第12話 あれから

 あの出来事から1ヶ月が経過した。


 どうやら俺がモンスターの群れに閉じ込められてから1日近く経っていたらしい。

 美玖ちゃんを連れ戻しに来た男性3人組が捕まり俺が居た場所を割り出すのに少し時間がかかったようで、捜索隊も出ていたが見事に俺と入れ違いになってしまったみたいだ。

 後日ギルドに顔を出した時、報告に来てた捜索隊員の驚いた顔はいまでも覚えている。

 一方、その場に居た斗真はというとたった一言

「何だ。生きてたのかよ。」

 と呟くと興味なさそうに視線を新聞に移した。


 あの野郎……少しは心配したらどうだ。


 そう思ったがあいつに心配されても気味が悪いのでそのままでいいという結論に至る。


 あの出来事以降、暫くの間は美玖ちゃんの周囲を警戒し、最低限しかダンジョンに潜らないようにしていたがこの間の連中みたいなのが来る訳でもなく、もう諦めてくれたのだと思う。

 今になって思えば、なぜあそこまでして美玖ちゃんを連れ戻したかったのか…

 疑問は残るが、本人に聞いてもわからないらしい。

 片桐叡山、ギルドマスターであるあの男に聞けば答えは返ってくるのだろうがわざわざあそこに出向いてまで話を聞こうとは思わない。

 これ以上、彼女に手を出さなければそれでいい。


 片桐叡山といえばあいつがギルドマスターを勤める『叡智の女神』はそれなりに有名なギルドみたいだ。

 全ギルド中、入団したいギルドランキングでTOP10に入る人気で今一番勢いのあるギルド。そのマスターを勤める片桐叡山は25歳という若さでこのギルドを纏めている事から注目を集めているとの事。


 ちなみに、俺が叡智の女神を知らなかったのは単純に俺がギルドを探している頃は叡智の女神が存在していなかったから。

 もう少し周りの事も勉強しなきゃいけないなぁ。



 美玖ちゃんはというと、戻って来て数日間はずっと申し訳なさそうな表情をしていて、ずっと距離を置かれていた。

 流石に仕事に支障が出るので何とか説得する事で解消出来たが、まだ少しギスギスした雰囲気が残ってしまっている。

 まあ、これからも一緒のギルドで働くんだ。時間が解決してくれる事だろう。



 今日はギルドで待ち合わせをしている。

 そろそろ2人でのダンジョン攻略にも慣れて来たところだ。

 もっと下の階層に向かってみるのもいいかもしれない。


 ギルドの扉を開くと中には既に美玖ちゃんの姿があった。斗真はいつも通り新聞を読みながら怠けている。


 斗真をスルーして美玖ちゃんの元に行くと彼女に声をかける。


「それじゃあ、行こうか。」


「は…はい。今日もお願いします。」


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