される内容が違うってのはどうすれば良いんだ?」
「それはトライアンドエラーで。」
「いやいや!間違って毒草とか口にして死ぬとか嫌だよ!?」
「おー、そうだね。なら薬になる物はサービスで埋めておいてあげよう。」
「出来れば薬の作り方もお願い!」
「仕方ないなぁ、サービスしよう。あとは何かあるかな?戦闘スタイルとかある?無双したいとか。」
「そうだな。...ならさ、歌いながら踊るように剣を扱うスキルとかあるか?」
「あー、それだと歌唱スキルに
「生前は歌やダンスが好きだったんだけどさ、センスがなかったり音痴だったり運動神経がなかったりして、ただただ動画とかを観ていたりして羨ましくて妬ましくてさ。でも、スキルがある世界でスキルのアシストありなら生前出来なかったことが出来るんじゃないかって思ってさ。」
「うんうん、良いよ。素晴らしく良いよ。つまり、君には歌って踊って時に華麗に時に苛烈に敵を翻弄するスタイルにスキルなどで後押しして欲しいんだね!よぉし、なら必要になりそうなスキルを全部授けよう。」
「ありがとうございます!泣きそう...」
「うんうん、感謝して信仰してくれても良いよ。」
「あ、今更だけど神様の名前聞いてないんだけど。」
「あ、ゴメンね。うっかりしてた。てへぺろ」
「美人がてへぺろするとここまで様になるのか...」
「私の名前はナイアラル。創造神免許を持っているよ。」
「創造神免許?」
「創造神は世界を創ることが出来る神。創造神になるには厳しい試練を乗り越えた証である創造神免許証が発行される。」
「人間臭い神社会だな。」
「そりゃそうだよ、私達の社会構成を君たちの社会に取り入れさせたのは私達神なんだから。」
「それって役所や政治家に神様からの神託を受け取れる人間がいるのか?どうしてまたそんなことを?」
「それはね、様々な異世界転生した魂が異世界で天寿をまっとうした後に元の世界に転生し直すことを選んだ子達だからだよ。」
「あー、なんとなく読めた。つまり、神との繋がりは更に転生した後も続くってことか。」
「そ、言わば私達神との邂逅は雇用契約を結ぶようなもの!」
「ということは俺はナイアラル様に雇われたってことになるのか。知りたくない情報だなぁ」
「ふふふ、
「ナイアラル様のドヤってる姿めっちゃ可愛いやん。」
「そうだろうそうだろう。」
「しかも、言われ慣れておられる。隙がないな。」
「あと、伝え忘れそうだけどステータスの見方はそのまま"ステータス"と思えば良いから口に出す必要はないからね。叫ぶと恥かくよ。」
「...何人叫んでた?」
「30人くらいかな?」
「うっわぁ、可哀想に。」
「それだけで転生者としてバレるからね。あとは転生は赤ん坊スタートだからね。赤ちゃんプレイ頑張って。ふふふ」
「望むところだ!」
「ええ...こほん。最後に希望したいことはあるかな?生まれたい種族とか」
「頑丈で死ににく長寿な種族ってどうかな?」
「出来るけど、そうすると孤児か捨て子スタートになるけど良いの?それとその希望通りの種族だと希少種すぎて人攫いに年がら年中狙われるよ?おすすめ出来ないよ。」
「じゃあ、私が強くなるまで害意ある者から守られるスキルを追加で。レベル上げしたいから人攫い限定で。」
「そうすると、普通の加護じゃダメだね。寵愛とか愛し子とか使徒認定しないといけないけど厄介事が寄ってくるよ?大丈夫?」
「それで人攫いが寄ってこないならお願いしたい。」
「わかったよ、じゃあ君は今から私の使徒だ。邪なやつの鑑定スキルでも見れないように隠蔽スキルを付与しておくよ。見せたい時は隠蔽をオフにするって念じれば出来るからね。」
「ありがとうございます。」
「これで全てかな?」
「はい。色々と良くして頂きありがとうございました。私、ナイアラル様の使徒として命ある限り全力で務めを果たします。」
「いやいや、そこは命大事にね?お務めもほどほどで良いからね?フリじゃないからね?良い?」
「ふふふ、分かっております。」
「君、過労死の民族だったんだから気をつけてね?今回は不慮の事故で死んだけど過労死寸前だったんだからね?わかってる?」
「はい、分かっております。」
「めっちゃ心配。だけど、信じよう我が使徒よ。」
「はい!」
「「ふふふ」」
「さて、そろそろ君をあっちに送るね。健やかに生きるんだよ。」
「はい、行ってきます。」
「達者でね。」
意識が徐々に遠のき、ナイアラル様が私に手を振ってる姿を最後に私の意識がぷっつんと切れました。
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