空想買い取り屋 23時間営業中!

たや

俺の店

『貴方の空想、高値で買い取らせていただきます。 どんなものでも、お売りください』













「――――って! 言ってたじゃねーかっ! 何でオレのがこれっぽっちの金額なんだよっ!?」

「お客様、大声を出されては困りますねぇ。こちらとしては、かなりの“色”をつけたつもりなんですが……」


 大通りから外れた裏路地の一画。

 普段意識して歩かなければ絶対に気づかないような細い小道に、ひっそりと構えている俺の店。


『空想買い取り屋』


 世間一般では、そう呼ばれているらしい。

 とは言っても、これは正式名称ではなく、ここへ来る物好きな客が付けたあだ名みたいなものだ。

 今、俺の目の前で怒鳴り散らしているこの客は、ご新規さん。自分の空想を売りに来たというわけだ。

 ただねぇ……。その『ブツ』自体はかなりの粗悪品。

 金に困っているらしく、昨日今日で急ごしらえしたことが目に見えてわかるもの。ウチの店じゃあ、最低ランクの価格品だ。

 店内にでかでかと掲げてある『空想買い取り価格表』にだって、そう書いてあるのに。

 やれやれ。最近の持ち込まれるブツは、めっきり品質が落ちている感じだ。

 とりあえず、これ以上相手をしても埒が明かないので、今回の『オキャクサマ』には丁重に断りを入れさせていただきましょうか。



 ん? 俺の名前? ああ、そうだなぁ……。

“買い取り屋”、とでも呼んでくれればいいさ。


 ここは『空想買い取り屋』、23時間営業中。

 どうぞ、末永くご贔屓に。

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