第304話 似たもの同士
本質的にはそっくりだが、それを本人に伝えたら確実に怒ると思うため口にはしない。
これも全く同じで、アルフィとセルジに兵士長と似ていることを伝えたら、全力で違うことを証明してくると思う。
「なんだよ! もっとキラキラした生活を送ってんのかと思ったぜ! ゼノビアの奴、俺と会う度に帝都での騎士生活がどれだけ素晴らしいかを語ってくるからな!」
「へー、意外だな。ゼノビアがそんな自慢をする人とは思えない」
「俺は基本的に舐められてるからな! 一応部下ってことで、ジェイドの前ではちゃんとしていたように見せていただろうが、意外に面白い奴なんだぜ!」
「面白くて良い奴なのは知っている。ゼノビアには本当に色々とよくしてもらったからな」
「そうか。変な誤解を生まれてなかったのは良かったぜ! あいつは不器用だから、色々と心配なんだわ!」
エアトックを離れて結構経つだろうし、もうタメ口を使われているにも関わらず、兵士長的にはまだ可愛い部下なんだろうな。
最後の一言だけでも、兵士長の人の良さがよく分かる。
どうしてもクロと重ねてしまい、俺は乾いた笑みを浮かべてしまった。
「ゼノビアのことまで気にかけるとは本当に優しいんだな」
「そんなんじゃねぇわ! 紹介したのは俺だからな! その責任を感じてるってだけだ!」
「ふっ、そういうことにしておこうか」
「そういうことって言うか、本当にそういうことなんだっての!」
そんな感じで兵士長と雑談を交わしていると、あっという間にいい時間になってしまった。
年齢も近いし気の良い兵士長とは、かなり馬が合うと個人的に思っている。
もう少し話したいところだが……兵士長にも仕事があるだろうし、そろそろお暇させてもらおう。
「それじゃ俺はそろそろ行かせてもらう。またエアトックには遊びに来るつもりだから、その時はよろしく頼む」
「ああ、いつでも歓迎するぜ! アルフィとセルジとも仲良くしてやってくれ」
「言われなくとも仲良くさせてもらう。この後も飲みに行く予定だからな。……兵士長も来るか?」
せっかくだし、兵士長とも酒を飲んでみたい。
そんな気持ちから誘ってみたのだが……。
「行かねぇよ! あの二人は嫌がるだろうし、万が一にでも潰れたら示しがつかなくなる! あの二人なら、一生ネタにしてくる可能性があるからな」
「一生は流石にないだろ……と言いたいところだが、あの二人ならありえるな」
「だろ? だから立場上、一線を引かねぇといけねぇんだわ! あいつらと飲みに行くことになるのは、俺が兵士を辞めてからだな!」
「なら、まだまだ先になりそうだな。というか……兵士長が辞めるよりも二人の方が早く辞めている未来が見える」
「そりゃ違ぇねぇな! がっはっは!」
豪快に笑う兵士長と笑い合ってから、俺は兵士長室を後にした。
さて、軽く時間を潰してから、『クレイス』に向かうとしよう。
軽くご飯を食べてから、俺は夕方くらいに『クレイス』に着いた。
まだ二人は着いていないと思っていたんだが、俺の予想に反して既にカウンター席に座っていた。
「あー、ジェイドさん! タイミングばっちりですね! 僕達もさっき着いたんですよ!」
「その割には既に酒を飲んでいるが……いつからいたんだ?」
「本当に十分前くらいだぜ。これもまだ一杯目だしな」
「二人はこの場所が似合いすぎていて、ずっといたんじゃないかって思ってしまうな」
俺はアルフィの隣の席に着き、酒を適当に頼む。
『クレイス』はフレッシュなフルーツジュースが一番美味いということに気づいたのだが、流石に一杯目は酒じゃないと怒るからな。
「よーし、それじゃ乾杯しましょうか! 今日もとことん飲みましょう! かんぱーい!」
「「乾杯」」
アルフィの音頭に合わせ、酒を一気に飲み干す。
酒もこだわっているみたいだし美味いんだろうが、やっぱり酔えない俺にとってはうまいって感じではないな。
「かーっ! やっぱり仕事の後のお酒は最高です!」
「本当に生き返るってこういうことだよな。……さて、いきなりだが帝都の話を聞かせてくれ。ずっと気になっていたからな」
「僕も聞かせてほしいです! 今日はジェイドさんのお話を肴に飲みまくりますから!」
話せないことも結構あるし、面白くなるとは思えないが……二人が聞きたいなら話すか。
「別に話すのは構わないが……潰れないでくれよ?」
「その約束はできません! 楽しかったら飲んじゃうんですもん!」
笑顔でそう言ってきたアルフィに呆れつつも、俺は帝都での話を始めた。
短い期間ではあったが振り返ってみると意外にも話は多く、二人がベロベロになるまで俺の帝都の話で盛り上がった。
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