その5 逃走
「なっ・・・、なんだてめえは!?」
「どうしてこの女性を衛兵に引き渡そうとしたんですか?
この人が、一体何をしたんですか!?」
「何をしただぁ!? 見れば分かるだろ!
そいつは魔王と同じ大きな胸を持ってるじゃねぇか!
それだけで女神様に対する裏切り行為だ!」
「そんなのおかしいです!
何もしていないのに罪になるなんて、
ただそれだけで女神様に背く行為だなんて!」
「ガキが寝言をほざくな!
まさかてめえもその女の仲間か!?
だったら一緒に突き出してやる!」
男は怒声を上げながらもう一度振りかぶり、
手にした野菜を投げようとする。
しかし、レナードの手がそれより早く動き、
腰に携えていた剣を鞘ごと構えた。
そしてそのまま男性の頭に向けてやや弱めに振り下ろす。
「っ! ごめんなさいっ!」
「ぐおっ!」
剣は鞘ごと男性の頭部へ的確に命中し、
相手は床へ倒れ伏す。
レナードは相手が悶絶し、すぐには動けなくなったことを確認すると
すっかり尻もちをついていた女性に手を差し出した。
「とりあえず逃げましょう! 立てますか?」
「え・・・、あの・・・、あなたは一体・・・」
「僕のことはひとまず置いておいて、
まずはここを離れないと!」
「あ・・・、は、はい・・・」
女性は少し驚いた様子で、
そしてどこか落ち着いた様子でその手を取って立ち上がる。
レナードは周囲を見渡して裏口を見つけると、
手を引っ張りながら一目散に駆け出した。
二人の姿が完全に店から消えた後に、
床に伏していた男性が起き上がる。
「うぐぐ・・・、あ、あいつらは・・・、
だ、誰か衛兵を呼んでくれっ!」
怒りと動揺が混ざったような大声に、
それまで静観していた客たちが慌てて動き出す・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます