番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その4
グラニール山にて無事に朔月花を入手。
目玉商品として店頭に並べていたのだが、高額ということもあって売れ残ってしまっていた。
まぁもし売れなくとも、自分用のコレクションにでもしようと考えていたところ……最後の最後で購入者が現れてしまった。
売ったのが惜しい気がしてしまっているが、購入してくれたのが知識のある人だったし、その人物に買ってもらえたのは唯一の救いだな。
手元に残らなかったからには、朔月花には『シャ・ノワール』の知名度を上げてもらいたい。
……と、採取が大変だっただけに朔月花のことを考えてしまうが、いつまでも朔月花のことを考えている時間はなく、こうしている間にも次の営業日が迫っている。
いくつか次の目玉商品の候補があるため、ササッと選んで調達しに行くとしよう。
今のところの候補は四つで、一つ目はシンプルに魔物の素材。
装備品に使える強い魔物を狩り、その素材を売るだけ。
二つ目は一つ目と似ているが切り口は全く別で、美味しいとされている魔物を狙う。
簡単にいうのであれば、武器、防具用と食材用の違いだな。
そして三つ目が鉱石、宝石類の採掘。
鉱山に潜り、とにかく希少な鉱石を掘って販売する。
目玉はエイルと共に狩った、ミリオンタートルの甲羅をまた狙ってもいいかもしれない。
最後はこれまでと違った切り口になるのだが、希少な武器や防具を俺自ら購入し、それをこの店で売るということ。
基本的に他の街を巡って、良い武器や防具を手に入れることになる。
ルールに反していると思われてしまうだろうが、自ら出向いて買い付けを行うのはアリというのが俺のルール。
それに基本的には利益が出るよう、掘り出し物しか狙うつもりはない。
目利きには自信があるし、大丈夫だろうと思っている。
ただ……この四つ目に関しては、来週に大きなフリーマーケットのイベントが王都で開催されるため、そこで買い付けをしようと考えている。
そのため、今回は選択肢から外れてしまう。
となると残るは三択だが、前回は採取だったし、鉱石はまた別の週でもいいかもしれない。
またミリオンタートルを狙うなら、エイルに助力を求めても良さそうだしな。
そうなると武器、防具の素材用の魔物狩りか、食材用の美味しいとされている魔物狩りのどちらか。
俺のやることは変わらないし、どっちでもいいとどっちでもいいのだが……今回は美味しいとされている魔物を狙おうか。
朔月花をスタナに見せてあげることはできたが、結局売れてしまったし手元には何も残っていない。
好意だけで手伝ってくれているスタナへの恩返しも含め、とびきり美味しい魔物を狩って振る舞ってあげたい。
ということで、俺は美味しい魔物を狩ることに決めた。
目的がもう一つ出来て気合いの入った俺は、早速マイケルのところに寄ってから、ヨークウィッチを出発することにしたのだった。
マイケルから大まかな魔物の情報を聞き出した俺は、すぐに荷物をまとめてヨークウィッチを発った。
朔月花の入手に手間取った経験から、一分一秒を大切にしようと心がけている。
早めに入手できて、早く街に戻って来られる分には何の問題もないからな。
ちなみに今回は道中で薬草を採取する必要がないため、グラニール山に向かった時の倍以上の速度で移動している。
そして、今俺がどこに向かっているのかと言うと……シンプフォレストを抜けた先にあるグラッグ海という場所。
海とついているが海ではなく、大きな塩水の湖。
この湖には様々な魔物が生息しており、グラッグ海の水に触れた瞬間に死ぬ――と言われているほどには、近隣の街では恐れられている場所。
そんなグラッグ海で俺が今回狙うのは、もちろん水棲の魔物……ではなく、そのグラッグ海の水棲魔物を餌にして生きている魔物。
その名も――フライレイクファルコン。
超大型の隼のような見た目をした魔物で、グラッグ海の主と言われているアルデンギウスも捕食する見た目の通りの化け物。
常に大空を飛び回っている魔物で、狙うのもグラッグ海の水棲魔物のみということで危険視はされていないのだが……。
過去に何度か冒険者が連れ去られている報告があるとマイケルは言っていた。
そして、連れ去られた冒険者の特徴は、全員がフライレイクファルコンを狩ろうとしていること。
なぜ超危険と言われている魔物を冒険者達が狙ったのかは単純明快で――とにかく美味しいから。
ただ、今現在までフライレイクファルコンが狩られたという記録はなく、何度か死んだフライレイクファルコンの肉が流通しているだけ。
それも……どの肉も死後何日も立っていて、肉自体は腐敗していたようだが、それでも白金貨十数枚で取引されているほどであり、これだけでどれだけ美味しい魔物なのかが分かる。
基本は空を飛び回っており、捕食するときしか降りてこない魔物。
その上降りてくるのは湖で、巨体ってだけでなくめちゃくちゃに強い。
一切市場に出回っていないというのも希少性も良いし、文句無しで目玉商品になるだろう。
それに大きな魔物ということだし、スタナにあげる分の確保も可能。
懸念点は出会えない可能性が高いということだが、グラッグ海には美味しいとされている魔物が多数いるようだし、道中のシンプフォレストでも数種類だけではあるが、美味しいとされている魔物がいる。
最悪の想定もできているため、今は気兼ねなくフライレイクファルコン狩りに集中しよう。
俺は久しぶりの狩りにワクワクしつつ、グラッグ海を目指して歩を進めたのだった。
————————————
本作のコミック第一巻の発売日しております!
本当に面白い出来となっておりますので、どうか一巻だけでも手に取ってください<(_ _)>ペコ
何卒よろしくお願い致します<(_ _)>ペコ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます