番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その18
冒険者ギルド内はガラの悪い人が多く、例え王都だろうと冒険者という人種は同じなのだろう。
すれ違う度に睨まれたり、文句を言われたりしたが決して取り合わず、商品が置いてあるという倉庫へ向かうことにした。
ギルド内もお客さんがいるのかと思っていたが、冒険者ばかりで一般客はほとんどいない。
まぁガラの悪い人ばかりだし、普通は中に入りたくないか。
ふと思った疑問をそう自己解決してから、早速倉庫の中に入ってみると、そこには外以上に乱雑に置かれたアイテムの数々が置かれていた。
女性ギルド職員が言っていたように、持ち運びにくいものは基本的にそのままにされている様子。
外にはあまりなかった剣や防具などの装備品なども置かれており、本当にお宝捜しみたいで少しワクワクする。
パッと見で大したものがないことは分かるが、何かしら良いものが混ざっているかもしれないし、早速見てみることにしよう。
俺は山のようになっているアイテムを掻き分けながら、気になったものを片っ端から弾いていった。
ひとまず大まかに目星をつけ、倉庫内は薄暗いから外でじっくりと精査する予定。
『シャ・ノワール』で働いたことで身につけた技術を応用し、俺はテキパキとアイテムの選別を行っていった。
それから約三十分ほどの選別作業で、両手で抱えきれないくらいの量のアイテムを見つけることに成功。
ひとまず外に運び、この中から更に選別していくとしよう。
合計で約一時間ほどの選別作業の結果、購入しても良いと思ったアイテムを四つ見つけた。
どれも確実に銀貨一枚ではとても購入できないアイテムであり、本当に銀貨一枚でいいのか疑うほどのものを見つけられたと思っている。
軽く紹介させてもらうが、一つ目は小さい盾であるバックラー。
直径20センチほどとバックラーの中でも小さめだが、非常に軽い上に頑丈な機能性の高い盾となっている。
材質は恐らくライトメタルを使用されており、とにかく実用的な盾。
唯一の欠点は結構汚れてしまっていることだが、これは磨けば何とかなるだろうし下手すれば白金貨一枚で売られていてもおかしくない逸品。
二つ目は真っ赤な装飾が施されている三本爪の武器。
形状は鉤爪のついた小手であり、殴るようにして使って相手を切り裂く武器となっている。
このツメの素材も超一級品の素材が使われており、恐らくだけどフレアカルビンが用いられている。
普通に購入すれば、白金貨十枚はくだらない逸品ではあるが、三本爪の真ん中が折れてしまっていることから、この倉庫で眠っていたのだと思う。
装飾も非常に綺麗だが、埃だらけで色も褪せ切っていることからも、長いことこの倉庫で眠っていた品であることは分かる。
三つ目はシンプルな斧槍。
材質もミスリルと普通に良い素材が使われている斧槍だが、とにかく馬鹿デカい。
上記二つのような明確な欠点はないものの、単純に馬鹿デカいことから扱えるものがおらず、こうして倉庫に眠っていた品だと推察できる。
この斧槍に関しては、ヨークウィッチに持ち帰ったところで売れる可能性は低いと思うし、単純に持ち帰るのもめんどいのだが……銀貨一枚ということを考えたら、見逃すということはできなかった。
そして最後の四つ目は、拳大ほどのゴツゴツした黒茶色の石。
一見はただの汚い石でしかないが、この汚い見た目に反して驚くべき性能を持っていた。
その性能というのは、魔力伝導率が非常に高く、魔力を留めておけるというもの。
似たようなものでいうと、以前北の山で狩ったフィンブルドラゴンの角と同じ感じであり、杖なんかに加工すれば超一級品の武器になる素質を秘めている。
上記三つも素晴らしかったが、この魔力伝導率の高い石は別格であり、なぜこんな倉庫に転がっていたのか分からない代物。
少し手を加える必要はあるけど、確実に今週の目玉に据えることのできる逸品。
とにかく早く自分のものにするべく、さっさと購入してしまおう。
俺は選別した四点のアイテムを大事に抱え、倉庫のことを教えてくれた女性職員の元まで持っていって購入を済ませた。
本当に四点共に銀貨一枚で購入でき、俺はホクホク顔で宿屋へと戻った。
選別で時間を使ったとはいえ、時刻はまだ夕方前。
もう少し回ることができそうではあるが、今日だけでかなりのアイテムを購入することができたからな。
『白峰堂』で小手と漆黒の盾と小太刀の三点の装備品。
フレーランの爺さんの店で土偶、お皿、茶碗、湯飲みの四点の骨董品。
そして、冒険者ギルドでバックラー、ツメ、斧槍、魔力伝導率の高い石の四点のアイテム。
どれも質の高いものであり、十分すぎる成果を上げることができたため、今日はもうゆっくりと休んでもいいだろう。
質の高い品は初日で揃ったため、明日からの二日間は量を重視して買い付けていこう。
今回は手に入るかの焦りもなく、日数にも余裕のある非常に有意義な仕入れができている。
珍しい植物を探したり、伝説とも称されている魔物を狩ったりも楽しいが、こういうゆったりとした仕入れも非常に良い。
『シャ・ノワール』を有名にするという目的だけど、俺もしっかりと楽しめていることに感謝をしつつ、今日はゆっくりと休むことにしたのだった。
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本作のコミック第2巻が1月27日に発売となります!
コミカライズ版は本当に面白い出来となっておりますので、手に取ってください<(_ _)>ペコ
何卒よろしくお願い致します<(_ _)>ペコ
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