第103話 感想
休日を満喫した翌日。
あの後、無事に西の森でフレイムスタンピードの討伐に成功。
耐熱性の高いフレイムスタンピードの外骨格を採取できたため、『シャ・ノワール』へ持っていきレスリーに渡そうと思う。
外見が気持ち悪いフレイムスタンピードだが、外骨格だけなら真っ赤で綺麗な見た目をしている。
足もしっかり捥いであるし、レスリーも気持ち悪がらないはずだ。
俺はフレイムスタンピードの外骨格を持ち、少し早めに出勤することに決めた。
「おっ、ジェイドじゃねぇか! 今日もちゃんと早いな!」
「ちょっとレスリーに用事があったから、今日も早めに来た。……それで酒の方はどうだった? 美味かったか?」
「最っ高に美味かったぜ!! 奮発して良いつまみも買っちまった! もったいねぇからチビチビ呑んでいるが、まぁ幸せな晩酌だった! 本当にありがとよ!」
『黒祭』の味を思い出したのか、幸せそうな表情を浮かべながら感想を語ってくれた。
酒に詳しくないため店員任せだったが、これだけ喜んでくれたならプレゼントして良かった。
良い酒を選んでくれたねじり鉢巻きのおっさんにも感謝だな。
「美味しかったなら良かった。また気が向いた時に酒をプレゼントする」
「いいのか!? こりゃ、俺からもジェイドに何かプレゼントしねぇといけねぇな! ……このデカいポーションボトルなんてのはどうだ?」
「絶対にいらん」
「絶対にいらんはひでぇな! 良いと思って作ったんだけど、本当に売れねぇもんなぁ。まぁポーションボトルは冗談として、何かお返しを買っておくから楽しみにしてくれ!」
「別に気を使わなくていいぞ。俺は世話になっているからその礼で買っただけだしな」
「それなら俺だって同じだ! ジェイドには世話になっているから、キチンとプレゼントを買わせてもらう!」
ドンと胸を張ってそう言い切ったレスリー。
本当にお返しなんていらないのだが、仕事の対価以外で何かを貰うことなんてなかったし、プレゼントを選んでくれるのといのは少しだけ楽しみだ。
「それなら……楽しみに待たせてもらう」
「ああ、楽しみに待っとけ! ――で、俺に用事ってのは何なんだ? 何かまた思いついたことでもあるのか?」
「いや、例の職人に渡してもらいたいものがある。これなんだが、魔道具の素材にならないか聞いておいてくれないか?」
俺がフレイムスタンピードの外骨格を手渡すと、レスリーは興味深そうに観察し始めた。
気持ち悪がる様子はないため、見た目の件はクリアしたといってもいいだろう。
「この赤いのは何なんだ? 見たこともねぇな!」
「耐熱性の高く、恐らく加工もしやすい素材だ。職人がこれでいけると判断したら、大量に仕入れるつもりだから今週中に返事まで聞いてほしい」
「分かったぜ! なら、今日の客が少なくなったタイミングで渡してくる! それにしてもよくピンポイントな素材を見つけてきたな!」
「元々思いついてはいたからな。これが使えるとなれば、いよいよ髪を乾かす魔道具が完成間近になる」
「投資額が投資額だけに怖いが、体が震えるほど楽しみだ!」
「俺も楽しみだ。今回のはヴェラと練りに練ったし、結構な自信作だからな」
これまでのオリジナルアイテムとはつぎ込んだ金も時間も桁違いなため、絶対にヒット商品にしたい。
この魔道具が売れてくれれば、一気に流れに乗れるからな。
レスリーと絶対に売るという決意を固めていると、どうやらヴェラが出勤してきた。
なんというか……いつもと様子が違う気がする。
「おー、ヴェラも来たか! 今、ジェイドと魔道具についての――って、どうした? なんかいつもと顔が違くないか!?」
レスリーもヴェラの変化に気がついたようで、大きな声を上げて驚きの声を上げた。
なんというか、いつもダルそうにしているヴェラの表情がキリッとしているように見える。
「なんか良く眠れた。目がスッキリしている」
「おっ、ジェイドから貰ったプレゼントを使ったのか! いつもと比べて目がパッチリしているぞ!」
「疲れも眠気もない。思ってたより何倍もよかった」
「効果が実感できたなら、わざわざ家まで届けた甲斐があった」
ここまでハッキリと効果が出たなら、昨日は後悔したもののマットをプレゼントして良かったな。
やはり寝具を変えるというのはかなり重要のようだ。
「敷布団から掛け布団。枕も変えてみたくなった。またプレゼントしてほしい」
「それは自分で買え。それより父親はなんか言ってなかったか?」
「分からない。言っていたような気がするけど無視してるし」
無視は酷いなと一瞬思ったが、あの父親と毎日顔を合わせるとなったら確かに無視してしまうかもしれない。
両親がうるさすぎるからこそ、ヴェラは正反対のような性格になったのかもしれないな。
「ジェイドはヴェラの父親と会ったのか! どんな人なんだ?」
「騒々しい人って感じだな。あと過保護。レスリーも会ったら色々と言われるぞ」
「そうなのか? ヴェラの母親も明るい人だったから、ヴェラの両親は二人とも明るいんだな!」
「そういえば、ヴェラの親が求人広告を見て申し込んだんだっけか? ということは、レスリーはヴェラの母親と会ったことがあるのか」
「私の両親の話はもういい。それより、魔道具について何の話し合いをしてたの?」
ヴェラが話を変えたことで、再び魔道具の話へと戻った。
先ほどレスリーに話したことをヴェラにも説明し、開店の時間まで三人で魔道具についての話し合いを行ったのだった。
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