第241話 極秘任務
話す前に座る姿勢を整えたアルフィ。
セルジから聞いた方が分かりやすそうだし、セルジから話を聞きたかったが、何だか気合いが入っているようだしアルフィに任せようか。
「えーっとですね、僕達は兵士内に紛れている裏切者を探すことを上から命令されているんです! その裏切者探しに一切進展がなく、他からアプローチできそうなジェイドさんにご協力頂きたいと思っているんですよ!」
「裏切者? 兵士に『バリオアンスロ』と繋がっているものがいるってことか?」
「ええ、そうで――」
「いや、『バリオアンスロ』とは限らない。兵士内に悪いことをしている奴がいるってだけだな」
「なるほど。かなり曖昧な感じなのか」
「ああ。だから俺達も何から調べていいのか分からず、ずっと無駄足を踏まされ続けているってのが今の現状なんだわ」
兵士の身分ながらも悪いことを行っている人間を探すってのが二人に課せられた任務なのか。
まぁこの内容なら俺も協力することができそうだな。
「一応、怪しい兵士は一通り調べたと思うんですけど、全然駄目だったんですよねぇ」
「ちなみにそんな曖昧な情報で、なんで裏切り者がいるってことが分かったんだ?」
「兵士にしか知り得ない内部情報が漏れていたからだ。それも一回だけじゃなく数回も同じことが起きたから、裏切り者がいると見て調べているって感じだな」
「なるほど。一回だけじゃないとなると、確かに意図的に情報を漏らしている人間がいると考えるのが普通か」
俺が暗殺者だった時に所属していた組織でも、裏切り者はたまにだが現れた。
クロは一人一人情報を微妙に変えて伝達していたため、裏切り者が情報を漏らしたらすぐに見つかっていた。
面倒ではあるが、もしかしたらこの方法は使えるかもしれない。
「何にも手掛かりが掴めていない状況でして、時間だけが無駄になくなるし兵士長から怒られてるんですよ! だから、どんな些細な情報でも欲しているんです!」
「二人が請け負っている任務の詳細は分かった。それで俺には何をしてほしいんだ?」
「何でもいいから裏切者についての情報を集めてほしい。行商人なら『バリオアンスロ』とも接点が持てるんだろ?」
セルジは幾分か頭が切れる人物かと思っていたが、作戦は一切ないって感じか。
手伝ってくれと頼むなら、せめて具体的な指示を出してほしかった。
「接点は持てるだろうが持つつもりはない。二人から聞いた情報で俺のアイテムは売れないと悟ったからな。リターンが一切ないのに、危険な組織と接点を持つリスクは取れない」
「うぅ……。やっぱり駄目ですか。ジェイドさんなら上手いことやってくれそうだと思ったんですけどねぇ」
「だから俺は任務について話す必要ないって言っただろ。これでジェイドからこの任務のことが漏れたら、俺達はもっと日陰に追いやられるぞ」
「『バリオアンスロ』と接点を持つ気はないと言ったが、手伝わないとは言ってないぞ。それとこのことは誰にも喋るつもりはないから安心してくれ」
「えっ!? 手伝ってくれるんですか!」
暗い表情になったと思ったら、花が咲いたような笑顔を見せた。
上手く表情を変えることができない俺としては、コロコロと表情が変えることができるアルフィが少しだけ羨ましく思えてくる。
「直接関わることはしないが、別の角度でのアプローチならできる」
「別の角度っていうのはどういうことだ?」
「二人は兵士の中の裏切者を見つけ出したんだろ? なら、俺は裏の顔を持つ行商人として怪しい兵士に話を持ちかける。俺の持ちかけた悪い話に乗ってきた人物がいれば、そいつが裏切り者である可能性は高い」
「なるほど! それは良いアイデアですね! セルジさんはどう思いますか?」
「確かに裏切り者が尻尾を出す可能性は高いな。わざわざ『バリオアンスロ』に近づかなくともあぶり出せるかもしれない」
思いつきで考えた策ともいえない作戦だったが、二人は感心したように頷いている。
この任務を手伝っているという名目ができれば、俺が『バリオアンスロ』やクロについてを詳しく調べたとしても怪しまれないだろう。
「このアプローチ方法でいいなら手伝わせてもらう。怪しいと睨んでいる兵士のリストアップと、俺が捕まらないようにフォローはしてくれ」
「分かった。それはしっかりと兵士長に話しておく」
「なんか……一気に光明が見えた気がしますね! やっぱりジェイドさんに話して正解でしたよ! セルジさんは最後まで渋ってましたけど!」
「雑な性格の俺でも渋るんだから、普通の人間なら渋るんだよ。今回はジェイドが良い奴だったからよかっただけで、出会って間もない人に極秘の任務を打ち明ける方がおかしい」
「いやいや! ジェイドさんが悪い人じゃないのはすぐに分かりますから! 僕は――」
「無駄な言い争いは今はやめてくれ。他にも裏切り者をあぶり出せそうな策があるから、一応二人に伝えておく」
酒も入っていることもあってか、耳が痛くなるような声量で言い争いを始めた二人を制止させ、俺が考え付いた策についてを二人に話していった。
少し複雑な作戦に関しては二人が理解するのにも結構な時間を擁したため、アルフィはともかくセルジも思っていた以上に脳筋であることが分かったのと、ヴェラが思っていた以上に頭が良かったのだということをこの話し合いで気づくことができた。
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