三進二退~3歩進んで2歩下がる？レベルは中々上がらないけどランクアップボーナスで無双します~

2人の出会い

第1話 固有スキル

　2XXX年

　ある日地球全土は激しい地震に襲われた。

　聳え立つビルの数々は崩壊し、大地には地割れが走り大陸は分断される。

　この日を境に地球には不思議な出来事が起こり始めた。

　東京に突如現れた謎の洞窟『ダンジョン』。その中にいる地上の生物とは異なった進化をした生物『モンスター』の存在。そしてダンジョンに入った人間の体に訪れる変化『ステータス』の発現だ。

　ダンジョンが発見された当初、世界中の人々が注目した。何人もの自衛隊員などが挑んだが帰ってきた者は僅か数名。

　彼らは金銀財宝を持ち帰って来た。

　この日を境に日本はダンジョン探索に力を入れるがモンスターの存在に邪魔をされ、未だに制覇する事が出来ていない。

　ダンジョン発見から100年。

　ダンジョン探索を生業とする者は冒険者と呼ばれ、世界中の人間が一攫千金を狙いこの東京に集まっていた。

　◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

　青色のプルプルとしたゼリー状の体に斬りかかる。

　パリンというガラスの割れる様な音と共にゼリー状の体は砕け散る。

「これで10体目。クエスト完了っと。」

　スライム10体の討伐。

　俺が今日受けていたクエストの内容だ。

　スライムが砕け散った場所に青い粘膜の様な物が落ちている。

　俺はそれを拾い上げ、バッグに入れる。

　さっきのは『スライムの粘膜』と呼ばれるドロップアイテムだ。敵を倒した時に何らかの素材が落ち、冒険者はそれを討伐した証としてギルドに提出する。

　クエストが終わったのでギルドへに戻る。

　ダンジョンから徒歩15分。

　人気のない方へ歩いて行くとボロい木の小屋が目に入る。

　小屋の上には傾いた看板が掛かっており、そこには『銀狼の牙（フェンリルファング）』の文字が書かれていた。

　はぁ……

　このギルド名を見る度にため息が溢れてしまう。名前負けもいいとこだ。

　ボロ小屋の扉を開けると目に入るのは無精髭を生やした小汚いおっさん。

　暇そうに新聞を読みながら欠伸をしている。

　漸く俺の存在に気付いたのか声をかけてきた。

「よう、遅かったな。」

「まだ出発して3時間しか経ってない。」

「たかがスライム10体だろ。そんなんに3時間もかけてるから遅えって言ってんだよ。俺が現役の頃は3分あれば終わってたぜ。」

　この男の名は明神斗真（みょうじんとうま）。

　昔は冒険者としてそれなりに有名だったそうだが……本当かどうかかなり怪しい。

　とある出来事がきっかけで何処のギルドにも入れなかった俺を唯一引き取ってくれた恩人でもあるが体よく騙されたのではないかと思う今日この頃だ。

【銀狼の牙】は俺と斗真だけのギルド。

　ギルドマスターは斗真で団員は俺だけ。

　合計2名しか在籍していない極小ギルドだ。

　バッグから取り出したスライムの粘膜を確認しながら斗真が話しかけてくる。

「で、レベルは上がったのか？」

「ああ、やっと9レベルになったよ。」

「じゃあ次のレベルアップでまたアレが発動すんのか。大変だね〜。」

　アレとは俺の固有スキルの事だろうな。

　固有スキル　『三進二退（さんしんにたい）』

　能力はレベルが３上昇するごとに２下がるというもの。

　つまり4レベルになった瞬間2レベルに下がり、5レベルになった瞬間3レベルに下がるといった、いわば3レベル上げて漸く1レベル上昇するといった最悪のスキルだ。

　俺はこのスキルのせいで役立たず扱いされ、何処のギルドにも入る事ができなかった。

　冒険者を始めて6半年。

　同じ時期に始めた奴らは既に手の届かない場所にいる。

　俺はなんとか地道に続けて現在9レベル。

　次のレベルアップで8に戻ってしまう予定だ。

　いいなぁ…なんで俺だけこんなハンデ背負わなきゃいけないんだろ。

　ギルドからの帰り道、ふとそんな事を考えてしまった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

主人公　前山進（まえやますすむ）

年齢　　25歳

所属ギルド　【銀狼の牙】

固有スキル　『三進二退』